食物アレルギーの傾向と食品表示

こんにちは。管理栄養士のTany.(タニィ)です。
食と健康に関する、小難しい国の基準や法令をわかりやすく伝えています。
今回は食物アレルギーの実態と食品表示について書きたいと思います。

食物アレルギーの今

食物アレルギーの実態把握と研究は日々されており、約3年に1回、
「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」が出ています。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/pdf/food_index_8_190531_0002.pdf
消費者庁/平成30年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書

それによると食物アレルギーを持っている人の年齢は、0歳児が最も多く(31.5%)、続いて1歳児(18.0%)、2歳児(10.1%)となり2歳までで59.7%を占めます。さらに6歳までに80.5%、18歳までに95.5%を占めます。

原因食物として多いのは図1のグラフの通り、鶏卵、牛乳、小麦の順で、この上位3つで67.2%にもなります。
最近のトレンドとしては4位の木の実類でのアレルギー発症が増えてきているということです(落花生はこれとは別枠)
木の実類の中ではクルミが62.9%、カシューナッツが20.6%、その他アーモンド、マカダミアナッツ、カカオ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、ココナッツ、ペカンナッツ、くりなどで報告があがっているようです。
6位の果物ではキウイが最も多く、バナナ、モモ、リンゴなど、7位の魚卵類ではイクラ、タラコでした。
子どもの胃液の分泌が成人と同じようになるのは2歳ごろ、栄養を吸収する小腸の長さが成人と同じ長さになるのが4歳前後と言われています。離乳の完了期は12~18か月と言われていますが、離乳が完了したからといって成人と全く同じものを与えるのは危険かなと個人的には思います。
ナッツ類や魚卵は大人が食べているものを横で見ていた子どもが欲しがったので与えた、というシチュエーションが目に浮かびますが、一度アレルギー反応を起こしてつらい経験をすると、その食べ物に対する恐怖心につながったりしますので、周りの大人は気を付けたいところです。

図1 アレルギーの原因食物(アレルゲン)

画像1

食物アレルギーのことを少し

では簡単に食物アレルギーのことを説明します。
食物アレルギーとは、食べ物を異物と勘違いした身体が、排除しようと免疫反応が過敏に働く現象をいいます。
具体的な症状としては、じんましんや湿疹などの皮膚症状から、嘔吐や腹痛、下痢などの消化器症状、全身性の症状として血圧低下や意識障害まで幅広くあり、場合によっては危険な状態になることがあります。
食物アレルギーが起こる理由はすべてが明らかになっているわけではないので今後の研究が期待されるところです。もともと身体は自分以外の物質が身体の中に入ってくると、免疫反応によって排除する働きをします。身体が食べ物を異物として認識しなくなるのは、母親の摂取した食べ物が腸で消化・吸収されて母乳に移行し、それを子どもが飲んで少しずつ体内に取り入れることによって、ミルク以外の食べ物やアレルギーの原因となり得る物質等に慣れ、離乳期に直接食べた時には異物と認識しなくなると現在は考えられているようです。
その考え方の通りに食べ物の耐性を獲得していくとすると、母親は妊娠前・妊娠中だけでなく授乳している間も食べ物を選んで食べる(偏らない)ということと、できるだけ母乳栄養で育て子どもに耐性を身につけてもらうことが重要ということになります。

(参考資料)厚生労働省/食物アレルギーとは
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-08.pdf

アレルギーの原因食品の表示

次に、すでに食物アレルギーを持っている場合に、どのようにして食べられる食品かどうかを見分けるかということについて書いていきます。卵や小麦粉など、見た目でわかるものを購入する場合はすぐに見分けがつきますが、加工食品のように入っているかどうかが一目でわからないものが多く販売されています。
食物アレルギーを持つ人が増えてきたことを踏まえて、よりわかりやすい表示にするために表示の仕方を検討し、食品表示方法を変更しています。

これまでに食物アレルギーを引き起こすことがわかっている食品(アレルゲン)の内、発症人数や重篤度などを考えて表示する必要性の高い食品を「特定原材料」として決めて、以下の7品目が含まれている場合は以前と変わらず表示することが義務づけられています。
えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)
また、「特定原材料」に比べると発症する人や重篤度が低いものの可能な限り表示するものとして定められている21品目は以下の通りです。
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフ ルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつ たけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

それらが実際に図2の通りに表示されています。
原則は、
①添加物以外の原材料の場合は、「原材料名(○○を含む)」と記載
②添加物の場合は、「物質名(○○由来)」と記載

です。
これまでは図2の表示例2の赤字で書いてあるように特定原材料を一括表示していることも多かったのですが、利便性を考えて原則は個別表示する、ということになりました。例えば母親の買った幕の内弁当の中から小麦アレルギーの子どもに少しおかずを分けたいと思ったとします。そうすると一括表示だと、どのおかずに小麦が入っているのか入っていないのかわからず、結局分けられません。しかし表示例1のように表示されているとポテトサラダには小麦が入っていないことがわかります。表示例2の幕の内弁当に入っているポテトサラダが表示例1のように書かれていると、母親はポテトサラダを子どもに食べさせても大丈夫、と判断することができます。
ただし、幕の内弁当のように品数が多いとどうしても同じ特定原材料が何度も出てくることになり、原材料名欄を大きくしないといけないなど負担が大きいこともありますので、最終的にどのように表示するかは製造業者に任されています。
2回目以降に同じ特定原材料を使用している場合は図3の表示例の通り省略できることになっていますので注意も必要です。

図2 アレルゲンを含む食品の表示

画像2

内閣府/第7回 加工食品の表示に関する調査会 資料より

図3

画像3

子どもが見分けられないかもしれない表示は廃止

マヨネーズが入っている商品は、卵、乳、小麦のどのアレルギーの人が避けることが必要でしょうか?
マヨネーズが何で作られているかを知っていればすぐにわかると思いますが、正解は卵です。
このように、今までは一般的に特定原材料を使っていることが予測できる食品として、「マヨネーズ」と表示することによって「卵を含む」の表示をしなくてよいとされてきましたが、特に子どもだけでコンビニ等で購入する場合に、原材料名に特定原材料名が書かれていないため誤って食べてアレルギー反応が出てしまった事例が何件かあり、表示することになりました。
そこで原材料名に特定原材料名が含まれたり、簡単に想像できたりするもの以外は(  )書きで表示することになりました。
現在は米粉を使ったパンやうどんなどが販売されていることを受けて、小麦粉を使ったパンやうどんにも「小麦を含む」と表示されるようになっています。

図4の個別表示の例でいうと、②の緑字の食品が③になると、大豆、卵の表示が登場しています。
マヨネーズには卵が含まれ、醤油には大豆ももちろん含まれますよ、ということを示しています。
省略したりしなかったりのところもあるためややこしいように見えますが、アレルギーを持っている人からすると大切な情報です。

図4 個別表示の例

画像4

以上、参考になれば嬉しいです。

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≪参考資料≫

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200415_01.pdf
消費者庁/食品表示法

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_201009_1.pdf
消費者庁/食品表示基準

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/pdf/food_index_8_190531_0002.pdf
消費者庁/平成30年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-08.pdf
厚生労働省/食物アレルギーとは?

https://www.cao.go.jp/consumer/history/03/kabusoshiki/syokuhinhyouji/kakou/007/shiryou/index.html
内閣府/第7回 加工食品の表示に関する調査会 資料 食品表示基準におけるアレルゲンを含む食品の表示について

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