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『物語の欠片』のカケラの裏話2024アキレア・リリィ

橘鶫さんの大長篇『物語の欠片』で使っていただいている拙挿絵の制作裏話、「天鵞絨色の種子篇」第二弾です。前回同様、新たに登場した二人をまとめてご紹介します。

これまでに拙画が挿絵として使われた物語とその裏話はこちら↓

今回のペアもなかなかに凄いことになっています。
今篇は毎回違う登場人物が本人の視点で語るという形を取っていて、先発のお話と後出のお話が具体的につながっているわけではありません。よって本篇では接点のない二人が私の裏話で並んだりする可能性も高いわけですが……この二人がもし物語の中で出会ったら、という妄想が止まらない……。

ちなみに挿絵は物語と共に楽しんでいただきたいので、こちらでは掲載せず鶫さんの物語のリンクを埋め込みます。
物語の最後に全体像を載せてくださっているので、どうぞそちらでご覧ください。

アキレア

今回の一人目はアヒの族長、アキレアです。

この絵に鶫さんから合格をいただいて以来「この絵が!鶫さんの物語の扉絵としてタイムラインに並ぶのだ~」と考えるだけでニヤつきが止まらなかったのですが、実際このアキレアが公開された時には……「どどん」という音が聞こえた気がしました。笑

アキレアは鶫さんに最初にコラボのお話をいただいてからも、長いこと「この人は水彩では描けない。描いたとしてマンガかなあ」なんて思っていたんです。
族長としても奥様のツバキがいらっしゃらなければ実のところ何とも頼りない、というエピソードもあったし、ポハクの族長パキラの前ではぷしゅぅと小さくなってしまうし。キリッと決まった水彩でこの人格を描き出すのは無理なのではないかと思っていたのです。

しかしルクリアを描いたことで化身をコンプリートしたのと並行して物語の中でアキレアの様々な面に触れていくにつれ、「描けるかもしれない……アキレアを描けば族長コンプリート……」という欲のようなものがムクムク湧き上がってきて、この春、新篇に向けて描き始めた時、最初の一枚として着手しました。

最初に描き上がったものをお見せした時の鶫さんの反応は
「表情はいいんだけど、彼はもっと髭があるんですよね」
でした。

あら、私の頭の中のアキレアももっと髭モジャでございますのよ?
なんだ、遠慮せず髭入れていいのか(初期のパキラと言い、髭ってなんでこんなに問題児なのかしら……!)

普段ご依頼等で描く時はダメ出しをいただいたら元の絵は捨てて新しく描き直すのですが、このアキレアの表情は私にとって「あまりにもアキレア」。
しかも問題は髭だけ。
そこでこの絵は捨てずに髭だけ増やして再提出し、合格をいただきました。

ちなみにこの絵、やはり『物語の欠片』の熱心な読者さんであるAlohaさんにコメント欄で「恵比須様のよう」と書いていただき、私も「まさに!」と思った次第です。この場を借りて御礼申し上げます。

リリィ

そして今回の二人目は

リリィです!

え、「リリィです」だけなの?
他の人は「○○の族長」とか「○○の化身」とか、肩書あるじゃん?

もちろん彼女にもあるのですよ、「アグィ―ラ王国医局長の妻」という立派な肩書が。
しかし、物語をずっと追っている読者の方々にとっては「あのリリィ」なんだと思うのですよ!
あの、カリンを目の敵にしているアオイの母、リリィ!
あの、怖いだけだと思っていたらじわじわ良い味を出してきたツツジの妻、リリィ!
いろいろ書けますが、もう皆様の中では「あのリリィ」になっていると思うのです。

ともあれ主人公カリンを目の敵にしている鬼婆(い、言ったな!でも私の中ではそうだったんだもん)なんぞを絵にしようという予定はさらさらなかったのですが、今回複数枚描いていくうちに「アグィ―ラ人を一人は描いておかないと何だかバランスが悪い」と思い始めまして、ちょっと悩んでリリィに挑戦してみることにしました。
アグィーラ人、もちろんたくさんの登場人物がいますが、「描きたい!」って思わせてくれる人は少ないんですよね。街っ子だから特徴を出しにくい、ということなのでしょうか。それでも描きたい、と思うのはヨシュアですが、彼も頭の中でかなりイメージ修正しなくてはいけない人の一人。というのも初登場の時点で彼をかなり年配の人として想像して読み始めてしまい、後々もっと若かった、と認識したという背景があるから。

で、リリィに挑戦することにしたのはいいのですが、これは今回一番苦戦した一枚。
この採用されたリリィ、三枚目の正直なんです。

一枚目は何と言うか、「苦悩のおばさん」って感じの絵でした。
ツツジがいつか言っていた「あれにもいろいろあるのだ」のいろいろをドロドロした苦悩として表した雰囲気だったのですが、鶫さんからは
「リリィって、純白の人なんですよ。だから、リリィなんです」
とのお答え。

え、そんなリリィ、知らんです……。

リリィは周りには眉をひそめられるような性格でも、本人は「正しいことをやっている」という信念で生きている、らしいのです。

へええ、と半信半疑で仕上げた二枚目は、自分でも「どこの嬢ちゃんよ」と突っ込んでしまうような純真な少女で、しかも百合の花の中に座っている構図。
この絵に対する鶫さんの反応は
「これで目付きがきつかったら、かなりリリィ」
でした。

そこでやはり百合の花から顔を出すというのはやりすぎか、と花は削除し、同じ人物がキッとこちらを真っすぐ睨んでいるような絵にしました。
それが今回、リリィの話の挿絵として登場した一枚です。

使っていただくことになった後も、「これがリリィ?」という思いが残っていたのですが、今回彼女のお話を拝読して、いろいろと納得できるものがありました。
ま、その「いろいろ」は読者様が実際にお読みになって感じていただくところだと思うので、私からはこの辺で。


ではでは、また鶫さんの物語に二点ほど拙画が登場しましたら、裏話もお披露目したいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。


今日の一枚。

なーんと!青鷺名人、「お盆休み」と言いながらサボタージュです!
青いRu鳥一羽では何とも寂しいので、アカエリクマタカ殿をお招きして溶ける前の氷菓子をお出ししました。
Ru鳥はリリィが残したぬるいお茶をいただくことにします。あ、ワタクシ極端に冷たいものが駄目なんで。アイスとか氷が山のように入った飲み物なんかも、どんなに暑い環境でも二口くらいが限界かなと(それってあの小説の誰かさんと同じじゃん!……あ、はい、ま、そういうことです)。


豆氏のスイーツ探求の旅費に当てます。