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今日は少し涼しかった。

〝明日は台風なんですってね〟
半年通っている整骨院で、今日初めて担当してくれた先生が言っていた。

〝声はいつも聞こえていたけど、こうして顔を合わせるのははじめてですね〟

パーテーション越しに一度だけ話したことがあった。なるほど、だから緊張しなかったのか。
声から受ける他人の印象は不思議だ。
人と話すのはとても緊張する。
上手く息が吸えなくなるし、なんだか声が出しにくくなる。
昔からそうだ。

4人いた先生の中で一番よく喋るイメージの先生だった。
パーテーションの向こうからいつもこの先生1人で喋ってるのかと錯覚するほどとてもよく喋る。
とっても苦手だと思った(ごめんなさい)

会話が弾まず、気まずくさせたらどうしよう。
いつもそう思う。
だからお話好きそうなこの先生にちょっとした苦手意識があった。

でも無意識化に半年声だけが刷り込まれていて
得体の知れない他人、ではなく
会話のない知り合いのような位置にいたようで
顔を合わせて見たら不思議な親近感を感じた。

そして短い時間で思ったこと。
お喋り好きな人というよりも、お喋りが上手な人だった。
お話好き同士なら盛り上がるし、
私のような人ならとっても間が持つ。
相手の長所を自分の短所ではかってしまう悪い癖。

この整骨院にお世話になってから、
会話から自分の事を相手に伝えることや
相手を知ることの難しさや大切さをしみじみと感じる。
仕事を通してなら簡単に行くことも、こんなに難しいなんてとよく思う。
バランスがおかしくなって無理してる事に気づくとき、仕事と普段に差異の少ない仕事に就きたいなあと溜息がでるけれど。


整骨院の帰りはカフェに寄ってから散歩をするのがいつもの流れ。
普通に生活を繰り返していたら通ることもないような路地を歩くのが好き。

マンションにしか住んだことがないので、
一軒家が並んだ路地は非日常感があって優しい。
生活の匂いや温度が心地いい。
雑然としたお庭や空き地の立て看板、
遠くまで続く、人気のない道。

優しいなあと、春にもこの道で思った。
陽の光が温かいだけで、
風が心地いいだけで、
空気が冷たいだけで。
こんなに幸せだと感じたことはなかったかも知れないなって、そう思ってた。

ぼんやりしている時ふと思い出すその人に、
いま会いたい。
誰かじゃなくて、あなたと今話がしてみたいのです。
シンプルに心を満たしていられた、不思議な連鎖が起こった季節。

もうすぐ秋。
不在の夏は空想の中。

#夏の片道切符 #日記 #言葉 #エッセイ #会話

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