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「働いてみたいですか...?」-元映画館スタッフの実話と本音-

映画好きの誰もが一度は「映画館で働いてみたい!映画好きだから自分にとって天職だと思う!」って思ったりツイートしたりしますよね?俺もそうだったし、実際に映画館のスタッフとして働いたことあったんですよ。
そこで今回は「映画館で働いてみたい!」って人の参考になるように、映画館のスタッフとして働いてて良かった所と悪かった所を、実際あった出来事を含めて包み隠さず書きます。


良い所① いつでも無料で映画見放題


映画館で働くにあたって、これがやっぱり最大のメリットだと思う。実際は映画館によってちょっと変わったりもするけど(料金○割引とか一律O○円とか)基本無料で観れる。

俺が働いてた映画館では社員専用の手作りの無料鑑賞券みたいなのに観たい映画と時間帯を書いて窓口に提出すれば3D作品とかでも無料で観れた。
(ただし座席を取るのに関してはお客様優先だったから、社員が席を選べるのは上映時間の10分前からっていうルールがあった)



これ、文章で読むより実際このサービス使った時のほうがよりヤバさを実感できて、手作り無料鑑賞券の紙に観たい作品ひたすら書きまくって窓口に提出したら、その気になれば朝から晩まで一日ずっと映画観まくれるんですよね。さらにもっと言えば自分のシフトが午後からの時とかは、午前中に映画観てから勤務ってこともできるし、夕方まででシフト終わるよ~って時には勤務時間終わって映画観て帰るってことも出来るんですよ。これめちゃめちゃ凄くないですか?

だから俺は働き始めて1か月経たずにえげつない数の作品を無料で観たし、途中から「映画をタダで観に行くついでにスタッフとして働いて尚且つ給料貰える仕事」って認識になって頭バグって何しに映画館行ってるか分からなくなるぐらい映画館通ってた。しかもたまに「普段頑張ってるから~」って感じでちょっとしたボーナスとかでマジの無料鑑賞券を何枚かくれたりする時があったんですよね。でも貰ったところで社員用の鑑賞券が常備されてるから使う機会ほぼ無くてずっと貯まっていくんですよ。その結果10枚以上ある無料鑑賞券を眺めて「こんなにあっても絶対使わんだろ」って使い道分からなくて頭抱えた。


余談だけど実際このサービス使わなくても勤務中に普通に映画は観れるんですよ。画面チェックや音響チェックとかで作品の冒頭数秒ぐらいなら観れるし、上映終わって清掃準備の時なんかは劇場内入ってエンドロール終わるの待ってるし、深夜のレイトショーとかはほぼ人の出入り無いから劇場内の入り口付近で映画ずっと観てた。上映されてる作品なら実質全部観れるんですよね。

更に余談だけど売店にパンフレットってあるじゃないですか。俺あれレイトショーの人いない時に在庫の棚から出してこっそり読んだりとかもしてました。実際やろうと思えばそういうことも出来た。(特典貰ったりとかは無理。無理だけど、ドラえもん映画の特典のオモチャとかプリキュア映画の特典のライトとか子供達は場内にバンバン落としていくから、清掃の時に余裕で拾ったり出来た。)


人が見てる所では100%全力出して、見てないところでは100%全力で手を抜く、これを働く上で何気に一番大事にしてます。要は良い感じに狡かったんですよね。




良い点② 映画好きの知人が増える


これ割と衝撃だったんですけど、映画館スタッフって映画好きの人達でほぼ集まってて、まあ中には「たまたま採用されただけ」って感じで働いてる人もいたけど、それでもシフト終わってしっかり映画観て帰ってたりしてて、マジで皆そんなに映画好きなの?ってぐらい皆映画観てた。だって初対面の先輩スタッフとの会話の一言目「好きな映画なに?」だったもん。先輩に限らず、バイトの高校生とか大学生とか年離れてるおっさんとかおばさんとかも初対面の相手との会話は初手「映画好きですか?」みたいな会話がテンプレ化してて、そっから「好きな映画~」とか「好きな俳優~」とか「今あってる映画~」に話題が移行して誰と会話しても話が止まらなくなるムーブが確立されてくるんですよね。俺は途中から飽きてきて映画の話あんまりしなくなりました。

映画館で働きたいって人の中に「映画好きの友達できたらいいな」って思ってる人いると思います。
安心してください、嫌でも増えに増えまくりますよ。




その③ 舞台挨拶


これは正直場所によるんだけど、都市部のデカい映画館とかでは映画の舞台挨拶の手伝いをすることがあって、その時に舞台挨拶に来る監督さんや俳優の方々と実際に会ったり出来るのも中々凄い特権だと思った。俺も一回だけ舞台挨拶の手伝いした時に俳優さんやお笑い芸人の方と挨拶程度はした。その時にお会いした俳優のFさんって方がもうビックリするぐらい腰が低くてあまりにも親切丁寧な方でめちゃめちゃ感動したことを今でも覚えてる。


好きな俳優さんや有名人に会える、そんな普段じゃ絶対出来ないような体験が出来るのも映画館スタッフの良さだと思います。

(個撮とか写真関係はNGだけど、スタッフ全員との記念撮影とかなら稀にやってたはず。俺が手伝いした時は記念撮影無かったけど。ここら辺はちょっと曖昧なので自信ないですごめんなさい。あとSNSに舞台挨拶関係の情報リークとかは一発クビだから絶対やっちゃダメ!)



...こんな感じで、映画館で働いてて良かったことを挙げてみました。これだけだと完全に天職なんですけど、現実はそう簡単に上手くいきません。
こっからリアルに悪い点書いてくんですけど、楽しいままで終わらせたい人はあんまり読まないほうが良いです。



悪い点⓪ 激務


基本、映画館スタッフに座る時間とか一切無くて勤務時間中ずっと立ちっぱなしの動きっぱなしです。

作品終わって次の回の開場までに爆速で清掃終わらせてチケットもぎりとお客様の案内をして売店でグッズ売って映像チェック音声チェックしてたまにエンカウントする変なお客様の対応して上映終わったらまた清掃して...の繰り返しが平日の主な業務で、これが土日祝日とか夏休み冬休み春休みとかになると映画館がリアルに戦国無双みたいなごった返し状態になるんですよ。そこで更に「ドラえもん」とか「プリキュア」とか子供が集まる作品や「名探偵コナン」やMARVEL、DC作品とかその他人気の作品ではただでさえ人多い中で特典とか配ったりして、あと稀に人手不足の時にフード側の手伝いに入ってポップコーンだのジュースだのお客様に渡したりして、(基本、スタッフの種類はフロア側とフード側で分けられてて、ベテランの人じゃない限り兼業とかは殆ど無いけど、よほどヤバい状況の時はこういうこともある)もうなんか文章書いてても訳わからん状態になってます。
しかも当然クレームもくるし万が一映像トラブル音響トラブルなんて起きたらお客様全員に無料鑑賞券配らなきゃならないし、なんか改めて書くとこんな大変な仕事を俺ようやってたな...って思う。


あと、一旦冷静に考えてほしいんですけど、映画館って場所によってはレイトショーあるじゃないですか。そんで朝は場合によっては朝9時前から上映が開始するような作品もたまにあるじゃないですか?これってスタッフ側からしたら「どんだけ朝早くから出勤しなきゃいけないの?」ってことだし、レイトショーに関しては場所によっては終わるの深夜2時過ぎたりしてそっから清掃して閉め作業して退勤時間見たら今は午前何時です?ってなるんですよ。
こういうのって実際シフト次第なんですけど深夜3時帰りからの早番とか場合によっては全然あるし、他のスタッフが休んだりしたら自分に回ってくることもあるし、おまけに土日祝日休み一切関係なし毎日営業中...。

まあそういう仕事です。それなりに大変だよね。

(現在の映画館は緊急事態宣言で時短営業中だから20時までの回で閉店。これに助けられてるスタッフさんも実際いるんじゃないかな)



ここまで書いたけどあくまでこれは⓪なので前座にすぎません。サービス業だろうが飲食店だろうが業種問わず激務のところは全然あるし。



さて、こっからがメインテーマになります 
※口悪くなります



悪い点① 民度


もう実質悪い点これだけ。これに尽きる。
これは本当にショック受けた。


マジでビックリするぐらい、皆が思ってる以上にマナーの悪いお客様多いです。これが本当に悲しかった。周りの事考えない自分勝手な客多すぎです。
特に都市部の映画館とか人気の作品上映してる映画館とか、単純計算で人の総数が増えれば増える程にマナー悪いヤバい客の人数も増えるんですよ。色々な人がいるし皆が皆映画好きとかじゃないから仕方ないし、接客業なんてそんなもんでしょって言ったらそれで終わりなんだけど、それを抜きにしてもマナーの悪い客の多さには軽くショック受ける。俺の働いてた所の民度はマッドマックス状態でした。


あの、よくツイッターで「前方の席の人がずっとスマホ見てて光で映画に集中出来なかった」とか「中学生3人組が上映中ずっと喋っててうるさかった」とか「隣の客のポップコーン食べる音が耳障り」とか、不運にも迷惑な客に出くわして不満のツイートをしてる人見かけるんですけど、言ってしまえばこんなの氷山の一角でしかなくて、映画館を運営する側になって客を見てみると色々な人居てもうカオスです。映画館で働くことは、ある意味カオスに一歩足を踏み入れることだと思ってます。


そのカオスの代表格が「ゴミを撒き散らす客」これはもう働き始めて20分でヤバさを実感した。

あのですね、信じられないかもれませんがビックリするぐらい皆ポップコーン溢すんですよ。みんな食べ方知ってる?ってぐらいとんでもない量溢していく。子供から大人まで年齢問わずポップコーン撒き散らす。特に「ドラえもん」とか「プリキュア」とか、子供集まる作品だったり「名探偵コナン」とか「鬼滅の刃」とか人が多く集まる人気の作品であるほど上映後の劇場内が地獄と化してます。加えてデカいスクリーンで座席えげつない数の劇場とかだともう目も当てられない。大阪にクソデカ画面のI'MAXシアターあるらしいんですけど、あそこの清掃とかマジで大変だと思うんですよね。

ポップコーンで済むならまだしも、容器とか飲みかけのジュースとか使った後のおしぼりとかお菓子のカラとかホットドッグのケチャップとかペットボトルとかクリアアサヒの缶とかその他諸々のありとあらゆるゴミがそこら中に散乱しててもう頭おかしくなる。え?なにクリアアサヒって?なんなの?缶とかマジで分別めちゃめちゃ手間かかるんだよ。

あと厄介なのがジュースを座席に溢していく人。これされたらその座席使用出来なくなって文字に起こすのも大変なぐらい大変な作業になるから本当にやめてほしい。
まあ中にはね、「ごめんなさい、ぽっぷこーんこぼしました」って親御さんと一緒に謝りに来てくれる子供もいるし、一言謝罪に来てくれるお客様もいて、「ま、まあ…人間誰しも失敗はあるからね。全然良いですけどね…次は気を付けてね。」ってなるけど、実際は殆どがシラこいて帰っていく客ばかりだし、

「あのーwちょっとポップコーン溢しちゃったんですけど作り直し出来ませんかね?w」

とかふざけたこと抜かすクソバカがいたりするんですけどこういう奴らは全員マジで映画観に来る前に食べ方とマナーを1から勉強してこいよ。ムカつきすぎて「溢すなら食うな。食うなら溢すな。」って標語貼りかけたからな。

この地獄のお陰で俺は映画館でポップコーン食べれなくなりました。



もし映画終わって帰り際に自分の近くの席でポップコーン散乱してたら、掃き取りやすいように足でチョチョっと蹴るなりして一まとめ程度にしといてもらえると清掃の時にマジで助かります。俺これだけは今も必ずやってる。


たまにだけど理不尽な客も多いですね。
ちょうど「映画ドラえもん」が公開された初日の話、子供連れの客で大変なことになってた時にジジイが列の間に割り込んできて

「ちょっと兄ちゃん、トイレの場所分からんけん案内してくれんね」

って、もう一人で行けよバカがよ。
え?俺が今どんな状態か見えてる?こっち何百人って人相手にしてるのにジジイのトイレの為に構ってられんのよ分かる?あ?なに睨んでんだよ要介護かよてめーはよ。てめーが来る場所はどう考えても此処じゃねえだろ老人ホームだろ。

結局トイレまで連れていく羽目になったんですけど...



これ以外にも覚えてるのが、スマホを劇場内に忘れて出てきてしまった客が俺のところきて

「あのー、Fの14番の席辺りにスマホ忘れてしまったみたいで、ちょっと探してもらえないですかね?」

って言ってきたけど、その時もう既に次の作品の上映始まってて探すのなんて不可能なんですよね。

っていう旨の話をしたら「いや映画館のスタッフなら出来ますよね?スマホ無いの困るんすよね?」って何でキレ気味なんだよスマホ失くすお前が悪いだろうが。俺なんも悪くねえ。「できますよね?」って俺に何を期待してるんだこいつは。お前みたいなカスに期待されても困るんすよね?


結局、上映終わって一応探すことになって、座席の下覗いたら奇跡的にスマホあったんですよね。そしたらあのカスがよ、「あ、あざます...」ってギリ聞こえる程の小声でぼそって呟いて俺の顔見ずに帰っていったのマジで...!!!

当時「スマホを落としただけなのに」って映画があってたんですけど、北川景子じゃなくてあいつが酷い目に遭えばいいのにってずっと思ってた。



あと極めつけはもう...今思い出しても腹立つんですけど、上映終わって照明点いても全然帰らんで映画の感想一生喋ってるカップルいて、もう早く清掃終わらせないと次の開場時間に間に合わないって時間までずーーーっといるんですよね。
流石に我慢の限界で「あの、次の上映があるので退出お願いできますか?」って言ったらあいつら俺の事睨んできて


「はぁ~...何すか?チッ、はいはい今から出ますよ。行こう○○くん?」


ってキレられて、マジでこの状況に出くわした時に「暴力」以外で一体どうやって解決するんだってこの時ばかりは本気で思った。こんなの暴力で訴えても流石に許されるだろ?なあ?何なのこいつら?は?映画好き同士なら何やっても許されるとか思ってんのか??

「恋人と一緒に映画観て、映画終わって明るくなった後に2人で好きなシーン語り合うのが幸せな時間♡最高の映画体験♡」はいはい確かに最高の時間だよね分かる分かるよそういうの。あ??分かるかこのマヌケが。貴様らだけの場所じゃないんだよ此処は。勝手に2人だけの永遠の時間にしてんじゃねえよ。エンドロール終わったと同時に、貴様らの物語もエンドロール迎えとけよ
なぁーーーーーーーーーーにが「映画好き」だよこのクソ恥晒しがよ


お願いだから映画終わった後は即座に出てほしいです。迷惑かけてる人がいるってことを分かってほしいです。




最後に


ここまで散々書いてきたんですけど、俺が最後に言いたいのは

「映画好きだから、映画館で働きたい!」

って人に対して元映画館スタッフで色々な目に遭ってきた俺がどう答えるかって言ったら

「絶対やったほうがいい」

って強く断言します。


何でかって、これ別に「現実見てみろ」とか「辛い目に遭え」とか意地悪では全く無くて、映画館で働いてみることで今よりも映画のことが好きになれるし、今まで客側では見えてなかった部分を運営側の立場で映画館全体を見て、知っていくことで、映画館を運営してくれる人達を含めて映画館そのものを愛することが出来るんですよ

今まで自分が映画を観て笑ったり泣いたりして素敵な体験が出来てたのは、この場を提供してくれる沢山の人達のお陰なんだって改めて気づくことが出来るんですよ。今まで上映トラブル無く作品を楽しめていたのは、スタッフの方々が入念なチェックをしているから。劇場内にゴミ一つ落ちてないのは清掃を頑張ってくれたスタッフの方々がいるから。深夜にレイトショーを観に行けるのは夜遅くまで働いてくれるスタッフの方々がいるから。今のコロナ禍でも映画を楽しめているのはスタッフの方々が感染対策にしっかり取り組んでいるから。

素敵な映画体験の裏には沢山の人達の頑張りがあるってことに気づけた時。作品だけじゃなく、その場所までも全てを愛せるようになった時。その時の自分の姿こそが正真正銘の「映画好き」なのだと俺は思ってる。


楽しいことが多かった分、散々な目に遭うこともそれなりに多くて、流石にこれ以上は映画までも嫌いになりそう...って心折れかけてた俺をギリギリ繋ぎ止めたのは、本物の「映画好き」のお客様からの「ありがとうございました」の笑顔や「面白かったです」の声でした。当たり前のこと言うんですけど、「ありがとう」の言葉って自分が思ってる以上に凄いパワー持ってて、どんなにクレームとか理不尽なこと言われることあっても、お客様からの「ありがとう」の笑顔一つで「よし、頑張ろう」って思えるんですよ。”心救われる”ってこういうことなんだなって心の底から理解した。その思い出が心の奥で今も輝いてるから俺はいつまでも映画を好きでいられるし、映画館スタッフ辞めた今でも映画館通ってるけど、映画館で働く前よりも更に愛が深まった気がする。上映終わった後は自分の周りの座席のゴミ拾いもするしスタッフにも挨拶するのは、何度も言うけど映画に関わっている全てを愛しているからだし、何よりも「本物でありたい」っていう思いがあるからだと思う。そういう本物の「映画好き」が何なのかを間近で知れたことが、自分にとって一番プラスになったと本気で実感する。だから苦しい思い出も楽しい思い出も、全て含めて改めて言う。映画館で働いてみて本当に良かった。






ここまで読んでくれた方々へ

映画館で働きたいですか?なら絶対働くべきですよ

だって本物の「映画好き」になれる場所だから




















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