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「プロミシング・ヤング・ウーマン」感想はネタバレ無しには書けず どうせならマニアック話でも

先日この映画を観てきました。

「プロミシング・ヤング・ウーマン」

この映画、昨年の海外での公開前から海外エンタメサイトや批評サイトでかなりな話題を呼んでいて、ずーっと観たいと思っていた作品でした。

なんか「アメリカでの試写会の後で客同士が怒鳴り合い始めた」とか、そんな記事見かけて

どんだけやべーんだよ」と思ってましたが。

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この写真だけでヤバさが漂ってました。キャリー・マリガンのこんな姿観たことなかったので驚きました。

この作品の感想はネタバレ無しには書けないので、最初に言っておくとまだ観てない方は本当にできるだけ前情報を入れず、知らないまま観た方が良いと思います

では、ここから先は思いっきりネタバレになりますので結末を知りたくない方はご注意下さい。

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これまた凄いポスター。

ほんとにこの映画、「どこから話そうかな」ってくらいに語ること満載なんですけど、たくさん素晴らしい解説ブログやツイートも見かけてるので、脚本の素晴らしさなどはそちらに任せて。

まずはこの映画がめちゃくちゃ面白くなった要因の一つ、キャスティングが凄いことについて。

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この映画、どこまで意図されてるかはわかりませんが、キャスティングにかなりの意味があるので話の展開と同時にこのキャスティングの絶妙さに「凄いな」って感心したのでした。ちょっとマニアックな話になってしまうかもですが。

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主演のキャシーを演じたキャリー・マリガンについては言うことないくらいに絶賛されてるし、あえて私が言うこともないのですが。もともと単なるいい子やいい人を演じてこなかった印象があったとはいえ、これだけ強烈なキャラを演じてくるのは凄いなと思いました。ありそうでなかった役で意表をついてきた感じで、なんでオスカーを取れなかったんだー!アカデミー賞頭かたいよね。

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あと私が真っ先に書きたかったのは、この映画は単にレイプした男性だけを断罪しないで、マディソンみたいな女性にも復讐の刃を向けるのが凄いなと思いました。助けないのも同罪なんですよ。私はマディソンを演じたアリソン・ブリーにも勝手に心の中で助演女優賞をあげたいと思います。この役辛い役よ、女性にとっては。(しかもアリソンは義兄があのジェームス・フランコだったり。。。私は映画終了後に頭に浮かんでしまい。)

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そして医学部の相談役?学部長?ちょっと位置が分からなかったのですが、キャシーの親友ニーナがレイプされたことを、相手の男子学生が「前途有望」なことに加えて同じ女性ながら偏見によってまともに取り合わなかったエリザベスにはコニー・ブリットン。コニーといえば「FRIDAY Night lights」というアメリカでの人気青春ドラマに出演していた女優で、結構いい人のイメージがあったので、こういう役はなんか結構ショックというか。配役が活きていますね。

(「同じような相談が週1〜2回は来て」って。それ自体ヤバいだろ。)

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キャシーが勤めるコーヒーショップの気の合う同僚ゲイルにはラヴァーン・コックス。また海外ドラマ「オレンジイズニューブラック」で大ブレイクしたトランスジェンダーの女優さんですね。キャシーといいやりとりでした。

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あと映画冒頭でキャシーが酔ったフリしてはめる泥酔女お持ち帰りレイプ野郎を演じたのはアダム・ブロディなんですけど、海外ドラマ「the O.C.」のいい人オタク男子役セスで有名。だからセスが大人になったみたいな感じでこんなことしちゃうのが妙に可笑しみも少しあるのが余計キツい。これは狙ってのキャスティングだと思ってます。

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大学時代にニーナを友達の前でレイプする最悪野郎のアルを演じるのはクリス・ローウェルでこれまた海外ドラマ「ヴェロニカ・マーズ」に出てたし、

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恐らく大学時代も、そして大人になってからも「男の友情」とやらでアルの後始末をつけるジョー演じるマックス・グリーンフィールドはこれまた海外ドラマ「ニュー・ガール」に出てたし。ほんと海外ドラマキャストのオンパレードなんですよ。しかもみんなそんな悪人じゃない役で。

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あとキャシーの両親、お父さん役のクランシー・ブラウンは私は「ショーシャンクの空に」の悪徳警官役が浮かびますが今回はいいお父さんで。で、悪い人じゃないけどキャシーと合わないお母さん役は「キューティー・ブロンド」のエルの親友ポーレットのジェニファー・クーリッジ!なんかこのあたりの裏をついてくるようなキャストが凄いなって。もちろんこんなこと知らなくても全然面白いのですが。

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レイプされ亡くなった親友ニーナの母役はモリー・シャノン。ほんの少ししか登場しませんが、凄く重いはずなのにさらりと印象づけるあたりのうまさも光ります。

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キャシーと恋仲になる医大の元同級生ライアンを演じるボー・バナムは、私は「ビッグシック」の主人公のスタンダップコメディ仲間役で初めて観たのですが、いきなりこのキャスティングで驚いてたら、「エイスグレード」の監督だわ、人気YouTuber&ほんとにスタンダップコメディアンだわで知ってびっくりしました。ライアンの後半の演技も凄く上手かったです。

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そしてキャシーの復讐リストに名を連ねていたアルの弁護士役で、自分の仕事でたくさんのレイプ犯を救ってきた重圧に苛まれる男を演じるアルフレッド・モリーナは

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キャリー・マリガンの出世作「17歳の肖像」で父親役で共演してるんです!偶然かもしれませんが、キャリーの飛躍にアルフレッドありって感じでなんか胸熱でした。

そしてこのドラマはニーナが映るのは子供時代のキャシーとの写真だけ。この演出がかえって彼女がもういない喪質感とともに、これはキャシーの物語だという視点がはっきりするし、生々しさやベタついた感情を排除するあたりが凄く効果的だったと思います。

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そして制作、脚本、監督を務めたエメラルド・フェネルもちょっとだけ出てます。

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このシーンでキャシーが観てるメイク動画「フェラした時みたいなツヤリップ」のメイク紹介してるYouTuberみたいな役ですね。

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エメラルドは今回この映画を作るのに相当苦労したのではと思います。プロットは復讐というシンプルといえばシンプルな話だけど、扱われるレイプの問題の根深さ、主人公キャシーの人物像、無理はなくかつ怒涛な話の展開。

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キャシーはレイプされた本人じゃないところが私は凄くうまい設定だと思って。人生を壊されるのはレイプされた本人だけでなく、その人を愛していた周りの人達も同じです。

映画の中で「愛する人が被害者ならどれほどのことか簡単に分かるのに」というような台詞があります。どうして自分の関係の無い人間の事になると、こうも軽く扱われてしまうのか。レイプの問題の根深さをよく表してるなと思います。

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キャシーがニーナがレイプされた動画を観るシーン。映像は映りませんが、私が頭に浮かんだのは「ソーシャル・ネットワーク」のハーバード大でのパーティーシーンでした。ぞっとしましたね。

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最後の最後にライアン含めニーナを傷つけた男達に見事な復讐を遂げるキャシーですが、後味は決して良くありません。けどこの終わり方が完璧で、だからこそ余計悲しいですね。

また見返すのがキツい作品ではありますが、面白いのは間違いないし、いろいろ考えるきっかけになる良い映画だと思ってます。将来、息子に見せようかな。

おまけ その1

音楽も良いのですよ!私は特に1曲目「Boys」の皮肉な使われ方がお気に入りです。

おまけ2 このTシャツ、買うか。

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