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「あらすじを語ること」すらできない傑作小説

売れに売れたSF小説、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を今更ながら読み終えた。

記事を書いておいて何だが、まだ未読の人は今すぐ本屋に、もしくはAmazonでとりあえず上巻を買ってほしい。
何も見ず、聞かず、黙って買って読んでほしい。この本は事前知識がなければ無いほど、面白い。

どういうところが面白いのか、というところを語ることすら、面白さの半減につながるのだ。大まかなあらすじすら語ることすらできない。

読み始めると、時間が吹き飛ぶ読書経験をしたのは久しぶりだった。下巻に関しては、読み始めると私生活に影響が出ることが確定していたから、時間をとれる休日を選んでじっくり読んだ。


最低限の紹介を

さすがにそれだけではあまりにも作品紹介の記事として記載不足すぎるので、最低限の紹介をしよう。

語れるあらすじを言うと、ある男が、ベットの上で目を覚ます。様々なチューブをつながれ、自分が誰なのか、どうしてこのベットに寝ているのか、何にもわからない。そんなシーンからこの話は始まる。

これだけである。これ以上のあらすじを知らないほうが、絶対に楽しめる。この主人公は誰で、どういった目的でベットに寝ていたのか。「プロジェクト・ヘイル・メアリー」とは何なのか。それを解き明かす序盤で、グイグイと物語に引き込まれる。


もう少し抽象的にこの作品の魅力を解説しよう。

『シン・ゴジラ』が好きな人には間違いなく刺さる作品だと思う。頭の良い人達が、問題をガンガンと解決していく物語なのだ。
知恵と勇気で巨大なプロジェクトを前に進めていく様は見ていて非常に気持ちがいい。添えられる主人公のユーモアたっぷりの独白も、良いスパイスになっている。


そして、SFを読まない人にも読んでほしい。なぜなら、この作品はSFにありがちな「世界観や設定がすごい作品」ではないからだ。

難解な設定とか、独特な設定はない。現代の、我々の住んでいる現実世界で描かれる物語だ。そして、きちんと「小説」としての面白さになっている。魅力的な主人公とその彼が織りなす物語に、ゾッコンになるだろう。

だから、SF小説としてではなく、小説として、この本はオススメしたい。以上、今日の半日を溶かした作品の感想でした。

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