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パイの実記念日

先日、友人と飲んでいたときの話。何軒かお店をハシゴして、最後は公園のベンチで酒盛りに。未だに大学生みたいな飲みをしていることに、背徳感と懐かしい気持ちが入り混じった、変なテンションの夜だった。

学生時代の友人との飲みだったので、教科書の話だったりとか、勉学の話で盛り上がっていた時だった。自分がおつまみとして買っていた「パイの実」を食べて友人が一言。

「俺、パイの実を食べたのは始めてかもしれない」

これを聞いたときに、驚きと、奇妙な嬉しさがあった。割りと国民的なお菓子の1つを食したことがない人っているんだなという驚き。でも、それ以上に込み上げてきた感情は、不思議な幸福感だった。

ちょうどその会話の直前に、教科書に掲載されている詩のはなしをしていた。思わず出てきた言葉はこれだった。

「じゃあ、今日はパイの実記念日だ!」

言うまではもなく、元ネタは俵万智さんの『サラダ記念日』である。


「初めての体験」のシェアって嬉しい

これに似た感情を直近で感じた。
友人(公園で飲んだ友人とは別人)と、よく行くバーに一緒に行った。その友人はJazzバー以外の普通のバーは初体験だったらしい。

凄まじく緊張していたが(気持ちは非常にわかる)、最後は楽しくマスターとも話をして、満足して帰っていった。

この日も凄く幸福感に包まれて就寝した。もちろん、お気に入りのお店を気に入ってくれた、というのも大きいが、それ以上に、友達の「初めて」に立ち会えたというのが大きかったかもしれない。

未知の世界にドキドキし、その体験を楽しみ、自分に今までなかった新たな扉を開ける。
別に自分の体験じゃなくても、傍から見ているだけでも、凄く尊い光景というか、人に幸せを分け与えるパワーがあるなと。


どちらも大ニュースになるような大きなことではない。何気ない日常の一コマかもしれない(特に前者の体験は)。
でも、「初めての体験」っていうのは、凄く大きなパワーがあるなと。恐らく、この2日の体験は、ふとしたときに思い出し続ける日になるような気がする。

日付まではきっと思い出せないだろうが、この2日は自分にとってのそれこそ「記念日」になるんだろうなと。

記念日って、男の愚痴会話として「面倒くさい」とか言われることもあるけども、頑張って覚えていなくてもよい記念日なら、あっても良いと思う。
ふとしたときに、その日を思い返し、懐かしむ。そんな記念日なら、多ければ多い方がいい。

記念日って日常を彩る素敵な考え方な気がする。俵万智さんの詩が素敵なのも、そんな日常をベースにした詩だからではないだろうか。

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

トーストの焼きあがりよく我が部屋の空気ようよう夏になりゆく

ワイシャツをぱぱんと伸ばし干しおれば心ま白く陽に透けてゆく

俵万智『 サラダ記念日 』より抜粋 (p.46)

ちなみに、パイの実記念日は9月2日と制定しました。

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