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劇場版だからこそできること 『劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇』

リバイバル上映をしてきた『劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇』を視聴してきた。その感想記事になります。紅蓮篇の感想記事はこちら

結論から言うと、自分は劇場版の改変は好きだった。
美味しいところは逃さず、スピディーに魅せるための、良い改変だったと思う。ロージェノム戦がほぼカットされたのは悲しかったが…

やっぱキングキタンは特攻しないと。そこをカットしなかったスタッフは分かってる。


劇場版だからこそできること

アンチスパイラルとの決戦における、劇場版とTV版の違い。どちらが制作陣が本当にやりたかったことは分からないが、1つのやりたい展開を実現できたというのは伝わった。

紅蓮団の全員が集結して、それぞれのガンメンをリファインした機体にのって、アンチスパイラルと戦う。『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』の最終話のような、各キャラ集合、技を披露して大活躍というお祭り感は、こうした劇場版ならでは。これも1つの王道。


確かに、TV版の各キャラが特攻して少しずつ減っていく展開も熱かった。
しかし、あれは毎週盛り上がりどころを作らないといけないTV版ならではの制約の中で生まれたもの。逆に劇場版では冗長になりすぎる。
そうした、劇場版だからこそ、という展開を作り出せていたのは良かった。

何より、パンフでも記述されていたが、劇場版は一種のお祭り。作画もBGMも声優の演技も、「お祭りを盛り上げよう」という意識が強く現れていたと思うし、そこでブレない作品を仕上げたのは、自分は評価したい。


ちなみに特典のパンフによると、吉成曜さんの「なんだ『螺巌篇』はTV版と同じなのか…」というボソっとしたつぶやきからこの展開は決まったらしい。おかげで全キャラ分の天元突破デザインを描き起こさないといけなくなり、吉成さん本人が苦労するのも含めて好きなエピソードだ。


個人的に追加シーンで一番嬉しかったのは、ED後のおじさんシモンのシーンが追加されていたこと。

各地の貧しい人々を、穴掘りシモンとして助けて、少しでもニナの願いを叶えるために花を植える場所を増やしていく。そんなシーンが描写された。

カッコいい老いのエンドとして、後味を凄く良くしてくれた追加シーンだ。
TV版だと「シモンは何をしてんの?マジの浮浪者?」と思ってしまい、少し萎えた記憶があったので…


思い出補正、それに打ち勝つためには

もちろん、TV版のほうが好きなシーンはたくさんあった。
最後のアンチスパイラル戦の肉弾戦は、そうした描写が好きなのはわかるが、少しクドいなと思ってしまった。

TV版のほうがテンポ良く決まって心地よい。そして最後のセリフはTV版の「人間はそこまで愚かじゃない」のほうが良かったと思う。
他にもヴィラルと少しずつ友情が発生するシーンとかないと何かモヤモヤするなとか、色々と思うところはある。

でも、それはしょうがない。
TV版には、思い出補正という最強のスパイスがかかっているので、何をしても勝てない。
だからこそ、こうした劇場版というのは、新たな意味、解釈を作品に与えなきゃいけない。

そうした役割をしっかりと果たせた作品、劇場版だった。


シモンに諭されました

TV版でもあったようなのだが、完全に自分が見逃していたシーンが1つ。
ニナが消えたあとに、どうして螺旋力で復活させないんだとシモンが問いかけられるシーン。

あれは、まさにまだガキンチョだった自分も思っていたことだった。ギミーの疑問は、中学生だった自分の声でもあった。ここまでハッピーエンドの勢いパワーで何とかしてきたなら、みんな幸せにすればいいじゃないかと。

そこに対するシモンの答え。

死んだものは、死んだものだ。
無理に蘇らせたって、あとに続くものの邪魔になるだろう

天元突破グレンラガン 27話より

死者の復活なんて茶番な展開をしたら、今までの感動が台無しになるということも、大人になった自分の頭では納得できていた。でも、こころのどこかで残っていた子供な自分が抵抗していた。
それをシモンの声で回答してくれたことで、初めて自分の心にストンと落ちた。

小さい頃の自分は無意識的に認めたくなくて記憶から消していたのかもしれない。このシーンを見れたこと、そして納得できたことが一番の収穫だったかもしれない。
なんというか、シモンのおかげで1つ大人の階段を登れた気がする。

TV版のほうが良いところ、逆に劇場版のほうが良いところ、もっと語りたいところはたくさんあるが、今日はここまでにしたい。


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