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重力レンズのつくりかた

 ひとりメーカーとして魔鏡のようなレンズを製作している人間です。活動の一環で重力レンズの模型をつくったのでそのレシピと3Dデータを共有します。

論文「手作り重力レンズのすすめ」

 20年以上前に大阪教育大学の研究チームが書いた「手作り重力レンズのすすめ」という論文を読んでつくりました。論文は公開されているので興味のある人はタイトルで検索してみてください。(最先端の研究と並行してサイエンスコミュニケーター的な活動にも取り組まれていて感銘を受けました。)重力レンズの説明は色々な記事があるので、ここでは製作方法に関連するところだけ説明します。
 重力レンズの特徴はレンズの中心に近いほど大きく屈折します。これは重力源に近いほど重力が強いからです。星が2つにみえる二重像(下の左の写真)や円状にみえるアインシュタインリング(下の右の写真)は重力レンズの代表的な現象です。これら重力レンズの性質を模擬したものを重力レンズの模型とよびます。

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ワイングラスでつくる重力レンズ

 上記の論文では型刃(決まった型に削るための刃物)を製作するところから取り組んでいますが、現在ではもう少し簡単につくることができます。
 最も簡単そうなのはワイングラスを使う方法です。100円ショップでワイングラスを購入して、なんとかして柄の部分を切れば、ワイングラスの底が重力レンズの模型となります。なぜなら、レンズの中心(柄の部分)に近いほど大きく屈折する、という重力レンズの性質と同じだからです《写真掲載予定》。星の写真などをワイングラスの底越しに覗くとアインシュタインリングや二重像などがみられます《写真掲載予定》。

重力レンズの3Dデータ

 ワイングラスを使う方法は簡単ですが、より正確な重力レンズをつくりたい場合はもう少し手間がかかります。重力の逆二乗則を再現するレンズの凹凸の形状は対数関数になります(導出は論文をみてください)。表面の形状が対数関数となる重力レンズの3Dデータを製作して下記にアップロードしました。誰でも無料でダウンロード可能ですのでご活用ください。自分で好きな重力レンズを作りたい場合に3Dデータを製作する方法は後述します。
https://sketchfab.com/3d-models/gravlens0218-eccef01c158147a5855ea21f1297b926

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重力レンズの発注

 3Dデータを元に重力レンズを製作するにはCNC加工(3Dデータを入力として自動で機械加工する手法)が便利です。3Dデータといえば3Dプリンタを思い浮かべるかもしれませんが、透明度の高いレンズを製作するのは2020年現在はCNC加工のほうが簡単です。CNC加工を依頼することができる企業は国内外にたくさんあるので、「CNC加工 依頼」などと検索して探しましょう。例えば株式会社アトラスなど《順次更新予定》は丁寧に対応してもらえます。
 重力レンズのCNC加工を依頼するときは3Dデータを準備して、素材は透明アクリルで仕上げを透明磨き仕上げにする必要があります。完成した重力レンズが下の写真です。ワイングラスの底に似ていますね。

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ゼロから自分でつくる方法

 ものづくりが好きな人はゼロから自分で全部つくりたいかもしれません。最後にゼロから自分でつくる方法を紹介します。
 まずは3Dデータの製作方法です。Autodesk Fusion 360など無料で利用可能なCADソフトを準備しましょう。CADソフト上で好みの対数関数の曲線を描いて、軸を決めて回転させればレンズの表面の凹凸をつくれるはずです《詳細は別途掲載予定》。
 次にCNC加工機を設置しているファブ施設を探しましょう。都内ならDMM.make、ファブスペースみたか、《順次更新予定》など何か所かあると思います。CNC加工機の使い方はファブ施設で教えてもらいましょう。3Dデータと透明アクリル板を持っていきます。透明アクリル板を加工機内に設置して3Dデータを読み込ませると、専用のドリルで自動的に重力レンズのかたちが削り出されます。削り出した重力レンズはドリルの跡が残り不透明なので、耐水ペーパーを使って透明になるまで磨きます。研磨作業は根気が必要です。研磨が終わればオリジナル重力レンズの完成です。

さいごに

 筆者の製作した重力レンズはご縁があり逗子市にある「世界一小さい科学館」理科ハウスさんに寄贈して展示してもらいました。まだ在庫があるので必要な方おられましたらお声掛けください。

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