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『物語の欠片』のカケラになれた日

鳥のことなら知らないことなどないのではないかと思われる鳥描き橘鶫さんが執筆されている大長編『物語の欠片』。
この物語の愛読者の皆様には「ええ~、何だって?!」という発表だったであろうこちらのお知らせ記事。

そう、身の程知らずにも私、鶫さんご本人から物語の登場人物たちのイメージ画のご依頼を承りました。シリーズの新篇『朱鷺色の黎明篇』で挿絵として使っていただく予定です。
本記事では絵を描くまでの流れと今回使った画材のお話などをしてみたいと思います。

絵ができるまで

お話をいただいたのは七月下旬。
そのまた少し前に拙記事にて鶫さんから「コラボできたら」とコメントをいただき、大興奮してしまったのですが、まさかこんなに早く実現するとは!

改めてご連絡いただいた際に、念のため確認させていただきました。
私の水彩の作風でいくと、「キャラクターを描く」というよりもっと観念的な、抽象的なイメージ画になるけれど、大丈夫ですか、と。
鶫さんからのお返事は「むしろそれを望んでいる」とのこと。
う、嬉しい…。
ふふ、それからこれ、すごく自慢したいんですけど。
その時、私の中性的で半抽象的な絵が「好みの絵」って言っていただいたんですよ!
それを読んだ瞬間ワタクシ、どうなっていたかといいますとね


きゃー


こうなってました。

あの写実的な中に様々な表情を盛り込んで鳥を描かれる鶫さんにそう言っていただけた、というのはもちろんのこと、あの絵柄でご依頼いただけたというのも、私にとってはとても意味のあることでした。
普段依頼を受けて描くものって、可愛いテイストのイラストでデジタル描きのものが多いのです(もちろんそれはそれでありがたいし、それも描いていて楽しいです。)
でも今回、鶫さんから水彩画でのご依頼を受けて、「描きたいものを描き続けていてよかった」「見ていてくれる人はいるんだ」と言葉にはできないほど嬉しかったのです(で、前出のイラストのようになってました。)

具体的にお話をいただく前には「下手なものを出して物語のファンの皆様からブーイングが来たらどうしよう…」という心配があったのですが、制作を始めてみると「鶫さんに「こんなの違うわよ!」って言われるのヤダ~」と、鶫さんの評価しか気にならなくなりました。
毎回完成した絵、すごくドキドキしながらお送りしてたんですよ!
実際、七枚描いたうちの四枚は、鶫さんのイメージと違っていたり、大事な要素が欠けていたりして描き直しています。自分で「これは違うだろ~」と思って描き直したキャラクターもいます。
そのあたりの細かいお話は鶫さんが絵を公開された後、裏話みたいな感じで改めて記事にできたらなと思っています。

ちなみに今回描かせていただいたキャラクターのセレクションはすべて私の独断。
当初、鶫さんは「とりあえず一枚で」と思っていらっしゃたのですが、私のほうがイメージ(妄想)をモリモリ広げてしまって、最終的に七枚に落ち着きました。
実はまだまだ描きたいキャラもあるのですよ。

画材の話

せっかく水彩画で、ということでいただいたオファーだったので、普段愛用している絵の具と紙のお話をしたいと思います。もちろん今回の『物語の欠片』の挿絵もこの絵の具と紙で描きました。

まずは絵の具。
Schminckeというドイツブランドの固形水彩を使っています。

閉じた状態
開けた状態…うっわ汚ねえ…ごもっとも

このSchminckeを使っていることにはそんなにこだわりがあるわけではなく、以前アクリル画を熱心に描いていたころもこのブランドのを使っていて親しみがあり、値段も「そりゃ高いけど、このくらいは投資してもいいか」という許容範囲である、というのが大きいです。現在、もっと一つ一つの色の面積が大きいセットに乗り換えるか検討中。刷毛で色を取ろうとすると、どうしても欲しい色だけじゃなくて、お隣も触ってしまうので…。

紙はこれまたドイツブランドのHahnemühleのBambooというMixed media用の紙を使っています。

どちらも同じBambooでサイズが違うだけです。カバーのデザインはけっこうよく変わるので買いに行くたびに新しくなっていたりします。

水彩用の紙より、こちらの方が断然気に入っています。何が違うって、塗り込みへの耐久性。水彩はサラッと色を乗せたらネチネチしつこいことをしない主義だったんですが、この紙に出会って変わりました。
そのすごさを実感したのが確か2019年のこちらの作品だったかと思います。

30 cm x 37 cm

一度塗った部分を水だけの筆で抜いたりしています。これはそれ以前に使っていた(今も場合によっては使っているけど)紙ではすでにけば立ってたよなあ、というようなゴリゴリズリズリに耐えてくれる紙。これがHahnemühleのBamboo(←うわ、すごい宣伝してる…回し者ではございません。)

ちなみにドイツ製のものばかり使っている印象だと思いますが、ある程度以上の質を求める場合、やはり土地が近いせいもあり、一番入ってきやすいドイツブランドの選択肢が多くなります。フランスのブランドで好きな紙もあるのですが、これまたお値段がすごいので、ホイホイ買えません。
チェコの画材・文具の老舗もあるのですが、数ランク下の存在。値段に見合っているとも言えますが。質は問わない、絵が描ければいい、という場合には使っています。

鶫さんとお仕事をして

あの大河ロマン『物語の欠片』のキャラクターの絵を作者ご本人から依頼していただけたなんて、今でも夢のようです。
しかし、どんなにコミュニケーションを重ねても、橘鶫さんという方のお姿は、鳥としてしか思い浮かばないんですよねぇ…。

あえて絵にしてみると、こんなイメージでございます。


頭はイヌワシ、体はクロツグミ…世界に一羽しか存在しないはず。


イメージも何も、そのまんますぎましたかな。笑
鶫さん、よろしければコピーライトなしの画質を落としていないものを進呈いたします(いらないかな…)

もしまだ鶫さんの物語を読み始めていなくて本記事も「何のこっちゃ?」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ第一話からどうぞ。

全体像をつかみたいという方はこちらから↓



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