退職代行サービスを見て思うこと
新年度が始まって2カ月が経ちました。研修も終わり、一通り仕事も習って、順調に社会人をスタートさせている人も多いかと思います。
一方で、2ヶ月くらい経つと「あれっ、この会社入る前と言っていたことが違わないか?」と思わせられる時期でもあると思います。仕事に慣れてきて、何となく違和感を覚え、「この会社本当に大丈夫なのだろうか」と思い始める、そんな時期ではないでしょうか。
そのような中、退職代行のサービスが話題です。
「辞めたいのに辞めさせてもらえない」退職代行、新入社員の依頼相次ぐ…背景に企業の強引な引き留め :地域ニュース : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
私が新入職員だったころには、もちろんなかったサービスで、時代の移り変わりを感じます。「退職するという人生でも有数の決断を他人に任せるのか!」と憤る人もいるかと思いますが、私は肯定派です。
記事の中では、「就職前に説明されていなかった費用を徴収された」「上司に不信感が募った」などが、退職する理由として挙げられています。
数カ月前まで、名前も知らない他人であり、まだまだ関係性も築いていない段階です。すんなりは辞めさせてくれないだろう、長く説教を受けるのも嫌だし…そんなストレスを数万円で発散してくれるならばと、退職代行を選ぶのも理解できます。
勤務先の上司からパワハラを受けていて、会社に行くのも嫌だという人にとって、退職代行はとてもありがたいサービスでしょう。退職にあたって嫌がらせを受けないとも限りませんし、退職届を受理してもらえないかもしれません。淡々と自分を退職に導いてくれる頼れる存在ともいえます。
いつ何時、自分の周りの職員が退職代行を使用するとも限りません。そのため、退職について意識したいことを備忘的に書いておきたいと思います。
1 転職が容易になった現在
今は、近年ではまれにみる人手不足の状況にあります。有効求人倍率は1.3、失業率は2.6%と、企業側が人を求めている状況です。優秀な人材は喉から手が出るほど欲しいでしょうし、労働市場に新たな人が入ってきても、すぐに良い企業へと就職してしまいます。
一昔前であれば、「ここを辞めれば次はないぞ」「今辞めたら次が決まるのは容易じゃない」といった言葉が飛び交うのでしょうが、今は違います。転職しようと思えば、すぐに職は見つかりますし、給料や待遇も良いかもしれません。
多少強引にでも引き留めようとしても、ハラスメントに該当するかもしれず、説得すらできない状況です。民間企業は待遇のアップを交渉とすることもできるかもしれませんが、公務員に至っては職員に退職を切り出されたら負けな状態です。
待遇は給料だけではありません。職場環境全般で、不都合な事柄を労働者が拒否できるような時代となってきています。
不本意な転勤が最たるものでしょう。給料が3割増しになる手当があっても転勤を受け入れられないとするビジネスパーソンが4割を超えているそうです。
不本意な転勤「辞める」が4割 曲がり角の制度を知る7選 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
昔は企業や組織が決めていた働き方を、労働者や社員が選ぶ時代に移り変わっているとも言えます。
2 1つの組織に勤め続けるのが美徳でも特でもなくなった
良くも悪くも、年功序列の社会ではなくなってきています。昔は、会社や組織が労働者を守っていました。定年まで勤め上げれば、子ども数人を一人で養えるだけの給料がでて、徐々に昇級していく、そんな将来が描けていました。
時代は変わって、もはや、年齢を重ねれば給料が上がる会社は少なくなり、転職したほうが給料が上がる社会になってきています。今いる会社が10年後も存続しているかもわからない状態です。
公務員も例外ではありません。自治体の存続危機はあちらこちらで叫ばれていますし、朝日新聞のサイトには、「消滅可能性自治体」という現役公務員としては恐ろしい、でも意識せざるを得ないマップを載せています。
「消滅可能性自治体」マップと一覧 ~2050年の日本の姿~:朝日新聞デジタル (asahi.com)
労働者誰もが守られる側ではなくなったということだと思います。一社で定年まで勤めあげるのは昔のこと、そう言える時代になってきたのかもしれません。
3 やりがいだけでは雇えない
皆、生きるために必死な世の中になってきた気がします。明日のため、家族のため、将来のため、理由は様々ですが、昔よく言われた「給料は安いけど、やりがいはある仕事」は、どんどん少なくなってきているのではないでしょうか。
「どこも給料はこのくらい」:SNSですぐに比較できる時代です。
「石の上にも3年」:3年も耐えるには長すぎます。
「仕事のし甲斐はある会社だ」:仕事の価値は自分で決めます。
本当に、給料を出さなければ、人は雇えないし辞めていく時代になりました。うちの自治体も、例外ではなく人が若い人を中心に辞めている人が増えています。
つい最近も、同じ課で働いていた後輩が、民間企業に移ることを検討していると本人から聞きました。会社を辞めるのに、大なり小なり決心が必要なのは昔と変わらないでしょう。大の大人が決断したことに他人がとやかく言うことはありません。
辞めると口にした時点で、きっと9割がたもう決まっていること、それを邪魔しようとすれば、それこそ退職代行を使ってでも、離職するでしょう。
一つの会社に勤めあげるのが普通ではなくなり、退職しても待遇が良くなることが往々にしてある世の中になりました。とても良い傾向だと思います。
あの手この手で引き留めようとせず、誰かが辞めようとしたら、「そうか、頑張れ」と言えるような心持ちでいたいものです。
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