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医療の質を向上し、病院の管理業務時間の節約をサポート! “Regard” のシリーズB資金調達【7/11発表: 米国デジタルヘルスニュース】

非定期で投稿している米国デジタルヘルススタートアップの資金調達ニュースですが、7月に第二子が生まれたこともあり6月の前回投稿からだいぶ時間が経過してしまいました。。

前回は、AIx理学療法士によるデジタル理学療法 を提供する“Sword Health” のシリーズE資金調達についてご紹介しました。

※今回および過去の記事の全て、公開情報を基に作成しています。

今回ご紹介する米国スタートアップ は"Regard"です。同社は、AIを活用した臨床インサイトプラットフォームを開発・提供し、病院の電子カルテ(EHR)システムと統合されています。そこから得られる患者データを分析して診断をサポートし、また、クリニカルワークフローを効率化することができるソフトウェアを病院向けに提供している2017年設立の企業です。

同社サービスの利用により、診断の質の向上、医師のバーンアウトの防止、医療機関のコスト削減および売上拡大の両方が期待できます。こちらのサービスの提供は2021年から米国で開始されています。

患者の健康に関するデータは治療効果の改善に寄与することができると言われて久しいですが、World Economic Forumによると、現在医師が利用している患者データはわずか3%にすぎません。医師は患者データから有益な情報を得られると認識しているものの、医療記録のすべての詳細を確認する時間がないのが現状です。

Regardは、今回のシリーズB資金調達ラウンドで約$60Mを調達し、評価額が$350Mに達しました。

今回ラウンドは、フィンテックおよびヘルスケア分野への投資を専門とし、2014年の設立から85社以上のポートフォリオ企業に投資し、53億ドル以上の運用資産があるVC、Oak HC/FTがリードを務めています。

また、Cedars-Sinai Medical Centerという医療機関のCVCであるCedars-Sinai Health Venturesや、過去ラウンドからの継続投資となるTenOneTen、Calibrate Ventures、Techstarsも参加したそうです。

これまでの調達金額は約$80Mを超える金額になっています。


About "Regard"

:米国
創立年:2017年
資金調達ラウンド:シリーズB
主な投資家:Oak HC/FT, Cedars-Sinai Health Ventures etc…
総調達金額:約 $80M
サービス:病院向け診断支援およびクリニカルワークフローの改善
事業モデル:B2B2 - 当面は大規模な病院向けにサービスを提供。エンドユーザーは医師および院内の保険請求業務等に関与する病院スタッフ。

サービス概要

Regardは、AIを活用した臨床インサイトプラットフォームを開発・提供しており、患者データを分析し、診断を推奨、正確な記録を保証し、臨床ワークフローを効率化します。

特にEpicやCernerなどの主要なEHRシステムとの統合に重点を置き、病床数の多い病院との提携を通じて、クリニカルワークフローにおける標準的なツールとなることを目指しています。

患者の病歴、診断、治療内容、検査結果などの情報の記録をサポートする
【出典】同社ウェブサイト

同社サービスの仕組みを見てみましょう。

まず、同社のAI機能は前述したように電子カルテと連携しており、診療記録作成機能に組み込まるような形になっています。同社AIがすべてのデータを確認した後、診断名をシステム上で推奨をしてくれます。また、医師にとって負担の大きい診療記録の作成ですが、こちらを自動的に作成・更新してくれます。

これにより、診断の精度を向上させるといった医療の質の向上に貢献するだけではなく、診療記録作成といった入力業務を最小化することができ、患者さんに向き合う時間の増加に繋げることができます。

また、医師以外の院内スタッフが対応する、多くの時間を要する保険請求業務の自動支援も行ってくれるのですが、これにより保険会社からの保険請求の拒否や問い合わせの数を減らすことができます。

また、本来請求することができるが漏れてしまっている請求を同社サービスが指摘してくれることで、例えば年間の入院患者の退院数が25,000件ほどの病院ですと、$15M以上の売上増加が期待できるそうです。

結果、20%の医療スタッフの時間を削減することができ、また、医師の過労による離職を56%削減することができると、同社は謳っています。この臨床医のバーンアウトは、患者の安全性にかかわるイベントの発生率を2倍に増加させるとも言われているため、単に医師の労働時間の削減の支援だけではなく、患者さんへの治療の質、満足度、そして入院期間短縮といった良い影響を副次的に生んでくれる可能性がありそうです。

事業の現在地

同社の事業は、2023年に4.5倍の収益成長を達成し、2024年にも同様の成長が見込まれています。

また、2021年の製品ローンチ以来、300万件以上の診断を医療チームに提供し、提携先の病院に約$50M以上の追加収益をもたらしました。

2024年9月5日午後2時半ころ(PST)の同社サービスによる診断支援の総数(約370万件)
【出典】同社ウェブサイト

主な顧客には、Banner Health、Sentara Healthcare、Montefiore Medical Center、Cedars-Sinai Medical Centerが含まれています。2026年までに黒字化を見込んでいるそうです。

電子カルテメーカーをはじめとする同社の提携先の一部
【出典】同社ウェブサイト


最後に

同社は、AIを活用して医療の効率化と診断精度の向上を目指し、2021年の設立以来、急速に成長を続けています。複数の大手医療機関とのパートナーシップを結び、病院における収益拡大や診断の質向上に貢献しています。

類似のサービスは他にも多く見受けられますが、各社しのぎを削りながら市場を皆で拡大していくにつれて、医療現場の負担軽減と患者ケアの向上を推進していくことを期待したいですね。

おしまい。

※このブログ記事は、個人的な趣味で書いているものであり、あくまでも情報シェアのみを目的としています。

参考記事・リンク


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