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シネマ飛龍革命『マッシブ・タレント』

何事においても品行方正が求められる昨今、映画の中だろうが外だろうが破天荒な生き様で我々を魅了してきた俳優ニコラス・ケイジ。
一時期は巷から典型的お騒がせセレブとして扱われ、ファンとしては玉音放送を座して聞くような状況が続いていた。
確かにカタギとしてはどうかと思ったが、人に夢を与える姿勢としては間違ってはいなかった!決して!
それはそれとして、もはや生き様が映画そのものみたいな彼が、ズバリ本人を演じる映画が公開された!!
それが『マッシブ・タレント』だ!

思わず真似したくなる挨拶。


周りから揶揄されながらも、己の俳優人生を全力で送ってきたニコラス・ケイジ(本人)。
今日も前のめりにプロデューサー相手に演技を披露するものの、カロリーの高さが災いし欲しい役を逃がしてしまう。
更にダメ押しのように自分の娘も絶賛反抗期というのもあり、親子の関係性にも不協和音が生じていた。
仕事もプライベートもイマイチなケイジであったが、間の悪いことに娘の誕生日で深酒した結果、即興の演奏ライブを披露!
演技同様、その熱唱によって娘を含めて周りをドン引きさせてしまうのであった。
結果、いよいよヤケクソになったケイジは俳優引退をブチ上げてしまう。
おかげさまで完全にやさぐれ・ケイジモードへ突入。

やさぐれに比例してガウンも派手だぜ!

そんな彼の状況を露知らず、ある日マネージャーがドサ周りの営業仕事をゲットしてきた。
どうやら相手はどっかの億万長者らしい。

俺は役者だ!
ディナーショーなんてやるわけないでしょうが!

そんな気持ちがあるものの、なにせ切実な財布事情もある。
この仕事を渋々引き受けるケイジなのであった。

営業先は風光明媚なスペインの小島。
そこで大富豪ハビ(ペドロ・パスカル)がケイジを出迎えた。
あまりのガチ勢っぷりに若干引いていたケイジであったが、ハビのファンとしての情熱は本物であった。
気が付けば見失っていた役者としての自信をケイジは取り戻していく。
いつまでも続くかに思えたオジサン二人のキラキラdaysであったが、ある日ケイジが何者かにハイエース(拉致)されてしまう事態が発生!!
何事かと思うケイジに彼らはCIAの局員の身分を明かし、ハビの正体が犯罪組織のドンである事実を伝える。
ハビがただのニコラス・ケイジガチ勢と思っていたので、思わず耳を疑うケイジ。
だがダメ押しのようなCIAの依頼に、彼は更に耳を疑ってしまう。
曰く、ハビの動向を探るスパイになれ、と。

いや…俺、俳優だよ!?

命の危機すらも招きかねない状況なのもあり、丁重に断りたいケイジであったが、かつては演技でオスカーを見事ゲットした実績がある。
何より自他ともに認める、ハリウッドきっての演技の鬼だ。
なんやかんや、これを断っては名折れだ!といわんばかりに潜入任務を引き受けるケイジなのであった。
果たして、本当にハビは犯罪組織の首領なのか?
そしてケイジとハビの友情の行方は、どうなるのか?
今、ニコラス・ケイジの一世一代の芝居が幕を開けるのであった。

迷子のような瞳のケイジ



ある意味、ニコラス・ケイジへのラブレターとでもいうべき本作。
彼への憧れと尊敬の眼差しをビシバシと感じられる作品に仕上がっている。
そして、一度でもニコラス・ケイジにお世話になった人にはハビ扮するペドロ・パスカルが他人には思えないだろう。
億万長者にして犯罪組織のドンと聞くと、かなりイカつめのキャラをイメージしちゃうが、本作では子供のように目をキラキラさせる推し活っぷりを披露!
おっさんなのに実にかわいい演技は必見だ。
ある意味で本作のヒロインともいえる。
ファンと映画スターという一方通行な関係性が、いつしか生まれた友情によって互いに自らの生き様を見直すキッカケになるのも実にグッとくる。
これはこれで我らの道(this is theway)と言えるだろう。

どっちもかわいい。


公式では『ニコラス・ケイジ完全復活!』を謳っているが、あえて言わせてほしい。

バカ野郎!
ずっと現役だよ!!

あとニコケイじゃねえよ!

ニコラス・ケイジな!!

心の中のケイジが叫ぶ図


…と、公式のコピーを目にしたとき思わず居酒屋で小一時間説教したくなったのが正直なところだ。
劇中のペドロ・パスカルなら、そうするだろう。

確かにニコラス・ケイジがビッグバジェットな映画で主役を張る機会が少なくなったかもしれんが、思いつく限りでも『フローズングラウンド』『グランドジョー』『バッドルーテナント』『ドラッグチェイサー』『マンディ~地獄のロードウォリアー~』『PIG』など、DVDスルー作品ながら確かな演技を披露していた。
どこか拗らせた男が人生を見つめなおす説得力と哀愁。
この演技は、今までの作品で培ってきたからこそできた業であろう。
規模の大小問わず、今までのフィルモグラフィが決して無駄ではなかったというのが伺える。
確かに国家予算規模の借金返済の為もあり、予算が低い映画に出演していた側面はあったにせよ、本人が「どんな規模の作品だろうが全力で演技してきた」と語っていた言葉は、今まで追っていた身としては真実に思える。

本作と同じくらいの時期に公開された『シン・仮面ライダー』にて『変わらないモノ、変わるモノ、そして変えたくないモノ』というキャッチコピーが使われていたが、奇しくも本作も『変わらないケイジ、変わるケイジ、そして変えたくないケイジ』の様相を呈している。
ともあれ、『ニコラス・ケイジも頑張っているのだから、自分も頑張ろう。』と観る者によっては勇気を与えてくれる作品だ。
彼を知る人も知らない人も、『ニコラス・ケイジ』という俳優が持つ凄みを是非劇場で感じて欲しい。

フェイス/オフのファンは必見‼︎


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