見出し画像

墨でズキンガラス

またまたやってまいりました、水墨画による鳥の絵をお披露目する『墨で鳥』。

今回は……あ、はい、ズキンガラスです。
先週から今週にかけて綴ったワルシャワ紀行をお読みになった方は「やっぱり」とため息をつかれたかと思いますが、昨晩いそいそと墨を磨って筆を手に取ったのには別の理由がありまして。

それは穂音さんの『長夜の長兵衛』シリーズで

源兵衛の筆さばきがあまりにも魅惑的で「今日中に墨で何か、できれば菖蒲が描きたい!」と思ってしまったから。

実は菖蒲も、私にとってはリベンジモチーフの一つ。

残念ながら何の進歩もないものが描き上がりましたが、恥をしのんでお披露目いたします。

菖蒲 1(書道半紙24 x 33 cm)
菖蒲 2(書道半紙24 x 33 cm)

花の形は「2」のほうがいいような気がしますが、墨の濃淡が出ず、単調な色遣いで失敗作。

そう言えば源兵衛は「大ぶりの紙」に描いていたな、と思い、書道半紙よりも大きい紙を引っぱり出して、もう一枚描きました。
菖蒲は花の色が濃いので花を濃くするか茎と葉の緑のほうを濃くするか迷うのですが、こちらは心持ち花のほうをより薄い淡墨で、茎のほうを濃い目で描いてみました。

菖蒲 3 (30 x 40 cm)

今回の菖蒲は以上。
菖蒲も引き続き練習を重ねつつ、紫陽花リベンジも忘れないようにしなくては。
実は紫陽花のほうも穂音さんの長編『ミズ・ミステリオーザ』と深い関係がありまして、私にとって穂音さんの作品群はインスピレーションの宝庫のようであります。


さて、図らずも(いや、わざとやってるだろキミ)本記事の本題となってしまったズキンガラス。
何なのその鴉?という方は拙ワルシャワ紀行にぜひ目をお通しいただきたいのですが、そんな長ったらしい旅行記読んでられない、という場合はワルシャワ紀行③の後半の写真で

ズキンガラスってこういう鳥なんだ、と確認していただければ良いかと思います。

ズキンガラスを目にした瞬間から「真っ黒な鴉より墨で描きやすそうだな」と思いました。ニシコクマルガラスはあの絶妙な灰色部分を残すのに苦労しますが、ズキンガラスのようにしっかり「黒、白、灰色」ときれいに分かれていると、まるで墨の濃淡のためにこの配色で生み出された鴉のように見えてきます(何たる傲慢な解釈か人間よ!って話なんですが)。
菖蒲を描くために磨った墨でしたが、菖蒲の後、残りの墨はズキンガラスに捧げることにしました。

こちらの二枚はいずれも書道半紙(24 x 33 cm)です。

ズキンガラス 1

何だか頭のほうがボサボサしてるね!と思われたでしょうか。
ワルシャワで何とも運よくズキンガラスの派手な水浴びを観察できたのですが、バシャバシャやった後、ブルブルっと全身を振るわせて水を飛ばし、その後このような羽並みになっていたのです。

もう一枚は、きちんと(?)乾いた状態のズキンガラスです。

ズキンガラス 2

こちらは「ワルシャワに行ってきた記念」で裏打ちしようかなと思います。

しかし瞳が真っ黒で、可愛いですね……物足りないですね。
こんなにズキンガラス観察を堪能した後でも、ニシコクマルガラスの目力は私のハートを射抜いたまま放さないようであります。
それにしては最近描いてないね、ですって?
いえいえ、モリモリ描いていますよ、ニシコクマルガラス。
公開していないだけです。ふふふ。

ところで先日、毛筆書きのついでに青鷺名人を描いた際に

「普段は水墨画には『水墨画用』として売られていた青墨を使っているけど、茶墨のほうが温かみがあっていいかも」って思ったんです。
そのくせ新しい青墨が買ってあって、最近それを下ろして使い始めたんですが、これが今まで使っていたのより更に青い!
ちょっと衝撃でしたが、描く物に合わせて使い分ければいいかと思うことにしました。

今日お見せした絵も全てその新しい青墨で描きました。源兵衛の言う「あやめの青紫(『菖蒲華』本文より)」に合っている気がしましたし、ズキンガラスの灰色の羽根もどちらかと言うと青に近いように見えますから。

あれ?そう言えば青鷺名人も青、ですよね?
さすが名人、何でもお似合いですな……というのは取って付けたような言い逃れ。失礼しました。
モチーフに合わせるんじゃなくて、描きたい絵の雰囲気に合わせて墨を使い分けていけばいい、ということなのでしょう。

ではでは、今回の『墨で鳥』はこの辺で。


豆氏のスイーツ探求の旅費に当てます。