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スラム街のインフラ:水道編【ファベーラ滞在記】

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このシリーズについて

このマガジンは、ファベーラ(ブラジルのスラム街)の滞在記です。スラム街と聞くとこわい場所のようですが、そうではなく、普通の人が普通に暮らすまち。その面白さを毎回一話完結でご紹介します。

▼▼前回の記事▼▼

ファベーラの水道事情

前回、ファベーラの電気事情について書いたので、今回は生活していく上で同じく大切な水道事情について調べてみました。

清潔な水にどうアクセスするか、というのはファベーラで暮らしていく上での大きな課題のひとつだからです。

リオデジャネイロという南部の街の話では、2013年時点で、市の30%にあたるひとが公的な衛生設備(a formal sanitation system)へのアクセスがなかったということです。

逆に言えば、70%のひとが衛生設備なし、もしくは非公的な(clandestine)衛生設備で暮らしていたことになります。電気と同じように、水道も無料でタダ乗りする人が非常に多いです。(それで逮捕されるというよりも、必要悪のようにみなされてはいますが)

ただ、これはタダ乗りする人が悪いという単純な問題でもないように思います。ファベーラにはそもそも適切な水道設備がない場合も多いからです。

サンパウロのあるファベーラでは2,500人の住民がひとつのポリ塩化ビニル水道管から水を得ていたそうです。各世帯がこの水道管に穴を開け、ジョイントをつけて、取水しており、もちろん水漏れもひどいので、末端には水がまったく届かない状況であるということでした。

ちなみにブラジルでは水道水は飲めないので、飲料水は大きなタンクに入ったものを世帯ごとに購入し、ウォーターサーバーで飲んでいます。

こうしたインフォーマルな水道設備は断水水不足の影響を真っ先に受けます。リオデジャネイロのファベーラでは、2022年にも、乾季の真っ只中にあたる12月に二週間も水不足が続いたということです。

僕がいたのは別の町ですが、そこのファベーラでも、断水も日常茶飯事でした。一日の半分ほどは水道をひねっても水が流れないので、バケツにためておいた水を使って、シャワーを浴びたりトイレを流したりしていました。

普段から、ホームステイしていた家はモーターポンプを使って汲み上げていたのでポンプがない家の人たちがよく借りに来ていました。(一日に二回はシャツを替える乾季に洗濯やシャワーができないのはかなり厳しいものがあります、、、)

電気や水といったインフラへのアクセスは国民の権利だと考えてみると、まずは清潔な水に確実にアクセスできる環境を作ることが大切です。ファベーラに住む貧困層の人たちはインフラの欠落の影響をいちばんに受ける人たちだからです

リオデジャネイロの上下水公社(CEDAE)は2021年に民営化され、これからどのようにインフラが改善していくかに注目が集まっています。

(おわり)

参考文献

https://unhabitat.org/sites/default/files/2020/06/indicator_11.1.1_training_module_adequate_housing_and_slum_upgrading.pdf


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