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中室牧子・ 津川友介『原因と結果」の経済学―データから真実を見抜く思考法』 ダイヤモンド社 ,(2017)

「因果関係と相関関係」について,他人にきちんと説明することに不安があれば,是非読んでほしい本かな。

マーケティングの世界だと最近は「データドリブン」で判断を行うべしみたいな風潮が多い気がする。マーケティングで言われるデータドリブンと言うのは,消費者のWebでの行動や広告をクリックした数値や率,Webでの販売データや店舗での販売データ,登録されたユーザーのプロフィールデータなどを色々と分析して,そこから販売戦略を立てていきましょうみたいなお話。基本的にはデータをベースに経済合理性に基づいて様々な判断をしていくことになるので,それはそれなりに正しい判断にはなるであろうし,あまり失敗しそうにもない。失敗しても,データからの判断なので仕方がないと言い訳もできる。なので,とても良い判断手法の方に思えるのだが,そもそも判断の基準となっているデータが判断をするに値するものなのかと言えば,実はその保証はないのだ。

実はデータドリブンな考え方の落とし穴というのは,行動のメカニズムが十分に解明されているわけではないのに,取得可能なデータのみを用いて施策を検討しようとしている時があるという点につきるもちろん,その不備なところを過去の経験や勘,多様な視点やディスカッションを経ながら調整する事ができれば,その判断は尊重されるべきである。しかし,数値をそのまま受け入れてしまい,その数値の裏側にある多様な顧客のインサイトを想定する事なく,判断が進められることも少なくないだろう。

その,数値のみでは見えてこないポイントを補足し,自らの判断時に補正・修正をかけようとする視点の一つが,「因果関係と相関関係の正しい理解」なのだと思うよ。

数字からパターンをあぶり出すことは興味深い作業だが、ある一つの事柄が実際に別の事柄を引き起こしているわけではない。相関関係と因果関係がイコールでないことは当然にもかかわらず、多くの経営者が相関関係に基づいて決断を下すことに慣れてしまっているように思われる。
出所:クリステンセン「Jobs to Be Done:顧客のニーズを見極めよ」(HBR 2016年9月号より、DHBR 2020年4月号より)
https://www.dhbr.net/articles/-/6539

とクリステンセンがいうように,データのみににこだわって因果関係と相関関係をごちゃごちゃに考えてしまうと,進むべき道を見誤ってしまう可能性がある。

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