イスラム教の神秘主義をミステリ小説のように描く - 『火蛾』
「言葉とは、騎士を失った虚しい馬にすぎぬ」「意味はすぐに剥落する」
わたしは読書が好きだ。だから、この言葉と本書で出会ったときにはある種の感動を覚えた。
本書は、スーフィズムに傾倒する男性を中心に展開される。スーフィズムとは修道者の内面的な浄化によって神との直接的な結びつきを目指すイスラム教の神秘主義的な分派である。
一般的には宗教の教えは言語で広まる。聖書や、コーランなどがその代表だ。教えが広まるにつれて、言葉自体が神聖視される。そのような道筋を辿るのは想像に難くない。