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ファベーラ(ブラジルのスラム街)ってどんな場所?【ファベーラ滞在記】

あけましておめでとうございます。

2023年の始まり、いかがお過ごしでしょうか。人それぞれの年越しがあると思いますが、僕にとっては、すごく特別な元旦になりました。なぜかというと、僕は今、実家ではなく、以前住んでいたファベーラ(ブラジルのスラム街)に「帰省」しているからです。

ファベーラの表通り。

と、書き出したところでキーボードを打つ手が止まりました。何から話せばいいかすごく迷うのです。ブラジルは遠い国だし、大半の人はスラム街など知らないし、知っていても「不潔」や「危険」と思うでしょう。

そんな場所になぜ「帰省」しているのか。それも書きたいところではあるけれど、自己紹介は後回しにして、まずはスラム街というところがどんな場所なのかを紹介してみたいと思います。

ファベーラとは何か

そもそもファベーラとは、ブラジルのスラム街のことです。スラム街というのは都市部の貧困層が暮らす地区のことで、現在10億人、世界の7人に1人が住んでいると言われています。

人によっては「HUNTER×HUNTER」の流星街や映画「シティ・オブ・ゴッド」、「スラムドッグ・ミリオネア」を思い出すかもしれません。発展途上国と呼ばれる国に多いですが、先進国にもあります。

じつはスラム街という場所に定義はなく、人口が過密だったり、土地の居住権がなかったり、衛生設備や上下水道が整備されていなかったりといった点が最大公約数的に言われています(文末注)。

どうして定義がないのか。答えは簡単で、ひとつひとつのスラム街が同じ街の中にあってさえ大きく異なるからです。大きさや経過年数、都心からの距離。一例として都心に近いスラム街ほど人々も働きに出やすく、収入が高い傾向にあります。

とりあえずは上の写真をご覧ください。「あれ、意外と普通じゃん」と思いませんでしたか? ギャングがいるわけでもないし、ひとりで表通りも出歩けます。道路も舗装されているし、車も停めてある。道端には観葉植物の鉢まで。そう、スラム街は意外と普通のまちなのです。

ファベーラのプチ・ツアー

こんな調子で、少し、スラム街の中をプチ・ツアーしてみましょう。

こんなふうにスーパーがあったり、
学校があったり、
服屋があったり、
薬局があったりします。

僕がいるレシフェというブラジルの港街(神戸市くらいの大きさ)では、人口の3人に1人にあたる50万人以上がファベーラに住んでいると言われています。そのひとりひとりに仕事や家族、生活があります。

それだけの人が住んでいるので、もちろん老若男女がいますし、人びとは働いてお金を稼いで生活しています。日常があり、ペットを飼ったり、友だちとお酒を飲んだりします。

僕はこの場所の夜がとても好きです。日中の暑さが収まると、一日を終えた人々が家の外に椅子を出して世間話をします。そこに混ぜてもらいながら、夜の街を眺めるのがここに住んでいた頃は日課でした。

大晦日の夜は雨。若いカップルが傘を差して歩いていました。

このマガジンでやりたいこと

でも、僕もただいっとき住んだだけの素人で、ファベーラについては知らないことがたくさんあります。このマガジンでは、僕自身も勉強しながら、個人的にとても大切なファベーラという場所について、「こわいところじゃないんだよ!」ということを楽しくご紹介したいです。ゆるゆると、よろしくお願いします。

(おわり)


(注)ちなみにWikipediaなどでは、スラムという言葉が平気で失業率や犯罪と結びつけて語られていますが、スラムはあくまで居住条件を表す言葉であり、そこに住む人たちの性格や治安の問題とは明確に分けて語られるべきです。スラムという言葉自体がそこに住んでいる人たちに対する偏見につながっている、という論文もあります。それを前提として、スラムについての一応の定義や状況としては、国際連合人間居住計画(UN-HABITAT)の出しているSlum Almanacが参考になります。

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