シネマ飛龍革命『仮面ライダーBLACK SUN』
君は見たか!?
愛が真っ赤に燃えるのを!?
ああ!燃えていたさ!
色んな意味でな‼︎
…というわけで、Amazonプライムにて『仮面ライダーBLACK SUN』が配信された。
あの仮面ライダーBLACKをリブートと聞いて、直撃世代の俺のキングストーンが久しぶりに光り輝いたのは言うまでもない。
ここ最近邦画でブイブイ言わせている白石和彌監督がリブートした本作。
邦画で汎用性の高い俳優=西島秀俊、白石作品の常連=中村倫也のダブル主演という盤石の布陣で製作!
映画ファンも特撮ファンも、この滅多にない製作体制に耳を疑ったことだろう。
ぶっちゃけ期待と不安があったものの、信じる奴はジャスティス!!と俺も配信即視聴したのだった。
結果、ジャスティスはあった。
あったけども、俺は仮面ライダーBLACKのエンディング『Long Long ago,20th Century 』を唄いながら町内を練り歩いたといえば、俺の感想が伝わるだろうか?
うん!伝わらねーな!
例えていうなら、昔なじみの中華そば屋が新装開店すると聞いて暖簾をくぐったら、クセ強めの豚骨ラーメンが出てきたとでもいおうか…
とはいえ、スープや麺は全然違うけど、メンマ・チャーシュー・なると、海苔は、あの頃の味!みたいな作品に仕上がっている。
全然説明になってない気がするが、そういうことだ!!
映画ファンこそ必見!と公式は謳っているが、映画ファンからしたら、海外で買った謎のトーテムポールを土産に貰う位、複雑な気持ちになるのではなかろうか…
俺は「ワハハ!何で買ったんだよ!」とありがたく頂いて家の玄関に飾る派なのだが、それでも映画やBLACKに真面目な人ほど許さん!となるのも理解できないわけではない。
本作では現実を想起させる政治や差別問題もトッピング!
政治的メッセージ性が露骨すぎるのだが、露骨すぎて全面的に受け入れるのがキツい人も中にいるだろう。
なんというかテキーラのショットをライムやチェイサーなしで延々飲み続ける感覚に近い。
言わんとしているのは正しいだろうし、今までにないものを作ろうとしている気合は凄い。
いわばバクチを打とうとする精神とでも言おうか…
そこは認めるが正直BLACKをゲバ棒にされるのは複雑であった。
何せ、光太郎周辺のキャラの正義の押し売り感が凄い。
とはいえ、面白くなればOK!と俺も飲み下していた。
だが画面の向こうはシリアス!見てるこっちは笑う!という想定外の演出を連発!
怪人ウィダーインゼリー、忠実に蟹と化したお父さん、怪人サークルでの内ゲバ、大仁田厚ばりに陳情する着ぐるみ状態のビルゲニア、欠損したパーツは一旦持ち帰る、サタンサーベルからのサタンドス、酔拳2の吊るされたジャッキーオマージュもあったりと、もう笑っていいのか真面目になればいいのか感情が迷子になってしまうのだった。
シリアスと特撮の温度差が、本作に絶妙なグルーヴを生んでいる。
これを欠点と捉えるか、良い点と捉えるかは人によって分かれると思う。
そして毎回ダメ押しのように流れるテーマ曲…あえてブラサン・テーマと呼ばせて頂くが、気が付けばコレが流れると反射的に笑ってしまう怪人に改造されてしまうだろう。
わりばしが上手く割れなかった、カップ焼きそばの湯切りを失敗して流しにブチこんだ、コンビニの肉まんが蒸してる最中で購入できない…そんな日常の瞬間に頭の中でテレレレ〜♪と流したくなる。
オリジナルのテーマ曲では「時を駆けろ 空を駆けろ この惑星(ほし)の為~」と高らかに歌っていたが、本作で歌うとするなら「この日本(くに)の為~」とオリジナルよりスケールダウンしているのが否めない。
とはいえ、素っ頓狂な演出ばかりではない。
無課金状態のバッタ男から始まり、徐々にストレスを課金されて真のBLACKに近づいていく模写は、旧作ファンにはグッとくる。
待ちに待った
「許・さ・ん!」
からの変身、流血上等のアグレッシブな残虐ファイト、胸のマークが刻まれる瞬間、最終話開始1秒のアレ、いよいよ繰り出すライダーキックとパンチは、「これまでの展開からやるんだ!それ!!」と驚きを与えてくれるだろう。
このように、ところどころエモい模写を挟んでくるのがニクい。
とはいえ、それは旧作のファン(俺)だからこそ喜ぶ演出だ。
初見の人は呆気にとられるのでは?と勝手に心配になってしまった。
R18ということで、奇しくもてつをが出演していた渡る世間は鬼ばかり・人が死ぬバージョンな展開も盛り込んでいる本作。
ブラックサンとシャドームーンがシバきあう一方、関わりのあった周りの人間・怪人が次々と死んでいく。
この辺も大人向けライダーという設定に則った展開なのかもしれんが、せめて近所のガキンチョは救ってやれよ!光太郎でも信彦でも!!!という気持ちになってしまった。
光太郎!ディケイドに出演していたお前は身を挺してガキを守ってたぞ!
見習えよ!
信彦!RXのお前はガキを救うために薬王院ばりに火渡りしてたぞ!
見習えよ!
他人の気持ちよりも、自分のお気持ち表明を最優先するので「お前ら二人ともベルトとキングストーンをよこせ!もう俺やるから!世紀王!」となったのであった。
おかげさまで光太郎も信彦も修羅場への遅刻が繰り返すおかげで、悲劇に拍車が止まらない。
敵が味方になって、味方が敵になって…と人間関係がめぐるましく二転三転!
もう人間関係・怪人関係双方が、食い散らかした正月のスキヤキ鍋みたいな様相を呈していく。
そして若干ネタバレにはなるが、闘いへの希望が持てるエンディングのような演出になっているが、個人的にラストはゴリゴリのバッドエンドに見えた。
前より状況が余計悪化しちゃってるじゃねえか!おい!
という…
何回でも言うが、
子供を戦わせちゃダメだろ!!と。
ここは涙を飲んで『BLACK SUN RX』の製作を待ちたいところである。
かつて『劇場版仮面ライダーBLACK恐怖!悪魔峠の怪人館』という30分弱の作品で夕張市の危機を救ったオリジナル版に思いをはせると、恐らく本作の危機を
てつをなら1時間30分で終わらせていただろう。
やはり「てつをで一本観たかった…」という気持ちが無かったと言ったら嘘になる。
だが、改めて旧作の良さを再発見させてくれたのは、ありがたい。
今の俺にはまだ、この作品との距離感の取り方は非常に難しい。
それこそ劇中のキングストーンのように。
とりあえず俺も何かしらの答えを見つけていきたい。
50年後までに。
以前ビーパワーで書いたBLACKとRXの記事はこちらから↓
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