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【注目新刊】2023年2月第2週

講談社学術文庫

『天明の浅間山大噴火 日本のポンペイ・鎌原村発掘』

角川選書(1986年刊)の文庫化とのこと。
火山噴火で丸ごと埋まって、その日のまま保存された人の住む区画…
ローマのポンペイのような事例が日本にもあるとは知りませんでした。


『西太后に侍して 紫禁城の二年間』

清朝末期の権力者西太后(1835-1908)。
彼女の晩年(1903-1905)に通訳として仕えた女性が、1911年に出版した回顧録。 
ただし、この著書が西太后について記述したものには、脚色や史実誤認だけでなく、一部創作まで含まれるとのこと。

1942年の翻訳書(原書は1911年出版)ですが、旧字体や旧仮名遣いなどの表記は更新済みの模様。


講談社選書メチエ

『失格でもいいじゃないの 太宰治の罪と愛』

太宰の作品を、「弱々しく生きる自由があり、弱々しくしか生きられない私たちに寄り添う」存在として読む、というスタンスで書かれた評論。

人にも薦められる私が好きな太宰論は、『太宰治 弱さを演じるということ』安藤宏[著] ちくま新書です。
こちらの太宰論では、弱者であることと、自覚的に弱者であることとの差(私小説内の、作者と作者に近似した登場人物との差に通じる)に十分な注意をはらっています。

弱者への視線・表現を取り上げて読む点では、両者の評論には通じる点がありそうです。
両者の評論がどう交わり、どうすれ違うのかも気にしながら読むのは面白そうです。

『逆襲する宗教 パンデミックと原理主義』

9.11同時多発テロ以来、原理主義といえばイスラム教がまず思い浮かぶ状況でした。
近年では、キリスト教にも言及されることも増えた印象があります。

ただ、今回この本が目を引くのは、ユダヤ教、ロシア正教、ヒンドゥー教も取り上げている点です。
宗教が何か、そもそも世俗が何かを考える一助になる本かと思います。

ちくま文庫 ・ ちくま学芸文庫

沢庵『不動智神妙録/太阿記/玲瓏集』

『五輪書』『兵法家伝書』とともに、日本三大兵法書に数えられる『不動智神妙』。
タクアン漬けを考案したとされる禅僧によるものだけあって、精神論となっています。


『メディアの生成―アメリカ・ラジオの動態史』

既にメディア史の古典となっているのではないかと思われる本(1993年刊)の文庫化。
補論を追加したほかは、多少の修正がなされたのみで加筆はなしとのこと。


長谷川眞理子『オスとメス=進化の不思議』

動物の性淘汰から人間の進化や適応について研究す著書による進化生物学の入門書。
もととなった『オスとメス=性の不思議』は、大学の教養課程で読んだ記憶があります。
今回、増補改訂されたようなので、久々に手にとってみたいと思っています。

単行本

『習慣と脳の科学―どうしても変えられないのはどうしてか』みすず書房

『習慣と脳の科学―どうしても変えられないのはどうしてか』ラッセル・A・ポルドラック[著]

認知神経科学や心理学から、習慣とはなにか、習慣化のメカニズムはどうなっているかなどを解説。(第1部)
そのメカニズムをふまえて、習慣を変えたり、習慣化を利用する方法を紹介する。(第2部)

習慣を扱ったビジネス本や自己啓発書は巷にあふれていますが、
それらに、科学的な裏付けがどこまであるかは眉唾ものです。

本書は神経科学にもとづいて習慣を解明しようとして得られた成果とのこと。
もし読みやすいなら、一気にベストセラー化しそう。
難しくて読みにくくても、この本の影響でビジネス書の「習慣」ものの内容が変わるかも?などと夢想させられています。

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