公務員になりたい人が減っている
地方自治体が職員を確保することが、どんどん難しくなっているようです。
「地方公務員」人手不足…“なりたい職業”ランキング上位なのになぜ? 専門家が解説 | マイナビニュース (mynavi.jp)
コモンエイジ:47都道府県アンケート 結果詳細・自由記述 採用難の歯止めは | 毎日新聞 (mainichi.jp)
いくつかの記事を見てみると、採用試験の倍率は過去最低の5.2倍です。就職氷河期と呼ばれたころの倍率が15倍弱であったため、倍率は三分の一に減っています。昔は10人の合格者のところに150人ほど応募があったのが、今は52人になっています。
倍率が下がったのは団塊の世代が退職したことによって、そもそも応募者数が大きく減ったこともあるので、一概に比較はできません。しかし、私が入庁した十数年前も10倍前後の倍率はあったので、ずいぶん下がったなという印象はあります。
1 公務員の志望度は変化あるのか?
直近に行われた「マイナビ 2024年卒大学生公務員イメージ調査」によると、公務員を就職先として考えたことのある学生は前年に続き増加傾向のようです。
2024年卒大学生公務員のイメージ調査 | マイナビキャリアリサーチLab (mynavi.jp)
「公務員を就職先の選択肢として考えている大学生」の割合は
23.3%(2022年卒)→22.7%(2023年卒)→23.8%(2024年卒)と微増しています。
一方で、「公務員を就職先の選択肢として考えたが止めた人」も微増しています。」39.8%(2022年卒)→41.5%(2023年卒)→42.4%(2024年卒)
「考えたが止めた人」の方が、順調に数を伸ばしているように感じられます。このあたりの理由が公務員のなり手不足にもつながっているように思います。
一方で、公務員になりたい理由は大きく変化はないようです。同じマイナビの調査によると、公務員を就職先として「考えている人」と「考えたがやめた人」の理由の上位3つは以下のとおりです。
考えている人
→①安定している、②福利厚生が安定、③社会貢献度が高い
考えたが止めた人
→①安定している、②福利厚生が安定、③給与待遇
上位2つは一緒ですが、3つ目の理由が異なっています。
特に「社会貢献度が高い」は、公務員を就職先として考えている人の回答割合は51.0%である一方、考えたが止めた人の回答割合は23.2%と大きく差が開いています。
マイナビの調査では、公務員を志望する人のうち、安定性や福利厚生だけでなく、社会貢献性や仕事内容への理解が進んでいると、公務員を就職先として具体的に考えることができると推察されるとあります。
公務員は社会貢献度が高いことがもっと理解されれば、なり手が増えると推察していますが、私はその他にも理由があるように思います。
「公務員を考えたが止めた人」は、民間企業も公務員以上に社会貢献性があると考えているとも言えますし、または社会貢献性よりも仕事において求めているものが別にあるとも言えます。
2 公務員を考えたが止めた人の理由は?
マイナビの調査に詳細版も掲載されており、調査によると、「公務員になりたいと思ったが、その後志望しなくなった理由」の上位3つは以下のとおりです。
①十分な試験対策ができないと思ったから(40.2%)
②他の業界や仕事などに興味を持ったから(39.6%)
③試験の難易度や倍率が高く受からないと思ったから(37.6%)
4割近くの人が、公務員よりも民間企業に興味を持ったためと回答しています。最初から公務員を目指さない人も含めて、多くの人が民間企業は魅力的だと思っているようです。
そして、印象に残ったのは「どのようにすれば公務員になりたい気持ちが高まると思うか」という質問です。この質問で一番回答率が高かった答えは、「堅苦しいイメージが払しょくされれば」です。
確かに公務員は堅苦しいイメージがあります。しかし、公務員になりたい理由の上位である「社会貢献度が高い」というアピールポイントも堅苦しい感じがします。
社会貢献度が高いのは良いことです。良いことなのですが、志望理由を述べるときに「社会貢献度が高いから」と答えたら、減点はされないでしょうが、真面目、堅いという印象を受けそうな気がします。
公務員の門戸を広げるために、様々な人に公務員になりたい気持ちを高めるためには堅苦しいイメージを払しょくしたい、けれどもそれには、公務員を志望する人の理由の一つを緩める必要もあるようです。
また、公務員と比較して民間企業のどのような点が魅力的かという質問もあります。上位の理由の一つに、「給与・待遇が良い(31%)」があります。
国家公務員を中心に、公務員は高給取りとは言えず、ベースアップが強く叫ばれている民間と比べて、賃金上昇の伸びは緩やかです。インフレの傾向もある中、給与額で比べてしまうと民間企業に分があると言わざるを得ません。
3 そもそも仕事観が違う
さらに、昔とは公務員も含めて、労働者の仕事に対する向き合い方も違います。Indeed Japanが、5か国(日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国)において、現在就業中の20~50代の正社員男女計8,848名を対象に行った調査によると、日本は他国よりも「仕事よりもプライベート優先」と回答する割合が高いようです。
参考:「転職」に関する5か国比較調査、日本の転職理由トップは「職場に不満や嫌なことがある」 転職経験も最下位 | AMP[アンプ] - ビジネスインスピレーションメディア (ampmedia.jp)
「仕事よりもプライベート優先」「仕事はあくまでお金を稼ぐため」と回答する割が7割を超える一方で、「仕事で昇進・昇格したい」と回答する割合は5割を切って最下位です。
仕事よりも大切なことがあるため、ガツガツは働かない。仕事はお金を得るための手段であって目的ではない。上記に書いた堅苦しさの払しょくと似たような響きがあります。
昔は「公務員になれば一生安泰だから」という理由で公務員が選ばれることが多かったように思います。
今でも公務員の最大の志望理由は安定性ですし、その印象はいまだに残ってはいますが、indeedの調査結果にもあるように、安定性よりも重視されることが変わってきたのではないでしょうか。
個人的には、仕事はお金を得るための手段であることは確かだと思います。何かの本で見た記憶があるのですが、仕事は旅行先に向かうための交通手段のようなもので、飛行機が良い時もあれば自転車の方がふさわしい時もあります。
昨今から続く人手不足の影響もあって、民間は若くて優秀な人材を強く欲しています。公務員も昔のように、「社会貢献」「安定さ」という言葉だけでは、振り向いてくれない人も増えてくるのでしょう。
ただ、倍率が下がるのも悪いことばかりではありません。民間企業も、公務員以上に日本の価値向上に貢献されていますし、そもそも公務員の倍率が高いということは、就職難で失業率が高いこととイコールであり、喜ばしいとも限りません。
倍率77倍!中国で過熱する「公務員人気」の実情 海外への渡航も制限、それでも目指す理由とは (msn.com)
公務員になりたい人が減っている、インフラ等を考えると懸念はあるのですが、就職難ではなく民間企業の価値が高まっているともいえるので、悪いことばかりでもありません。
個人的には、行政職ならば今くらいの倍率がちょうどいいのではないかと思います。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?