記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

歴史改変SF「宇宙へ」感想

ステイホームの三連休で読書が進む。

ハヤカワ文庫のSF「宇宙(そら)へ」上下巻を読了。アメリカの作家メアリ・ロビネット・コワルの小説で、ネビュラ賞、ヒューゴー賞、ローカス賞を受賞したそうなので、かなり評価が高いらしい。

歴史改変SFで、改変されたポイントは、1952年にワシントンD.C.近海に巨大隕石が落下したことにより温暖化による人類滅亡の危機に対応するべく宇宙計画が史実よりも速く進む世界であること。この世界を舞台に、宇宙飛行士を目指す女性の視点で物語が進む。

一般的にはSFは、現代か未来を舞台にしたものが多いはずだが、蒸気機関が主力だった時代を舞台にしたスチームパンクや、第2次世界大戦やその直後を舞台にした小説も多い。後者だとフィリップ・K・ディックの「高い城の男」なんかが有名かと。

最近だとピータ・トラアスの「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」シリーズとかとか。

SF以外でもこの時代を舞台にした小説はアメリカ人の好みらしく、この時期からケネディ大統領時代あたりの小説は割と多い。日本だと、1980年代みたいなものか?

コンピューターではなく計算者と計算尺で軌道計算を行う描写は面白い。2018年の映画「ドリーム」と1983年の映画「ライトスタッフ」のいいとこ取りみたいな小説。人類滅亡が迫っている世界を前向きな主人公と平易な文体で描いていて読みやすい。

ただ、全体的に内容が設定負けしている印象だ。

主人公の関心が有色人種や女性への差別撤回に偏りすぎて、状況の全体像がほとんど見えない。そのため、読んでいてフラストレーションが溜まる。

宇宙計画も序盤までしか進んでおらず、想像の2割程度までしか描かれていない。

先に発表されている短編によると、少なくとも人類の火星移住までは描かれるはずで、未訳の長編があと3作はあるシリーズらしい。全て邦訳されたら評価が変わるかもしれない。

翻訳物を続けて読んで慣れてきた。SFは久しぶりに読んだが、やっぱりいい。本屋で見て「そのうち読もう」と思っている小説がいくつもあるので、手に入る内に買っておこう。

次は、ミステリー「あの本は読まれているか」に挑戦。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?