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「顧客ニーズに寄り添う」とはどう言うことなのか。〜「顧客ニーズ」は最初聞かなくて良い。

面接でいろんな方と話をしていると「顧客からのヒアリングをしながら顧客ニーズに応え、顧客に寄り添う仕事がしたいです」と話してくれる方はとても多いです。コンサルタントや広告エージェンシーの仕事は「顧客に寄り添い顧客のニーズに応える仕事」です、ってどこかで読んだのかもしれません。

でも、実は「顧客のニーズに応える」と言う視点に固執をしてしまうと、それは言われたことだけをやる作業ばかりになってしまうんですね。それは、コンサルタントの仕事ではありません。

これ、どういうことかというと「病院に行ったときに、お医者さんは患者の現状を事細かく聞いたり検査をしたりするけど、患者さんがどうしたいのかは聞かないよねぇ」という話とおなじです。
お医者さんは、診察の前に患者から「この薬をください」と言われても言われたとおりには出しません。

医者として病名や治療方法を判断をする根拠はやはり検査結果です。患者が何を言おうがどういう薬を欲しがっているのかは関係なくて、各種の検査結果を見ながら最新の症例を考察して病名を判断し、同時に様々な治療事例を踏まえながら治療方針を決めるのがプロフェッショナルです。そこに患者の要望は介在しません。

コンサルタントも全く同じで、クライアント(顧客)があれやりたいこれやりたいと言っても実はその通りにはしません。だいたい「はいはい、そうですか」と思いながら聞いているだけです。

私たちがクライアント(顧客)と仕事を始めるときには、まずクライアントの置かれた状況、例えば商品の売上推移やカテゴリーシェア、販売単価や販売ルート、競合の状況についてはヒアリングしつつ、マーケット環境を把握します。さらに3C分析、PEST分析、ポジショニング分析等様々なフレームワークやオープンデータなども使います。

その後、クライアントのミッション・ビジョン、長期の経営計画を踏まえて今はどんな目標を設定すべきかを考え、定めた目標を達成するために何を解決すべきか(目標達成の阻害要因はなにか?なにを改善させれば良いのか?どの数値をどこまで持ってくれば良いのか?)を検討して、施策方針を決めていくのがコンサルタントです。

ヒアリングをしていくなかでは、クライアントから「もっとブランドを強くしたい」「店頭販促に力を入れたい」「やっぱり、ECに力を入れる」「商品開発を進めてラインアップを充実させたい」「アイドルを使ったCMをやりたい」「ネット広告をやりたい」「SNSを使ってインフルエンサーマーケティングをやりたい」など、やりたいことやしなきゃいけないと思っていることのアイディアや要望が次々に出てきます。

ところが、最初のヒアリング段階でクライアントから出てくるアイディアや要望が、クライアントの本質的目標達成に必要かつ最も適した施策なのかどうかはなんとも言えません。そこが明確でないのに、クライアントが言っていることを「顧客ニーズ」として捉えて言われたことだけを実行していこうとすることは、顧客目標の達成に責任を追うコンサルタントとして不誠実であると言えます。さらにそれは単純にクライアントから言われたことやっているという単純な作業にすぎません。

クライアント(患者)に意思を確認するのは、調査データ(検査結果)から現在の症状と改善施策を提示したあとに、具体的な施策方針(治療方針)と予算を複数提示して、どのやり方をしていきますか?と判断を求める段階になってからであるといえるのです。

クライアントからはじめに「あーしたい、こーしたい」という施策アイディアが出てきたとしても、診察結果が出る前には慌てて取り組む必要はありません

ましてや、クライアントのやりたいことが本来の目標達成には全く意味が無いということもありえます。その時にはクライアントのニーズがどんなに高くても、どんなにクライアントがやりたい!といっても「その施策は今の目標達成には不要なので実施する必要はありません」と明確に提示することが大切なのです。

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