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IoTで製造業をDXする人物「ファクトリー・サイエンティスト」になってみた

はじめに

digglueの加藤です。ブロックチェーンを軸にしたテクノロジーの活用により、主に製造業における業務変革コンサルティングを行っています。

この記事では、IoTで製造業をDXする人物「ファクトリー・サイエンティスト」になった経験をお伝えします。
ファクトリー・サイエンティストというのは、中小規模の製造業において「IoTデバイスによるエンジニアリング、センシング、データ解析、データ視覚化、データ活用の知識を身に付けて、データを軸に経営判断を素早くおこなうアシストをおこなう人材」のことで、「ファクトリーサイエンティスト協会」のもとで定期的に育成講座が開催されています。私は第2回目となる育成講座に参加しました。

▼ファクトリーサイエンティスト協会についてはこちら
https://www.factoryscientist.com/

ファクトリー・サイエンティストとの出会い

▼受講の経緯
ファクトリー・サイエンティスト育成講座の情報は、社員からシェアしてもらいました。
私は入社時から継続してIoTプロジェクトに関わっていたので、よりプロジェクトをリードできるように、より深くIoTを学びたいと思っていました。しかも、製造業をテクノロジーで変革していくdigglueにとって、現場の課題をどう解決できるかの実践知を得ることは重要。ということで受講しました。

▼なぜブロックチェーン企業のdigglueがIoTを?
ここでdigglueについて補足すると、我々はブロックチェーンをメインの道具としています。ブロックチェーンは、デジタル上のデータの透明性を高めることで、改ざんを限りなく難しくする技術です
ただ、ブロックチェーンの応用範囲を広げていくにつれて、ブロックチェーンだけでは実現できない構想も次々と浮かんできました。たとえば以下のようなケースです。

・真正性の担保がサービスの本質である場合(たとえば食品サプライチェーンの保証)、情報をアナログからデジタルに載せるときの改ざんやミスの検知はできないため、片手落ちになる恐れがある。 ※いわゆるオラクル問題
・ブロックチェーンに載せたいデータを人手で収集するのが困難、または多数の機器から収集したい場合(たとえば自動車の走行状態把握)、センサの利用によって離れた場所から自動でデータ収集できる仕組みが求められる。

こうしたブロックチェーンだけでは実現できない部分を、IoT技術でカバーできるのではないかと考えています。

講座で学んだことや考えたこと

▼講座の概要
ファクトリー・サイエンティスト育成講座は、全5回、約1ヶ月にわたるものでした。参加者は約50名で、今回はオンラインでの開催となりました。

内容は、
・IoTデバイスの開発
・Azureを用いたサーバ側システムの構築
・データの加工と視覚化

などです。

IoTシステムは一般的に、
1. サーバ(クラウド)
2. ネットワーク
3. デバイス
の3層構成であると理解されることが多いのですが、これらを一通り触りながらハンズオンでレクチャーしていただきました。

▼最終プレゼン
最終週には、自分の身の回りにある課題を解決してみようということで各々の参加者がプレゼンを行いました。
ここでは私のプレゼンをご紹介したいと思います。

私は、製造業でIoTとブロックチェーンを活かす取り組みを考えてみました。

●作ったもの
「温度管理の保証サービス」
この取り組みは、一般的にIoT活用で想像されるような、工場内や社内の改善とは一味違います。社外に向けて付加価値を生もうとする取り組みです。

●概要
1. 恒温空間で加工していることをIoTシステムにより保証します。
2. 温度管理保証書をブロックチェーンに記録します。
3. 信頼できる保証書に誰もがアクセスできるようになります。

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↓保証書では、正常時間や逸脱時間、逸脱のデータ一覧などを見ることができます。

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●どうしてこれを作ったか?
これからはITの発展や取引依存関係の緩和傾向により、得意先だけでなく、ECなどで新しい取引先とマッチングする機会が増えると思われます。
そうした背景の中で、特に精密さが要求されるものについて、恒温空間で加工していることを社外に保証できれば付加価値が生まれると考えました。恒温空間で加工していることは、加工精度を保証する一つの大きな基準になるからです。

もちろん、現在も温度管理はしているので品質は高く保たれています。しかしどれほど好成績でも、温度逸脱の見落としや隠蔽がされていないかなど、その成績を外部の人が信じるかは企業の信用にかかっています。
そのため、企業間の信用形成(特に新しい取引先に対して)にハードルがあると考えています。もともと信用があるから大丈夫ということではなく、正しいことが正しく記録されていることを示すのは、信用形成に必要なプロセスではないでしょうか

この問題に対する解決策の一案が、IoTにより温度を取得し、成績をブロックチェーンに記録することです。
IoTで取得されたデータは人の見落としがない点で信頼できるデータであり、改ざんがされないことをブロックチェーンでさらに担保することで、信用形成の問題はクリアできます。

●今後の構想
この取り組みを発展させるとすれば、3つの方法を考えています。

1. 温度管理に限らず、保証されることで付加価値の生まれる情報を見極めたい
例)
・半導体の製造環境管理(ホコリなど)
・航空機部品の検査時条件(温湿度、照度など)
・製品輸送時の位置情報 など

2. サプライチェーン全体での付加価値向上を目指したい
部品の保証書を作れば、その部品のみならず、組み立てた製品の品質保証にもつながります。
サプライチェーン全体でこのシステムを導入すれば、一つの企業だけでなく全体にとって大きな付加価値が生まれます。そのため、多くの企業を巻き込みながら仕組みを作っていくことができればいいなと考えています。

3. IoTシステムからブロックチェーンシステムへシームレスに接続したい
Azureのさまざまなサービスを組み合わせることでIoTとブロックチェーンを接続することが課題として残りました。取り組んでいる人が非常に少なく未知の領域ですが、やれることがあればやっていきたいと思います。

こうした保証サービスの類がどこまで需要があるかわかりませんが、データの価値を社外に向けて発揮していくというアイデアは悪くないと思っています。
今まで目を向けていなかっただけで、データはそこにある。それを収集・活用することで新たな価値が創出できるとすれば、おもしろいと思います。

まとめ

▼講座の感想
今までIoTを知識として理解はしていたものの、実際にデバイスやクラウドを触ったり、データを加工したりすることはありませんでした。それを本講座では、デバイスもクラウドも触り、データを自分の目で確かめ、自分の手で活用していけたのは貴重な経験です。
また、受講生同士で各自の知見やつまずいたところを共有し合う文化があり、私も助けられてきました。自分ひとりで勉強するよりはるかに効率がよく、学習のスピードを加速させてくれるような講座でした。

▼今後の抱負「シナリオを語り、実行できる人間になりたい」
製造業でのIoTを活用した業務変革には、いくつかのシナリオがあります。
1. 稼働状況のリアルタイム監視→異常時アラート
2. 稼働状況の見える化→生産ライン改善
3. 不良品の要因分析→不良率低減
4. 設備の故障予測→予兆保全
などなど

私は、現場の課題をさまざまな角度から眺めた上で最も効果的なシナリオを提言し、実行まで牽引できる人物になりたいと思います。

またブロックチェーンを合わせて使うことで、社内・工場内のカイゼンにとどまらず、社外に向けてデータの価値を発揮していくことにdigglueで取り組んでいます。

この記事を読んでおもしろそうと感じた方がいらっしゃれば、ぜひ個人的にでもお気軽に声をかけてください。
twitter @tigerr_kato

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