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先が分かる漫画の安心感

先(展開)が分かってしまう、なんてのは、作品を悪く評価する時に使われる言葉だと思っていた。
でも、そんなことはないんだなと思った話をしたい。

Lineマンガで、2つの作品を読んでいる。
1つは『きみのご冥福なんていのらない』。

なんで最終巻を貼ったかというと、この表紙に惹かれて読み始めたから。このタイトルとこの表紙はズルい。
あらすじは以下の通り(LINE漫画より)。

友達以上恋人未満なカンケイの同級生・小野に翻弄される女子高生・篠原。ある日、小野は事故で亡くなり、ゾンビとなって生き返るも身体を動かすには、篠原とのイチャイチャが必要で…!? きみを生かすため、さわる、つなぐ、だきしめる、そして…!!

LINE漫画あらすじページより抜粋

何となく、この粗筋から結末のオチはわかるんではないだろうか。
もちろん、『Dr.スランプ』みたいなギャグ世界だと、ゾンビ夫妻として街の名物になって〜みたいなオチで終わる可能性もあるだろう。

でもこの作品は多少のギャグはあるものの、全体的な雰囲気はラブコメ。
このタイトルと、そして、最終巻のあの表紙である。

実際に作中にも、主人公が相手の思いに応えずに逃げたしたことが大きなカギとなっているような伏線が貼られまくりだ。
少し切ない、でも前に向いて終わるんだろうなと想像しながら読む。なかなか自分には無い読書体験だ。


もう1つ。こちらは明らかに、タイトルが明確な作品のオチとなっている。
『今年の大みそかに付き合う二人』

こんなに結末バレ状態で作品を読み進めるのは初めてかもしれない。

結末が分からずドキドキして読むというよりも、くっつきそうな仲睦まじい2人をニヤニヤしながら応援するというスタンスで読んでいる。多くの読者もきっと同じ考えだ。

それを筆者も分かっていて、読者にストレスが無い、平和な世界を描写している。嫌な人物は全然おらず、大きな波乱も無い。緩やかに確実に進展する2人の世界を淡く描いている。

恋路に立ちふださがりそうな外的要因によるイベントが発生したりもするはする。女の子が転勤しそうになったりとか。少しハラハラする時はあるものの、それもあくまで軽いスパイス。誰も本気でこれで2人の関係性が終わるなんて思っていない。だってタイトルで約束されているから。


友人に、すでに完結している作品はwikiなどのあらすじでネタバレを見てから視聴するというポリシーを持ったやつがいる。なんて変わり者なんだと、全く理解できていなかったが、少しその気持ちがわかってきた。
そして、そうしたエンタメの楽しみ方をしたい人も一定数はいることを。

みんな、娯楽の中くらいは、予想通りの世界の中で安心して楽しみたいんだなと。
思えば、異常な流行りを見せた、100日ワニとかその典型だ。

裏切りや不安は現実世界だけ十分という気持ちは分かる。まぁそこまで思い詰めている人は少ないだろうけど。気軽に楽しみたいという需要は一定数あるし、そこに安定した作品を届けるクリエイターがいるのも大事なことだと思う。


でも、こういう作品ばかりが世の中で受け入れられていくのは、少し危機感もある。やっぱり、結末がわからない、ドキドキとしたサスペンスな物語が、世の中の主流であってほしいと思っている。

『ジョジョの奇妙な冒険』の作者、荒木飛呂彦先生が著書『荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟』でこう主張している。

人というのは、お金持ちでも、モテていても、自分が幸福だと言い切れる人でも、何かしらの不安を抱えて生きています。(中略)
この先どうなるんだろう、というサスペンスの中を生きているわけです。
(中略)
サスペンス映画の描く不安にきちんと向かいあって、どこの世界にも不安はあるし、それを感じているのは自分だけではないのだ、と共感した方が、ずっと癒やされます。少し大きな話ですが、なぜ世界にたくさん物語が存在して、その多くがただ幸福を描く話ではないのか。それは負や暗黒面を描くのが、物語の果たすべきひとつの役割だからだと思います。

『荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟』p19~20より

自分はこの主張が大好きで、やっぱり心に響くのは、ドキドキが詰まった、「サスペンス」な作品なのである。そんなことを思った休日でした。

以上!

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