【連載小説】新説 桃太郎物語〜第六章 (毎週月曜日更新)
【第六章 “覚悟”の巻】
桃太郎一行はその後、二ヶ月という長い間養生し、英気を養いました。
全員が回復すると、桃太郎は皆に向かって語り始めました。
『…みんな…。とりあえず無事でよかった…。まずは傷が癒えて、またこうして旅ができることは喜ばしいことだ…。…ただ…今のこの状況は、決して楽観視できる状態ではないと思う…。正直あの…青鬼の強大な力は…今の僕たちにとっては、どう転んでも勝てる見込みは、万に一つもないことは…事実だと思う…。』
『…正直…オイラもそう思うぜ…。多分今まで戦ってきた鬼は、子分みたいなもんなんだろう…。オイラの仇の黄鬼も、遠くでしか見てないが、同じくらいの殺気を感じたしな…。』
『…私も一瞬のことで何もわからなかったけど…。…緑鬼も…いざ戦いになって、本気を出したらあんなもんではないだろうし…。』
『…くっ…。』
三人とも自信をなくし、意気消沈しています。
『桃太郎っ?!?オイラ悔しいぜっ?!?…このままじゃ…、このままじゃ鬼退治なんか夢のまた夢…、子供一人も助けられやしねえっ?!??』
猿は膝を叩きながら言うのでした。
それを聞いた桃太郎は、決意を込めた眼で三人にこう言うのでした。
『みんな…。僕ももちろん悔しいし、こんな絶望感は初めてだ…。でもこのままじゃあ鬼に対抗することは絶対に無理だ…。…そこでみんなに提案がある…。』
三人は桃太郎の次の言葉を静かに待ちました。
『ここは一旦鬼退治の旅を中断して、それぞれが実力を上げるために、修行の旅に出るのはどうだろう??』
桃太郎は続けます。
『今までの旅の途中で、世界には色々な特性を持ったすごい人達がたくさんいるってことを聞いてきた…。以前訪れた町で、遥か東の島に“伝説の剣豪”が、今もひっそりと暮らしていると聞いたっ…。…僕はっ…僕はその剣豪に会って手ほどきを受けたいんだっ!!』
その言葉を聞いた猿がいいました。
『オイラもこんなん絶対に嫌だっ!!!オイラも決めたっ!!遥か東南の人里離れた山奥に“忍者の郷”があると噂されてる…。本当にあるかは雲を掴むような話だが、このままおめおめと手を拱いて、鬼の好きなようにさせるなんて絶対に嫌だっ!!』
雉も続けます。
『…私、呪いをかけられてから…、生粋の半身半動の猿や犬に比べて、鳥の能力を全然いかせてないんじゃないかとずっと思っていたんだっ…。私も遥か南の森林にある“半人半鳥”の村に行って、一から勉強してみたいっ!!!』
『……、…このままじゃ子イヌの無念は……。…北の渓谷沿いで噂の“孤高の狼”…。…絶対に強くなるっ!』
『…みっ、みんな…?!?』
桃太郎は猿、犬、雉を交互に見遣り、精気を取り戻した目を見据え、元気に言うのでした。
『よしっ!!それじゃあ少し寂しくはなるけど一旦解散だっ!!!一年後の今日っ、鬼ヶ島に一番近い北東の港町に集合だっ!!みんなっ!!!今は状況が悪くとも“覚悟”を持って、絶対に強くなって戻ってこようっ!!!!』
『よっしゃーーーっ!?!?』
『もちろんっ?!?!』
『…ふっ…。』
かくして四人は、それぞれの成長を誓い、それぞれの場所を目指して、旅立っていくのでした。
心の真ん中に…
それぞれがそれぞれの…
“覚悟”
という名の“信念”を持って…。