見出し画像

ローリス・マラグッツィ国際センターのこと

先日「レッジョに見学に行きたいと思っています」という方からご相談を受ける機会がありました。私もレッジョ・エミリア(レッジョ)の街を訪れたのは一度きりの「ニワカ」なので、お伝えできることと言ったら自分が訪問したときの様子だけなのですが、この機会に振り返って整理してみようと思います。

レッジョを訪れたのは世界中に新型コロナウイルスが蔓延するパンデミックのすこし前、2019年6月のことです。
レッジョの幼児教育のことは、うっすらと1990年代に日本の研究者の方に教えて頂き、2000年代になって日本で開催された展覧会を見て感心した記憶があるのですが、今も昔もイタリア国内のレッジョ以外の街でレッジョの教育の話を聞く機会はほとんどありません。

レッジョの訪問については事前にレッジョの自治体立幼児教育施設群(乳児保育所と幼児学校)の運営に関わる法人レッジョ・チルドレンのウェブページから情報を集め、日本でレッジョの教育を研究している先生にご教示を頂きました。

ウェブページはイタリア語だけでなく英語でもほぼ全ての情報にアクセスできます。その中に「ローリス・マラグッツィ国際センターの見学について」も案内がありました。
https://www.reggiochildren.it/centro-internazionale-loris-malaguzzi/visita/

レッジョの市内には沢山の乳児保育所(0〜3歳児施設)や幼児学校(3〜6歳児施設)がありますが、あたりまえのことながら突然押しかけていって見学を頼んでも断られてしまいます。(世界中から来訪者があり、見学希望が殺到するようですから、園で生活する子どもたちの平和を守るためにも当然のことと思います)

一方、「ローリス・マラグッツィ国際センター(Centro Internazionale Loris Malaguzzi)」はそういった各地からの見学者を受け入れることを想定した施設として、基本的に一年中見学者を受け入れているようです。

はじめてのレッジョ訪問でもあり、まずはアクセスしやすい「ローリス・マラグッツィ国際センター」の見学をリクエストしようと連絡先のメールアドレスへメッセージを送ったところ、比較的すぐにOKの返事をもらいました。

申し込みのやりとりはイタリア語でおこないましたが、英語でも問題はないようです。
こちらの希望日を伝えたところ「その日はちょうどイギリスからの見学グループもいるので朝10時にセンター受付に来てくれればいいですよ」とのことでした。

当日は早朝にミラノの宿を出て急行列車でミラノ中央駅からレッジョ・エミリアの駅に向かいました。ミラノ-レッジョ間は2時間あまりですが、列車の本数はそれほど多くなかったと思います。
あらかじめ、レッジョに詳しい研究者の先生から「レッジョの市街は国際センターと駅を挟んで反対側にあるから、できれば街も見ておくと良いですよ」と伺っていたので、約束の時間より早くレッジョに着くようにして、旧市街(昔からのレッジョの街:駅から少し離れています)を散策し、それから駅まで戻りました。

Googleマップでみると国際センターは駅の近くに表示されます。駅前には広い駐車場が広がり、その向こうは古い工場跡地のようでした。「このあたりかな?」と駐車場を越えて工場の建物に近づいていくと、たしか「国際センター」のサインがあったように思います。
開いた門を抜けると大きなサインとモダンに改築された大きな建物がありました。

おおむね約束の時間には案内のスタッフがエントランスの受付近くに来てくれましたので、その日の見学希望の人たち(イギリスのグループはバスの都合で遅刻でしたが、他にもイタリアの学校の先生たちがいました)と合流し、「まずはカンファレンスルームに来てください」と、講義室のような部屋へ案内されました。

午前中はここで「レッジョ・エミリアの街の(近現代の)歴史と幼児教育のなりたち」について講義を受けます。
ちなみに見学は一日を通してイタリア語の説明と英語の通訳がつきました。

なぜ講義から見学ツアーが始まるか?というのは、レッジョの教育者たちは「レッジョ・エミリアの幼児教育を理解してもらうためにはこの街の歴史や文化を知ってもらわなければ」と強く思っているからのようです。これはとても大切なことと思います。

レッジョ・エミリアの幼児教育とその成り立ちについては、これまでささやかですが、noteにいくつか記事をご紹介しているとおりです。

お昼休みをはさんで、午後はセンター内の施設見学ツアーとなりました。だいたい1時から3時すぎまでだったように思いますが、1階フロアには「光のラボ」という子どもたちが光の効果と遊び、探求できるいろいろなツールや設備のある広いエリアがあり、ここを探検しているだけでも一日楽しめる内容です。

1階フロアにはその他にもブックショップがあってレッジョのたくさんの出版物やグッズが販売されています。
また展示エリアには子どもたちのプロジェクトをまとめた内容が展示されていたり、レッジョの街の歴史年表パネルなどもありました。

2階フロアに上がると、そこには子どもたちとのプロジェクトの準備や成果が見られるエリアがありました。2022〜2023年に日本でも巡回している「もざいく」の展示もここで見ることができましたが、それ以外にも「いま研究している途中」という色々な粘土のサンプルが並べられていたり、こちらもじっくり見ていたら一日過ぎてしまいそうな内容を見ることができました。

見学ツアーはこれらのエリアを一通り見て解散になったのですが、伝え聞いていた「ドキュメンテーション・センター」は見られますか?と案内をしてくれた方にお願いすると快く案内してくれました。
「ドキュメンテーション・センター」はそれほど大きなスペースではありませんでしたが、市内の各園のプロジェクトに関する多くのドキュメンテーションがここに集められて、その中で特に興味深いものがさらに編集作業を経て出版物になるのだそうです。
ここでうっかり?夢中になっていたら「そろそろセンターは閉館になりますよ」と4時頃に言われてしまいました。

ブックショップで本を買って帰ろうとあわててとって返したのですが、まだ閉館時間前でしたが、ブックショップのスタッフの姿はもうありません。
泣く泣く手ぶらで展示エリアをもう一度回ってから、センターを後にして一日が終わりました。

残念だったのはブックショップで本をゆっくり選べなかったこと(これは後日ウェブページから取り寄せ購入することが出来ました)、もうひとつは美食で知られるレッジョの街で食事をする時間がなかったことです…。

2023年春現在、各国の見学グループが国際センターを訪れている様子がSNSにも紹介されています。
グループだけでなく、私のように個人で見学を申し込んでも対応してくれるようですので、もし機会と関心のある方のご参考になれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?