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アカデミー賞2022関連作品レビュー! 「ザ・パワー・オブ・ザ・ドッグ」

日本時間の3月28日にアメリカで開催されるのが、第94回アカデミー賞受賞式。

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個人的に気になって観た作品についてレビューを書いています。

前回までのレビューはこちら。

今回は!

「ザ・パワー・オブ・ザ・ドッグ」

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あらすじ等はこちら

こちら、今回の賞レースが始まった時から高評価連発で、特に批評家受けが抜群のような印象でした。第78回ヴェネツィア国際映画祭で初公開され、2番目の監督賞にあたる銀獅子賞を受賞。当然期待値も高くなりますよね。日本で一部劇場公開もされたようなのですが、私はNetflixで鑑賞しました。

※ここから先は思いっきりネタバレしてますので、結末を知りたくない方はご注意ください。

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(とにかく凄い風景)

この映画は1920年代のアメリカが舞台。上の写真でも分かるように「いわゆるカウボーイの話なのかな」と観る前は思っていて。確かにそうなんですけど、その中身は人間の深淵と陰をなんともいえない美と残酷さをもって描くような映画でした。

なにより

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主にこの登場人物四人で話が進むんですけど、

物凄い高度な演技合戦による心理劇!!

上記4人、誰一人として演技の質が負けてない凄い演技合戦の映画でした!

まずは主人公と言えるだろうカウボーイのフィルを演じた

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ベネディクト・カンバーバッチ!

今まで数々の映画やドラマ「シャーロック」などで観てきた役や普段の振る舞いなどを見てても、私にはとてもカウボーイとは結びつかないイメージだったのでこの役には正直驚ましたが、映画が始まるともう当たり前のように当時のカウボーイになりきっています。粗野でいわゆる「男らしい」と言われる男。それが、話が進むにつれてその裏というか本当のテーマが見えて来るとなぜ彼がキャスティングされたのか分かった気がして。

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本当にイヤな男なんですよね。冒頭から気難しく、人に嫌がらせをしたり、嫌味で屈強な態度を取ることで自分を保ってきたような人間。牧場の主で経営者でもある責任感もあるのかもしれませんが、全く好感が持てない人間なのですが、反対に温和な性格の弟ジョージが未亡人ローズと結婚し連子のピーターと共に家に連れてくることで、最終的に人生が変わってしまう役。

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イェール大学で古典を学んだりバンジョーを奏でるような才能もありながら、牧場での仕事に打ち込み「カウボーイ」として生活することに頑ななまでに見える彼の奥に潜む秘密を見かけた時、この時代から現代にも続くような「男らしさ」に縛られる男フィルの哀れさを素晴らしい演技力で

もうカンバーバッチ、圧巻!!!

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カンバーバッチが演技が上手いことは分かってたつもりでしたけど、こういう演技までできる人とは!これは凄いですね〜。私からしたらこの映画ではやっぱり一番の演技でした!!「彼じゃなかったらこの役成り立たなかっんでは?」ってとこまで到達してると思うんです!

けどカンバーバッチだけじゃなくて、この映画は先にも書いたように4人全員凄くて

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この連子ピーターを演じるコディ・スミット=マクフィも凄いんですよ!!

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映画の冒頭はまだジョージと結婚する前に母ローズが経営していた宿舎にフィルが来るところが見どころで。線が細く、母を喜ばせようと紙で作った美しい造花をテーブルに飾っていたら、フィルにバカにされて燃やされて傷つくピーター。

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ジョージと結婚しフィルと一緒に暮らさざるを得なくなりながら、大学進学のために家を空け、帰ってきて荒んだ母の姿に心を痛める。しかし、偶然フィルの秘密に気付いてからフィルとの仲を深めていく。

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この何を考えてるのか分かりにくい不思議な男の子の裏にある考えがラストで分かった時。これを強さと言っていいのか分からないけど。なんとも言えない気持ちになりました。このコディ君の演技もカンバーバッチに引けを取らない素晴らしい演技で、

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賞レースの前半は主演男優賞はカンバーバッチ、助演男優賞はほとんどコディ君がゲットしてました。これはもう本当に分かる。お互いに凄い演技でした!!こんな心理戦をまだ20歳程度で演じきってしまうとは!これは本当にお見事だったと思います!

そして!

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フィルとは対照的な弟ジョージを演じたジェシー・プレモンスとローズを演じたキルスティン・ダンストは実生活でもパートナーで、既に海外ドラマ「ファーゴ」で共演済み。なのにこのキャスティングは「お?」と思ったのですが、

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二人とも、主演のカンバーバッチやコディに負けない素晴らしい脇の演技を披露しています!

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キルスティンについては、先日ブログを書いたばかりですけど、

このローズ役、本当に素晴らしい演技でした。女性はやっぱり共感できるのではないでしょうか。フィルに忌み嫌われ、嫌味な行動や態度でじわじわと毎日殺されていくかのような日々から逃げようとアルコールに溺れていく役。ジョージは優しいけど頼りになる存在ではない。

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最悪の息子ピーターがフィルと親密になっていく事が不安でたまらなく、けどラストにはそのピーターに救われる。キルスティンのこの高い演技力と存在感も間違いなく映画にとって重要だったと思います。いい演技で本当に嬉しいですね。

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ジェシー・プレモンス演じるジョージは優しく温和ではありますが、頼りになるかと言われるとどっちかというと鈍感でイマイチ頼りきれない役。兄フィルとの対比はピーターだけではなく、ジェシーとも描かれていて、ぶっちゃけ牧場の経営あたりはジェシーじゃ務まらないかもしれないけど、人は決して悪くないという。けどこういう人が実は一番誰かを不幸にしてたりするかもな〜っていう役でしたね。ジェシー・プレモンスはもはや必殺助演仕事人的な感じで、最近はどの映画で見かけても上手いことは分かっているので、不思議な安心感がありました。

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やっぱりこの映画がどうしてこんなに評価が高いのか、それを語るには演技の話だけではなく、彼女の話抜きには語れないと思います。

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この映画の監督、

ジェーン・カンピオン

彼女といえばやっぱり

「ピアノ・レッスン」

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今観ても本当に美しくて、変わった映画のこの「ピアノ・レッスン」。1993年公開の映画ということはおよそ30年前。今67歳らしいので、って事は監督した当時は30代後半!!素晴らしい才能ですね。

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懐かしいですね〜。「ザ・パワー・オブ・ザ・ドッグ」を観終わった後に「ピアノ・レッスン」を最初に観た時のあのなんとも言えない感情を思い出しました。

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私は日頃は人の温かさや前向きになれるような映画がやっぱり好みでそういう映画を好んで観がちになってしまうのですが、「ザ・パワー・オブ・ザ・ドッグ」を観た時に「ああ、やっぱりこういう映画も必要だな」と心から思いました。決して観た後の気分は良いものではないけれど、映画としての完成度や語りたい主題の複雑さをこんなに巧みに力強く、そして繊細さも持ち合わせて撮れる人はなかなかいない。しかも、彼女は一貫して「ザ・パワー〜」にあるような、人間のなんとも言えない底にある苦しみや悲しみ、奇妙な部分を映す事のできる人です。こういう映画を生きがいにしているような人もきっといるのではないでしょうか。

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役者選びも芯があって、常連のホリー・ハンターやニコール・キッドマン、手がけたテレビシリーズで主演に抜擢したエリザベス・モスなど、確かな演技力を見極められる目があるんですね。今作の「ザ・パワー〜」でもその才が活かされてたんだと思います。

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ニュージーランド出身で、広大で荒れたような地を舞台に人間を描ける女性として、唯一無二の才能です。今回、アカデミー監督賞では彼女の受賞はきっと間違いないと思うのですが、本当に値する人だと思います。多作でないところも「らしい」という感じ。こういう人間心理劇を描くって凄くエネルギーを使うんじゃないかな。

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観た後に感情移入するキャラや感想が、観た人それぞれどこか違うような映画なのではないでしょうか。

気になった方はぜひ観てみてください!


おまけ

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「ある貴婦人の肖像」のニコール・キッドマンは同じ人間とは思えないくらい美しかった。。。


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