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1年間開発したプロダクトを捨てて、5日でダイニーをリリースした話

こんにちは、dinii CTO の大友(@dinii_k_otomo)です。

dinii では、次の 50年の飲食インフラとなるべく、飲食店内向けモバイルオーダーと CRM サービス「ダイニー」を開発・運用しています。

dinii は 2018年に創業し、当初から飲食領域に特化はしていたものの、複数回の大きなサービスのピボットを経て、今のプロダクトに落ち着いたのが 2020年のこととなります。

スタートアップにピボットはつきものとはいえ、それぞれのサービスはその時の全身全霊をかけて取り組んだものでもあり、方向転換にはやはり勇気と大胆さ、それからブレない気持ちが必要だと常々思っています。

今回は、過去のピボットのうち、一番最初の事例をご紹介したいと思います。

dinii という会社の原体験や、雰囲気を少しでも感じてもらえれば嬉しいです!!


最初のチャレンジは、1年かけてサービスリリースが出来なかった

元々は現CEOとは、大学入学以前からの付き合いがありました。

お互いに現役での東京大学入試に失敗し、田舎から東京に出てきて、同じ予備校、同じ寮で 1年間受験の苦楽を共にしました。

まさに絵に描いたような"寮"で、共同の風呂・トイレ・食堂で、まさしく同じ窯の飯を食っている生活でした。

当時の寮生や予備校の同期は、不思議なことに起業家が多く、皆ここに何らかの原体験があるのかもなと思っています。

晴れて1年間の浪人で東京大学には入学できたのですが、入学後は自分が理系、CEOの山田が文系に進んだため、お互いに多くの接点はありませんでした。

自分が大学院1年の頃、CEOの山田から GovTech 領域でのプロダクトを作りたい、プロダクトを作ってくれと声をかけられ、スタートしたのが最初になります。

最初の GovTech 領域のプロダクトは、自分たちがスタートアップであるとか、上場を目指すとか、そういう意識は全くなく、とにかくピュアに CEO の山田の「日本の政治を良くしたい」の信念だけで、がむしゃらにプロダクト開発と行政の方々への交渉を1年ほど続けていました。

とにかくこうしたいという将来を語り続けて、とにかく行動をし続け、そうこうしていくうちに段々と応援してくれる方々は増えていき、日本各地の公務員の方や、市議会議員の方、国会議員の方々にまで、期待や応援のお声をいただく規模にまでなっていました。

いち学生だった自分達の行動次第で、想像以上の多くの人たちが応援してくれて、その方々に支えられることで、自分たちの想像以上の位置にまでいくことができる感覚を最初に覚えた経験です。この原体験が今の dinii の原動力にもなっていると感じていますし、シード期やそれ以前のフェーズにおいては、とにかく創業者がどれだけ行動できるかにかかっているということを感じます。

しかし現実はそんなに甘くなく、「日本の政治を良くしたい」という、ある種初挑戦するには大き過ぎる課題感、政治や地方自治体という領域への参入に非常に苦労し、結局 1年間かけて作り込んだプロダクトは実際にリリースされることなく、日の目を見ずに幕を閉じました。

自分たちの頑張りが成果につながらなかったことはもちろんですが、ここまで応援してきてくれた方々に恩返しができなかったことの悔しさが強かったことをとても覚えています。

ビジョンがあり、賛同してくれるフォロワーがいたとしても、真に自分ごととして考えられる課題でないと、世の中に新しい価値を創り出すのはとても難しいんだということを痛感させられました。

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こちらは当時開発していたアプリのスクリーンショットです。地方自治体向けの SNS を構想していましたが、最終的にユーザに使われることなく終わってしまいました。

開発着手から5日でリリース、課題の手触り感の重要性

2017年の年末から、2018年の年明けにかけて、GovTech 領域でのチャレンジを諦める決断をしました。

そのタイミングで、現 CEO の山田が当時のメンバー全員とサシ飲みに行き、「もう一回チャレンジしたい。やってくれるか?」という話をしたのを覚えています。その時のメンバーは全員、もう一回やろうという気持ちで再度チャレンジすることを決めました。

次に何をやるかは非常に悩みましたが、1年間リリースできなかった苦い経験を踏まえて、「身近な課題・自分ごととしての課題に取り組む」ことに、とにかくこだわりました。

当時のメンバー3人で、思いつく限りの「身近な課題・自分ごととしての課題」をとにかくポストイットに書きまくり、何に注力するかを延々と議論したのを覚えています。候補の中には、忘れ物防止アプリや、道案内アプリ(私が極度の方向音痴なため)などもありました。

全部で 100種類以上の課題が出た中で議論を進めるうちに、3人共通して手触り感ある課題感として選ばれたのが、「ランチの待ち時間をなくしたい」という課題でした。

当時は全員学生だったので、大学の昼休み、限られた時間でキャンパス周辺で美味しいランチにありつけるかどうかは死活問題だったわけです。またこの課題は学生だけでなく、社会人でも同じ課題はあるため、ある程度の広がりもあるだろうなと考えていました。

お昼を食べる前に、アプリで注文・席予約・決済ができるようにすると、この課題は非常にスマートに解決するのではないかと考えました。

ここまで決まると、早速 MVP (Minimum Viable Product) の製作に着手しました。

当時は「東大テックガレージ」という、東京大学内のスタートアップ支援拠点に出入りさせてもらっており、いわゆるリーンスタートアップ的な検証方法については、東大テックガレージの馬田さんにたくさんの知識をインストールしてもらっていたため、かなり王道的な進め方をしたことを覚えています。

(当時の詳細な検証方法については別記事で触れたいと思います)

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「ランチの待ち時間をなくす」ための必要最小限の機能を選定するにあたっては、まず想定機能をポストイットにひたすら羅列しました。

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初期必須機能の優先度づけを行いました。Nice to have な機能がやはりたくさん出てくるのですが、いかに最小構成の必須機能を揃えるかに頭を捻りました。

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当時のカスタマージャーニーマップです。忙しいランチ時間の強力な競合は、「コンビニ」であると考え、比較をしている様子です。

MVP 開発着手からリリースまでは、わずかに5日間

最もコアとなる注文までの導線のみアプリ実装して、お金の支払いはメンバーが店舗にデポジット(要は身銭を切って建て替え)、注文受注は、Slack に通知を飛ばしてメンバーが店舗に人力電話をして予約することで、ランチの事前予約システムを実現させていました。この時の MVP 開発については、FoundX の馬田さんの記事でもご紹介いただいております。

https://speakerdeck.com/tumada/mvp-falsezuo-rifang-tonikakuza-nizuo-ru-shou-zuo-ye-xing-mvp-falsesusume?slide=18

また開発と並行して、テストユーザーをとにかく集め、本郷近辺の店舗への飛び込み営業で協力店舗を募りました。

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当時、足で集め続けたテストユーザリストは、最終的に600人弱になっていました。

GovTech 領域のプロダクトでは1年かかってもリリースできなかったものが、手触り感のある課題、自分たちが解決し得る課題にピボットしたことでわずかに5日でリリースすることができました。ここからも、スタートアップにおける課題の手触り感、市場へのアクセスのしやすさの重要性が分かると思います。

リリースすることで初めて検証できる

ランチのアプリのリリース後、また様々な問題や壁にぶち当たり、その度にやり方を変え、時には根性で乗り切り、時には運や周りの人の助けもありながら、さらに3度のビポットを経て今のサービスの形に至っています。

ここでの重要な学びとしては、その課題の大きさによらず、真に自分ごととして捉えられる課題から始めること、小さくても不完全でも、世の中にプロダクトをリリースして初めて仮説検証が動き出すことです。

dinii は今でこそ、次の50年の飲食業界を作るための壮大なミッション・ビジョンに向けて日々全力投球できていますが、初めは「お昼休みのランチの待ち時間を無くしたい」という、誰しもが感じる課題感からスタートしています。最初に、小さくも圧倒的に手触り感のある課題を選び、そこに対して素早くリリースと検証を繰り返すことで、一歩ずつ、大きな課題がくっきりと見えてきました。

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こちらは実際に当時のサービスを利用したユーザさんが撮影してくれた写真です。お店の方のご好意で手書き札を用意してくれていたり、少数ではありましたが愛されるサービスであることを感じる瞬間がありました(当時のサービス名は「ココペリ」でした)。

dinii は、日常にありふれた課題からスタートして、今世の中を変革する挑戦をしているスタートアップ企業です。

一緒に次の50年の飲食インフラを作り、飲食をもっと楽しく面白くしていく仲間を絶賛募集しています。

創業期の話をもっと聞きたい人も大歓迎です、ぜひ一度カジュアルにお話ししましょう!

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