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異動したときに行うこと

4月は新任・異動の多い季節です。多くの人が、人事異動にやきもきして、悲喜こもごもの結果を受け入れていると思います。今回は、異動した公務員が何をしたらよいかについて、考えたいと思います。

公務員の人事異動は、大体3~4年に一度行われます。若い職員に顕著ですが、大体、今経験している業務とは、性質の異なる部署に異動することが多いです。初めての異動の場合は特にですが、異動したら、まずは何をしたらよいか戸惑う人もいるでしょう。

しかし、給料を得ている以上、職員に求められていることは、組織に貢献することです。新しい配属先でも変わりません。組織に貢献するためにどうするかといえば、一刻も早く新しい配属先の戦力になることが必要です。

戦力となるために、何をすべきか、考えてみましょう。私が行うべきと考えるのは以下のステップです。
 ①周りの職員の顔と名前を覚える。
 ②自分と周りの職員の仕事の概略をつかむ。
 ③課が何を行っているのかを知る。
 ④引き継ぎ書を精読する。

1 周りの職員の顔と名前を覚える。

仕事を行う上で、基本となるのは人間関係です。新しい環境の変化があっただけでも多くの方がストレスを感じます。新生活のストレスに関する調査
でも、およそ7割の方が「新生活の環境変化でストレスを感じた。」と回答しており、その主な要因は「新しい環境での人間関係構築(53.3%)」でした。

ストレスを感じないことはできないため、対処・緩和する必要があります。調査においては、効果の合った取組みとして「自分から心を開いたり働きかけようと考える。」ことを紹介しています。

これを踏まえて、まず行うことは、これから一緒に働く人の顔と名前を覚えることです。テレワークの普及もありますが、週の半数以上、同じ空間にいることになり、下手をすると家族よりも長い時間を過ごすことになります。

相手の顔と名前を覚え、挨拶をして、前向きに知る努力をするようにすると良いでしょう。徐々にですが、人間関係が構築されて、悩むことやストレスも減っていきます。

一方で、あまり変わらないと感じた場合は、肩ひじを張らず、鷹揚に構えてもよいと思います。先の調査結果で、「自分の居場所は他にもある。」と考えることが、新生活のストレスに対しての緩和度が高かった考え方であるように、人の気持ちは自分ではコントロールできないので、入れ込み過ぎないことも意識しておくとよいでしょう。

2 自分と周りの職員の仕事の概略をつかむ。

次に、自分と周りの人の仕事を覚えましょう。公務員が仕事をする上での基となる「事務分担」「事務分掌」があります。地方公共団体の事務は、首長(知事、市町村長)の権限に属しており、事務を分掌させるため、「部」「局」「課」といった内部組織を設けることができます。

多くの内部組織やその内部組織が何を行うかを示した事務分掌は、それぞれの自治体の規則で定められています。

例えば、横浜市だと、横浜市係設置規程に基づき、○○課の●●係が、何を担当しているのかを公開しています。これは他の多くの自治体も同様です。内部資料のみの場合もありますが、この公開しているものを、さらに「係」「担当」に細分化して、主担当(副担当)を定めています。

ただ、異動したてでは、その課の事務分掌が出来上がっていないことも多いのですが、昨年度の事務分掌を見ることで、自分が行うであろう業務、周りの方が行っている業務を知ることができます。

自分と回りの業務を把握することができれば、電話を取ることができるようになります。「●●についてお聞きしたいのですが。」と問われた際に、該当者につなぐことができるため、戦力に一歩近づくことができます。

3 課が何を行っているのかを知る。

課が行っている業務・事業を知ることは、とても重要です。所属する課が、なぜ存在していて、住民に何のサービスを提供しているかを知ることは、自分の仕事の背骨となり、仕事のモチベーションにつながります。

「何のためにこの仕事をするのか?」と、目的意識を持つことは、ただ目の前の仕事を機械的にこなすだけでなく、主体性・積極性につながり、仕事に対する満足度も高くなります。

どこの課にも、所属課の仕事を効率的に学ぶための2つのツールがあると思います。予算編成資料と議会の答弁資料です。

予算編成資料は、地方自治体のそれぞれの課が、来年度予算を財政の関係課と調整する際に提出する資料です。

財政担当者(基本的には予算削減・適正化を目指す立場)に、なぜ来年度この事業を行う必要があるのか、分かりやすく説明するため、要点が紙数枚で分かりやすく示されています。

名古屋市などは編成過程を一般公開しています。公開せずとも、どの自治体でも職員は、自分の課の予算資料はいつでも見られるようになっているはずです。この資料を使って、自分の課で持っている事業の内容、事業の期待される効果を知ることができます。

議会の答弁資料も同様です。所属課に対する議員の質問は、課の根本を質すことが多いです。「なぜ、この事業を行うのか首長の所見を伺う。」「●●という問題に対して、どのように取り組んでいくのか。」こういった議員の質問に対して、議会調整では何度も推敲して答弁を作成します。

首長の答弁は、質問者である議員と同時に、住民に向けて答えるものなので、端的に分かりやすく自治体の取組みや効果を説明するものとなっています。質問に対する答弁と、答弁に貼付された参考資料を見れば、その課でやっている事業の内容と目的、今後の方向性などをつかむことができます。

4 引き継ぎ書を精読する

最後に、前任者の残した引き継ぎ書を熟読しましょう。チェックするポイントは、年間のスケジュールと繁忙期、年度当初に行うべきこと、そして課題と今後の取組みです。

1年間何を行うのかを把握し、逆算して、いつ何をすべきかを自分の中に落とし込むことが大切です。例えば、審議会の開催担当となったのならば、①議題の照会、②開催日の検討、③委員長への挨拶、④開催日の打診、⑤他の委員への展開など、どの項目をどのような順番で行うか、自分の中で整理していく必要があります。

他の担当項目も同様に、この一年何をするのかを可能な限り洗い出して、カレンダーを作ると、自分の繁忙期が視認できます。繁忙期と、プライベートの予定が重なりそうなときは、仕事を前倒しする、可能ならば用事をずらすなどの対応を取れると後が楽になります。

加えて、年度当初にやっておくべきことは、しっかり確認しておきましょう。初めの仕事ぶりが後々に影響することは往々にしてあります。照会が漏れていた、挨拶が遅れたなど、基本的なことを忘れると、大事なところで躓くことになりかねません。

また、前任者が感じた課題と今後の取組みについても、確認しましょう。公務員は頻繁に移動があるため、どんなに優秀な人でも、今までやってきたことが実らずに職場を後にすることが多いです。

宿題として残してある課題は、担当職務にとって重大な事柄であることが多く、今後の取組みについても、本来ならばこうなってほしかったのに出来上がっていないことになっていることがあります。引き継いだ際には、どうすれば自分の担当職務中に解決できるかを考え、1年の予定に落とし込んでいくと良いでしょう。

しかし、一通り引き継ぎ書を読んでも、分からないことは多々あると思います。分からないままとして放置せずに、前任者や上司、副担当の方に積極的に質問して解決していきましょう。自分が分からなかったことは、数年後に自分が引継ぎを行う際の大事な追記事項になります。

結びに、公務員は異動が頻発することから、引継ぎのスキーム自体は確立されていることが多いです。引継ぎ書がないと言ったケースは少ないと思いますが、新規事業の立ち上げ担当になった場合などは、引き継ぎ書はありません。

そういった場合は、まずは行動することが重要です。少しでも事情を知っている同僚に聞き込みをする、予算資料からヒントを探す、他の自治体で類似事例があれば連絡を取ってみるなど、まずは動いてみることで、道が開けることもあります。

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