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緊急のレシピ 新型コロナ対策で見えてくるコンタクトセンターの役割

 4月5日と6日、LINEから届いた「新型コロナ対策のための全国調査」に回答した方は2400万人以上、対象8300万の30%近くにのぼりました。更に各自治体が「友達追加」によるLINE公式アカウント登録を行い、「パーソナルサポート」を行っています。

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(LINE画面より)

 次世代コンタクトセンター構築のヒントを「レシピ」という形で紹介している本シリーズですが、予定を変更して「新型コロナ対策で見えてくる早期のコンタクトセンター構築」に焦点を当ててみたいと思います。

 今回のように緊急でコンタクトポイントを設計する場合2つのことが重要です。
1) 世の中に行き渡っている既存のインフラを活用すること。
2) スピーディーに立ち上げる機動力と簡便な機能性を持っていること。

 LINEは既に1)の要件は満たしていたわけですが、今回の対応はまさに2)に素早く対応した結果と言えます。特に画面上の「リッチメニュー」を活かし、「症状が現れた方」⇒「発熱された方~こちらからご登録」など、ひとり一人の要望に合わせたガイダンスを早期に立ち上げています。

 これほどの緊急時ではないものの、従来のコンタクトセンター構築の常識は「1年以上かけて立ち上げる」というケースが多く、事業スピードにマッチしないという指摘がなされてきました。料理でいうなら「フルコースのフレンチ」や「和食の懐石料理」にように仕込みから精緻に作りこまれ、手間はかかるが完成度は高いものが良いとされてきました。一方、身近な食材を使い、調理の仕方はいたってシンプルながら短時間にできて美味しいというレシピ(クックパッドでしょうか?)が今、注目を浴びています。

 今回の新型コロナ対策で見えてくる、もう一つの視点は「一か所に多くの人が集まりコール業務を行う」というコールセンターという業態への警鐘でした。以前から在宅センターへの要望はあったのですが、なかなか普及しませんでした。一番の障壁は個人情報の漏洩に対する危惧感です。確かにセキュリティ技術に対する疑問があったのは事実ですが、よくよく話を詰めていくとその多くは解決可能であり、どちらかというと「何かあったら困る」といった責任論がその根底に横たわっていました。

 では次世代のコンタクトセンターはどのような形が望ましいのでしょうか?コロナ対策では「3つの密」を避けるという呼びかけがなされていますが、まさにこの3つを回避する分散型センターを、あまり時間をかけずに構築することがその答えになるでしょう。

1) スピーディーに立ち上げが可能で、シンプルでありながら機能性が高い
2) 人が密集しなくてもオペレーション可能な在宅型

この2つのポイントを満たす次世代コンタクトセンターはこんな姿ではないかと思います。

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 数々の課題はあるものの、このコンタクトセンターは4つの要素で成り立っています。
1) 素早く実装できるCloud PBX
  ⇒今回のコロナの相談センターのケースでも取り入れられました。
2) 早期に立ち上げが可能なCRM
  ⇒これはかなりの難題ですが、ナレッジ構築がキーになります。
3) テキスト・音声のBoT
  ⇒現在の自然言語処理におけるAIの限界を知りつつも、あるところまで
   は自動応答によって解決、もしくは要件の絞り込みを行い有人オペレ
   ーターへ引き継ぎます。今回のLINEの取り組みは、その規模の大きさ
   とともに次世代へと繋がっていくでしょう。
4) 在宅オペレーターによる人でなければ解決できない応対
  ⇒ここで大切なのは在宅オペレーターの専門性の高さです。このエリア
   は発注する企業のOBあるいは育休などで自宅にいる方に担っていただ
   きたい部分です。コンタクトセンターのオペレーター育成で最も苦労
   するのが専門知識の習得です。しかし、もともとその業務に精通した
   方ならハードルはぐっと下がります。また、製品やサービスへの想い
   も深いので大きな戦力となるでしょう。

 実用化にはまだまだ課題があります。オペレーターの研修はどうするのか?管理者は遠隔で業務が可能か?BoTはどこまで人の役割を果たせるのか?そして古くて新しいCRMと基幹システムとの連携の話。
 しかし今までできないと言われたPBXのクラウド化、音声のテキスト化などは当たり前のように運用フェーズに入っています。通信インフラの5Gにより双方向の研修など多くの課題が解決可能です。BoTを支えるAIも機械学習がベースとしても徐々に実用に耐えるようなものになっていきます。デイル・ドーテンの言葉「試してみることに、失敗はありません」ということではないでしょうか。(著書:仕事は楽しいかね?)

 今回は番外レシピでしたが、次回は多くの方の関心事、クラウドCRMの代表格Salesforce活用のレシピを2回にわたってお送りします。株式会社セールスフォース・ドットコムService Cloud第一営業部長 谷川 尚之さんが全体設計から個別の課題まで第一線のノウハウをお届けします。

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出水 啓一朗 (Keiichiro Demizu)
1974年信越放送入社。2003年WOWOW常務取締役、2006年スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(現スカパーJSAT)執行役員常務、2009年同社取締役執行役員専務兼マーケティング本部長を経て、2011年スカパー・カスタマーリレーションズ代表取締役社長に就任。2019年6月同社退任。

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