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古のSF作品のよさ_『ファイブスター物語』感想

この令和の時代に、ファイブスター物語という、1986年に連載開始され、89年に劇場アニメ化された作品を映画館で見てきた。

東京って凄い。
こんな古のSFアニメ作品が映画館で見られるんだから。
シネマート新宿という映画館で見たのだが、「昔の映画館」って感じで、座席の高さの差がほとんどなく、スピーカーは床に直置き。
上映当時の80年代末を匂わせる環境だったのが最高だった。
(当時は生まれてすらいないから知らんけど)

永野護の根強いファンがいる作品ということは知っていたけど、SFの根強いファンがいる作品って、意外と物語としては面白くないことが多くて、期待はしていなかったのだけど…

結論からいうと、最高でした。


冒頭のナレーションでグッとくる

SF作品で必須なのは、ナレーション。
若い主人公とかに独白させるんじゃなくて、年季の入った声優を使った渋いナレーション。
ガンダムから始まり、名SF作品にはこれがないと始まらない。

今作品も最高のナレーションをぶちこんでくる。
まず、「〇〇歴xxxx年」の表示。
これだけで、男はテンション上がる。

そして語られる設定、世界観。
この物語はどういう話なのか、何が起こるのか、絶妙なワードチョイスでほのめかされる。


高まったテンションのところにかかるのが、荘厳でカッコいいクラシック調のOP。
オーケストラとかを使ったテーマ曲ってSFで使われなくなった気がする。

まさに「こういうのでいいんだよ」な入り。


劇場でこうなってました
引用『孤独のグルメ』©久住昌之


重そうな設定とシンプルなストーリー

友達から、やたら多い専門用語(設定)と、多種多様な勢力が絡み合う複雑なストーリーがいいんだよ!と熱弁されていたので、正直あまりこの映画作品としてのストーリーは期待していなかった。

得てしてこういう語り方されるSF作品は、見ててポカーンとなることのほうが多いイメージだったので…
作画が鬼なことは知っていたので、そこを期待していて、物語としては全く期待していなかったのが正直なところである。


ここもよい意味で裏切られた。

確かに設定は重そうだし、単語はいっぱい出てくるし、勢力もバンバン登場するし、やたら登場人物の名前は長いし、馴染みない名前が多いから覚えられないし…

でも、根幹のストーリーと設定はめちゃくちゃシンプルだった。

アンドロイドな少女と一緒に、ロボに乗って戦争をしている世界。
そんな世界で、人の心を持ったままアンドロイド、彼女を戦いや大人の汚い欲望から、救おうとする主人公。

要するに、囚われのお姫様とそれを救う王子様、というお話。
王道以外の何ものでもない。


シンプルなストーリーを盛り上げる演出

正直、抽象化していくと、中学生でも書けそうなプロットではある。
それなのに、陳腐な作品になってないのは、アニメ作品としての完成度の高さだろう。

超作画、トンデモ世界観に説得力をもたらす背景美術、それによる圧倒的な映像美。
おしゃれなセリフ回しに、それを最高にカッコよく言い放つ名声優たちの熱演。
盛り上げどころ、やるべきことをわかっている演出。

こういったものがあるから、シンプルなストーリーでも引き込まれる。
女の子が可愛いく演出できていれば、それを愚直に救いに行く話だけでも盛り上がれるんです!

本当は、細かいところ1つ1つ語っていきたいくらいなのだが、長文になる気しかしないので、またどこかでじっくりと記載したい。


我慢できずに1個だけ書くと、最後の演出とか、タマランとです。
結局、この劇場版って物語の入り口にしかないわけで。
それを示す、OP(前奏)を最後に持ってきて、タイトル表示で締めるですよ…


古典SFってよい

アニメ界における古典SFって、設定の重さや長さから、敬遠されがちだけれども、実はストーリーはシンプルで単純に楽しめる。

ガンダムも銀河英雄伝説も、意外と話自体はシンプルだし、物語としての面白さが確かにあるんだなと、再認識した。

ちょうど、銀河英雄伝説も40周年で、劇場でリバイバル上映をしている。
『わが征くは星の大海』は視聴したのだが、改めて続きも見ようかなと。

堀川りょうが若い主人公で、ふざけてないカッコいい若本がいて、渋いナレーションがあって…
そんな作品って、もうどうしても作れないような気がするから。


物語の「王道」のよさと、SFのよさ、そして何か失われたものを感じた1日だった。

新しいかたちで、この良さは表現されていくんだろうけど。
もうこの形では見れないんだろと思うと少し寂しい。

めっちゃ良いMAD見つけたので、それをひたすらリピートしながら今日1日過ごします。

メモ:1800文字
時間:1時間ちょい







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