“遺伝子の機能、性能を計算機で評価”!スパコンで有用酵素のスクリーニングをするシステム・開発担当、田村さんのお話。
「世界を変える酵素を、迎えにいこう。」
偶然を待つしかなかった酵素開発プロセスを変えた、digzyme独自のテクノロジー。
digzymeでは、様々なバックグラウンドを持った社員が、この独自のテクノロジーの根幹を支えるために働いています。
社員インタビューコンテンツ『digzyme Deep Dive』では、digzymeメンバー1人ひとりにスポットライトを当て、インタビュー形式でその想いを深掘りしていきます!
第1回目は、取締役CTOの中村 祐哉さん、第2回目はプリンシパルインベスティゲータの礒崎 達大さんに、第3回目はインフォマティクススペシャリストの鈴木 彦有さんにお話を伺いました。
第4回目となる今回は、インフォマティクススペシャリストの田村 康一さんにインタビュー!
前中後編とございますので、ぜひ最後までご覧ください。
(※記事中の組織名・役職等はすべて取材時のものです。)
ーー田村さん、よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
ーー早速ですが、普段のお仕事内容について教えてください。
入社から今に至るまで、スパコンで有用酵素のスクリーニングを行うシステムの開発に従事しています。
酵素は生物の遺伝子から作られるわけですが、この『酵素の遺伝子』が実は公共のデータベースにたくさん登録されていて、digzymeではこの公共のデータベースから遺伝子をスクリーニングしているので、そのシステムの開発ですね。
ーー『スクリーニング』について、具体的にどのようなことをしているか伺っても良いですか?
はい。DRYにおけるスクリーニングというのは、遺伝子がどういう機能を持っていて、それがどれくらいの性能なのかということを計算機のなかで評価することです。
昔からあるWETのスクリーニングの手法では、例えば土の中や温泉などから微生物を採取し、この微生物が持っている遺伝子を抽出します。
次に、この抽出した遺伝子をもとにした実験にて、
酵素を試験管の中で作り、その性質を調べるということをするんですけれど、全工程が人間の手作業なので、ものすごく時間がかかります。
ーー気が遠くなるような時間を要することになりそうです・・・
ですね。digzymeはこの部分を、公共のデータベースから計算機で探す、
という手法に丸々置き換えているので、スピードが速いのはもちろん
探せる範囲もマンパワーより桁違いに広いのが特徴です。
ーー教えていただきありがとうございます。田村さんはそのなかでも特に
酵素の立体構造情報を用いた解析部分をご担当されているんですよね?
そうです。データベースに登録されている遺伝子というのは、アミノ酸配列の『文字のデータ』です。
この『文字のデータ』の解析が一番上流にあるのですが、分子系統樹を用いた系統解析などを行いますので、そこは主に、分子生物学・分子進化学が専門の鈴木彦有さんがご担当です。
その後、選ばれてきたアミノ酸配列を、実際に酵素の三次元構造に落とし込んでの解析をします。
この三次元構造からわかることが結構あるんですけど、その部分を自分は担当しています。
ーー『文字のデータ』であるアミノ酸配列を、どのように立体構造にしているのでしょうか?
Google DeepMindが開発したAlphaFoldが非常に革新的なので使用しています。
ーーAlphaFold。先日ノーベル賞も受賞していましたね。(※2024年のノーベル化学賞。AlphaFoldの開発者であるデミス・ハサビスとジョン・ジャンパーが共同受賞した。)
はい。でも、自分がdigzymeに入社したときには、まだAlphaFoldを企業で使うことはできませんでした。
なので、入社直後は主にホモロジーモデリングという昔からある手法を使っていました。
これは、目的の酵素と似た酵素というのが配列の解析からある程度わかるので、似た酵素の構造から目的の酵素の構造を作るという方法です。
自分が入社したときはこれを使っていましたね。
ーーなるほど。先ほど『革新的』とおっしゃっていましたが、
AlphaFoldが導入されてからはお仕事上でもどんな進歩がありましたか?
とにかく精度が全然違います。自分の専門分野は『分子シミュレーション』といって分子について、計算機の中で物理シミュレーションを行い、どう動いているのかを解析してきたんですけれど、実際にこのシミュレーションを行ってみるとホモロジーモデリングで作った方の酵素はすぐに壊れてしまうんですね。
ーー壊れる?
はい。シミュレーション中、構造をムービーで眺めているのですが、
そうすると勝手に崩壊していくんです。
これは要するにモデルが悪いからなのですが、AlphaFoldのほうは結構しっかりとした構造をシミュレーションしていて、実際のモデルとして相当信頼できるものが計算終了後に吐き出されている。
というわけで、digzymeでも構造解析をするときはAlphaFoldが必須になっています。
ーーなるほど!わかりやすく説明して頂きありがとうございます。
只今digzyme Designed Libraryの構築中ですが、こちらの開発にあたっては、どのような側面で構造解析を進めていらっしゃいますか?
例えば各種酵素の耐熱性、有機溶媒耐性などのスコアの計算を物理シミュレーションを用いた解析で行っています。
それによって、より高機能な酵素のライブラリを製造することが可能になります。
※中編に続きます!