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【注目新刊】2023年2月上旬

ちくま新書・ちくまプリマー新書

『読むワイドショー』パオロ・マッツァリーノ[著] 

自称イタリア生まれの日本文化研究者、謎の知的エンターテイナーの待望の新刊です。
今回は、テレビ番組や芸能界が題材。
『反社会学講座』の切れ味をまた楽しめるのが待ち遠しいです。


『村の社会学 日本の伝統的な人づきあいに学ぶ』鳥越皓之[著] 

村の人づきあいに学ぶ、というサブタイトルの部分には、共感ではなく反発を抱いてしまうのが本音です。
また、その伝統とやらが、そもそもいつの時代までさかのぼれるかも疑問です。戦後か、明治か、江戸時代までか。

それでも、村の伝統的なあり方がどうだったかについては興味があります。
手にとって、そういう興味を満たしてくれそうなら購入してみたいと思っています。

『反戦と西洋美術』岡田温司[著]

著者からして、おそらく美術の本というより、美術を題材にした思想の本。
実際に手にとって、読むのに要求される水準があまり高くなければ、購入してみたいと思っています。

『宇宙最強物資決定戦』高水裕一[著] ちくまプリマー新書

タイトルが怪しすぎます!
商品説明が怪しすぎます!
「宇宙最強とは何か?誰もが一度は想像する問いに答えるべく、
擬人化された天体や宇宙の物質たちがバトルを繰り広げる!!」ですって。

一応、宇宙論の入門書らしいのですが…
とりあえず手に取って中身をのぞいてみたい気にさせられた時点で、負けた気分です。

新書(その他)

『誰だって芸術家』岡本太郎[著] SB新書

現在では入手が困難になった絶版本や新聞連載をまとめた本とのこと。
若い頃バタイユなどと交流するなど思想的にも深い造詣のある日本を代表する芸術家。
そういった方が一般人向けに平易な言葉で語る本は、
普通は聞き流しそうな言葉にも血や肉が通っていて味が深いので、とても好きです。
自分の読解力では汲み尽くせないのですけど…

『異性装 歴史の中の性の越境者たち』中根千絵ほか[著] 集英社インターナショナル新書

複数の文学研究者の方が、東西の文学に登場する異性装を題材に書いた論文集。
どれくらいのレベルの話か、面白いかどうかは、実際に読んでみないと分からない福袋。

単行本(歴史)

『ミドハト・パシャ自伝 近代オスマン帝国改革実録』アフメト・シェフィク・ミドハト[著]佐々木紳[訳] 東京大学出版会

世界史の教科書にその名を刻んでいる人物の自叙伝。
トルコの近代化改革タンジマート。その最終局面に発布された憲法に名を残したオスマントルコの初代大宰相です。
皇帝にあたるスルタンの首をすげ替えたことや露土戦争のことなど、どこまで史実の真実に触れているのでしょうか。

『世界史のなかの近代日本』小風秀雅[著]山川出版社

トルコが近代化改革を試行錯誤していたころ、ユーラシア大陸の反対側では日本が明治維新を経て近代化を進めていました。
一足先にトルコは露土戦争で敗北して「ヨーロッパの重病人」となる一方、
日本は日露戦争に辛勝して、独立を維持しました。

この開国から日露戦争までの期間、日本が世界をどう見たか、世界が日本をどう見たか。
この双方向の視点がこの本の内容とのこと。
日本側からの視点は日本史でお馴染みですが、世界(おそらく西洋列強)側の方は興味がわきます。

単行本(思想)

『人新世の経済思想史』桑田学[著] 青土社

『産業革命期の社会思想史』とも表現できる内容を、現代風に言い直しただけな気もしますが…
冷戦後の社会思想史ではマルクス主義の人気凋落もあり、社会思想史はあまり目ぼしいタイトルがなかった印象を個人的には抱いています。
若手の著者による新刊が、この印象をくつがえしてくれるかなと期待しています。


『セックスする権利』アミア・スリニヴァサン[著]山田文[訳] 勁草書房

この著者については、寡聞にしてよく知りませんが、若手のフェミニズム哲学者の方だそうです。
エッセイ集のようですが、各章の名前が目をひきます。
「セックスする権利」、「ポルノについて学生と話すこと」、「教え子と寝ないこと」…
斜め上な切り口を予感させるこれらのタイトルに興味をかき立てられています。


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