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IB数学AAのHL取ってたら18歳でマクローリン展開やるってよ


#数学がすき

国際バカロレア、略してIBの数学AA HLカリキュラムの中には
マクローリン展開が含まれています。
IB生の場合は高校生(17・18歳)にしてマクローリン展開を使って問題を解かなくてはいけないのです。
ただ唯一の救いはマクローリン展開の有名なもの、sinxやcosx、$${e^x}$$などのマクローリン展開はFormula Bookletと呼ばれる公式が書いてある冊子に記載があり、テスト途中でも見れることです。
そのためIB生にとったら何故マクローリン展開があのような形になるのかは最悪重要ではありません。それはすごく残念なのでここでマクローリン展開がなぜあのような形・公式で求められるのか概要を説明してみます。

マクローリン展開とは

まず、マクローリン展開とはなにかについてですが、
マクローリン展開はx=0まわりで無限回微分可能な関数を多項式で表すことです。$${e^x}$$のようなよく分からない関数を多項式(知っているもの)で表すことができるものです。これによって$${e^0.1}$$のようなわけの分からない数を近似することが出来たりします。多項式だったらxに0.1いれるだけの簡単な演算だからね。

先にマクローリン展開の定義に付いて見ると、マクローリン展開とは

マクローリン展開の定義

関数f^(n)の微分はf(x)をn回微分したことを意味します。

マクローリン展開をしてみる

一度、公式を鵜呑みにして使った計算の例だけ見てみましょう。
それでは$${e^x}$$をマクローリン展開してみましょう。

まずシグマのn=0のとき、
$${e^x}$$の0回微分(そのまま)は$${e^x}$$です。
$${e^0}$$=1、なので最初の項は1であることが分かります。

次にn=1のとき、
$${e^x}$$の一回微分は$${e^x}$$です。
$${e^0}$$=1です。そして1の階乗は1なのでこの項は x です。

n=2のときも同様に
$${e^x}$$の2回微分は$${e^x}$$ですから、$${e^0}$$=1なので3つ目の項は$${\frac{x^2}{2!}}$$ですね

n=3のときも同様、
$${e^x}$$の3回微分は $${e^x}$$です。$${e^0}$$=1です。
なのでこの4つ目の項は$${\frac{x^3}{3!}}$$ですね。

このように続けていくと、$${e^x}$$のマクローリン展開は

$${e^x}$$のマクローリン展開

こうなりますね。今回はなぜ$${e^x}$$のような関数がこのような手順・公式で表せられるのか考えていきます。

マクローリン展開と接線

まず直感的な話から行きます。
y=$${e^x}$$のグラフをx=0の近くで近似したいとき、1次式で近似してみようとすると、接線の方程式で近似できますね。
接線の公式を使えば、$${e^x}$$のx=0での接線は次のように求められますね。

$${e^x}$$のx=0での接線

f(x)=$${e^x}$$のx=0での接線はg(x)=x+1であることが分かりました。
グラフで見ると以下のようになります。

赤線がf(x)=$${e^x}$$、黄色の線がg(x)=x+1

これを先程の$${e^x}$$のマクローリン展開と比べると最初の2つの項が一致していることが分かります。
マクローリン展開:1+x+$${\frac{x^2}{2}}$$+$${\frac{x^3}{6}}$$+…
$${e^x}$$の接線の方程式:1+x

これから直感的にマクローリン展開の最初の2項の意味は分かりますね。
最初の2項で一次の関数で$${e^x}$$をx=0まわりで近似しています。
そのように考えると、以降の項は2次で近似、3次で近似している気がしますね。

これでマクローリン展開が関数の近似をしようとしていることが直感的に理解できたのではないかと思います。

階乗はどこから?

ではなぜマクローリン展開には階乗が出てくるのでしょう?

これを考えるために一旦普通の多項式を見てみましょう。
h(x)=$${4x^3-2x^2+5x-1}$$
という関数があるとします。これを微分していきます。
1回微分:h'(x)=$${12x^2-4x+5}$$
2回微分:h''(x)=$${24x-4}$$
3回微分:h'''(x)=$${24}$$
になりますね。
ここでこれらのn回微分の式を使ってh(x)が表せることに気づきます。
*定数項のみになるまで微分したら出来ます。
具体的には以下のように表せます。
h(x)=h(0)+h'(0)x+$${\frac{1}{2}}$$h'(o)+$${\frac{1}{6}}$$h'''(0)=$${4x^3-2x^2+5x-1}$$
確認してみてください。

以上見たように関数が多項式の場合、そのn回微分達の値が分かれば関数を復元できることが分かります。

例えば
P(0)=2
P'(0)=0
P''(0)=3
P'''(0)=-3
P''''(x)=1
という情報がわかっていたとすると、積分をすることで
$${\int(P''''(x))dx=\int(1)dx}$$からP'''(x)=x+C、P'''(0)=-3からC=-3である。
このように微分を1回ずつ減らしてP(x)に近づけていくことが出来ます。
同様に積分を続けていくと、
$${\int(P'''(x))dx=P''(x)=\int(x-3)dx=\frac{x^2}{2}-3x+C}$$でC=3
$${\int(P''(x))dx=P'(x)=\int(\frac{x^2}{2}-3x+3)dx=\frac{x^3}{3\cdot2}-\frac{3x^2}{2}+3x+C}$$でC=0
$${\int(P'(x))dx=P(x)=\int(\frac{x^3}{3\cdot2}-\frac{3x^2}{2}+3x)dx=\frac{x^4}{4\cdot3\cdot2}-\frac{3x^2}{3\cdot2}+\frac{3x^2}{2}+C}$$でC=2
よって
P(x)=$${\frac{x^4}{4\cdot3\cdot2}-\frac{3x^2}{2\cdot3}+\frac{3x^2}{2}+2}$$←*(階乗が出てくる!!)
となり、関数を復元することが出来ました!!(ごちゃごちゃしましたがやってることは多項式の積分だけなので自分で確認してみてください。)

さっきのは多項式に対しての計算を行いましたが、この考えを多項式ではない関数に広げたのがマクローリン展開です。
$${e^x}$$という関数に対して微分しまくってどこかで定数項になったとして、そこから積分しまくると以上の多項式のように$${e^x}$$を表すことができるはずです。ただ実際$${e^x}$$が定数項になることはないので無限回微分することが要求されます。この積分をしまくるの過程で階乗が分数に現れます。
それは多項式の例でも見れます。
マクローリン展開はこのようにして関数を近似しています。
証明とは違い、より感覚的な具体例を通じた説明をしました。
証明に興味ある人はテイラーの定理をロルの定理を使って証明する手順が
インターネットにたくさん載っていると思うのでそちらなど見てください。

では最後にマクローリン展開を使ってみましょう。
この記事で通じて扱ってきた$${e^x}$$という関数を使いましょう。

グラフ近似

まずマクローリン展開をグラフ上で見てみましょう。
まず3次までの式の近似を見てみます。

赤がe^xで青がe^xの3次まで近似。

では5次までいって$${e^x}$$を近似してみると以下のグラフが得られる。

赤線がe^xで青線が近似

ここまでだと3次の式の方がうまく近似できているように見えますね。

sinxのグラフ近似

次に単に気持ちがいいのでsinxの近似の過程を見てみましょう。

3次式の場合は以下のようになります。

赤線がsinx。青線が3次の近似曲線。

次に5次式の近似曲線とsinxを比べると、

赤線がsinx。青線が5次の近似曲線。

続いて7次の式での近似を見ましょう。

赤線がsinx。青線が7次の近似曲線。

最後に9次の近似まで見ましょう。

赤線がsinx。青線が9次の近似曲線。

sinxの式の場合はすごく気持ちがいいですね。
どんどん青の線が赤の線に重なって行っています。
これを無限回続けたら確かに青と赤が完全に重なりそうな感じがします。

数の概算

続いて数の近似を見ましょう。グラフでの近似ではなくて得体のしれない
数字の大体の値を求めます。
例えば$${e^0.5}$$の値はよく分かりません。
そもそもeも無理数だし、そのルートはもうどんな値かよく分からない。
ここでマクローリン展開の出番です。$${e^x}$$のマクローリン展開は

$${e^x}$$のマクローリン展開

ですね。このxに0.5を代入してみると、
$${e^x}$$=1+$${\frac{0.5}{1}+\frac{0.5^2}{2}+\frac{0.5^3}{3!}}$$+…
になりますね。これなら時間かければ手計算で$${e^0.5}$$の値が出そうです。実際に計算すると1.6458くらいであることが分かりました。
では関数電卓に$${e^0.5}$$を計算させてみましょう。
すると1.6487…という値を返してきました。
非常に近い値を出してくれました。
このようにマクローリン展開を使うことで分からない数の大体の値がわかりました。

極限での応用

また極限の問題でも役に立ちます。
$${\liminf_{x\to 0} \frac{sinx}{x}}$$
という極限の値を求めたい時。これをマクローリン展開で解いてみます。
sinxのマクローリン展開は以下です。

sinxのマクローリン展開

これを極限の式のsin(x)に代入しましょう。すると以下のようになります。

代入後

この式の分母分子をxで割ると、以下になります。

分母分子をxで割ったら

これのxを0に近づけていくと、
分子のxが含まれる項はすべて0に近づきます。
すると残るのは分母の1と分子の1です。
よって答えが1に収束することが分かります。

このような一見非自明な極限に対してもマクローリン展開ですぐに極限を
求められる場合があります。

以上、マクローリン展開についての説明でした。
ただのいち高校生の説明なので間違いがあるかもしれませんがその点は
お手柔らかにお願いします。以上、IBではマクローリン展開をやります。
そしてマクローリン展開の概要の説明をしてみました!
勉強の助けになれば幸いです!

マクローリン展開のような便利な道具を高校のうちから触れられるのはIBの利点(?)とも捉えられるかも知れません。またsinxの近似の近づき方と$${e^x}$$の近似の本来の関数との近づき方の差は面白いものがありましたね。

以上DP Boysでした!他のIB関連の記事も是非見てみてください!


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