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「もっと具体的に書け!」と言われなくなる文章の書き方

『落とされない小論文』著者・今道琢也 インタビュー(3)

2018年2月の発売以降“小論文のバイブル”としてジワジワ広がり、小論文対策本として異例の78500部を記録している『落とされない小論文』。大学受験、公務員試験、教員採用試験はもちろん、就活のエントリーシート、企業内の昇進試験、補助金などの申請資料など、さまざまな場面で求められる“文章力”が鍛えられる本だ。
著者の今道琢也氏は、文章が苦手な人ほど「具体的に書く」ことができないと言う。そもそも「具体的に書く」という表現が抽象的で、よくわからない。どうすればできるようになるのか、詳しく聞いてみた。(取材・構成/イイダテツヤ)

プロフ

今道琢也(いまみち・たくや)
1975年大分県生まれ。インターネット上の小論文指導塾「ウェブ小論文塾」代表。京都大学文学部国語学国文学科卒。元NHKアナウンサー。高校時代、独学で小論文の書き方をマスターし、現役時に大阪大学文学部、翌年の再受験で京都大学文学部、慶應義塾大学文学部、就職試験ではNHKの試験を突破(すべて論文試験あり)。NHK在職中に編成局長特賞、放送局長賞などを受賞。2014年に独立し「ウェブ小論文塾」を開校。約2000枚の答案を独自分析し「全試験共通の陥りやすいミス」を発見。
「落とされない小論文の書き方」を確立する。国家公務員試験、地方公務員試験、教員試験、大学・大学院入試、企業内の昇進試験、病院採用試験、マスコミ採用試験にいたるまで、あらゆる分野の小論文を指導し、毎年多数の合格者を輩出。同塾では、過去問題指導に加え、全国の自治体・大学の独自予想問題を作成して指導し、的中事例も多数。「答案提出翌日から3日以内」のスピード返却に加え、丁寧で的確な指導が圧倒的な支持を得ている。『落とされない小論文』が初の著書。

「本気で考えていない」から抽象的になる

── 『落とされない小論文』は、小論文試験を受ける人たちが「こういう失敗をしがち」という項目をランキング形式にして書かれていますよね。

今道琢也(以下、今道):はい。ダメージが大きく、かつ頻出であるミスに絞って、順に克服する方法を書いています。

── その第2位に「具体的な言葉で書けていない」という項目があります。「具体的に書けない」というのは、具体的にどういうことでしょうか?

今道:(笑)。抽象論ばかりで、リアルにイメージできる場面がまったく書かれていないということです。

── 今道さんの「ウェブ小論文塾」では、大学受験や公務員試験や教員試験など、あらゆる小論文試験の受験者を指導されていますよね。「具体的に書けない」受験者は、どの試験に多いと感じますか?

今道:大学入試、就職試験などを問わず、どの試験でもまんべんなく多いです。昇進試験でも多いですよ。

── 昇進試験って、会社で管理職になるための試験ですか? 長く社会人経験を積んだ人たちですよね?

今道:そうです。昇進試験では「管理職になったら、あなたはどういう取り組みをしますか?」というような論文を書かせるケースがよくあるんですね。

 そのときに「風通しのいい職場をつくる」とか、「外部スタッフと密なコミュニケーションを取る」「社員も、派遣も、パートも関係なく、すべてのスタッフと信頼関係を築く」というような抽象論を書く人が多いのです。

── たしかに、よく聞く表現です……。

今道:何が「具体的」なのかをお話しする前に、今の表現が「具体的ではない」ということは、多くの人が感じるはずです。「どうやって、それらを実現するか」という部分こそを具体的に語ることが求められているのに、それが書かれていないんです。

 「風通しのいい職場をつくる」なら、たとえば「週に一度のミーティングを開催する」とか「○○のようなツールを使って、いつでも意見交換できるようにする」とか「○○を改善して、情報共有をしやすくする」など、具体的な取り組み内容を書かなければ、解答したことにならないはずです。

── 私もいろんな人にインタビューをするとき、「もっと具体的に聞かせてください」と感じることは多いです。そういう人たちは、なぜ具体的に書くことができないんでしょうか?

今道:ひとつ言えるのは「そこまで本気で考えていない」ということではないでしょうか。「管理職になったら、どんなことをやりますか?」という問いについて、ぼやっと想像する範囲で満足していて「どうしたら職場の風通しがよくなるか」までを考えていないからだと思います。

 そして、もうひとつ「読む人をイメージできていない」という原因もあると思います。

── どういうことですか?

今道:これは別の例のほうがわかりやすいでしょう。

 たとえば、「大分県の魅力はどのようなところにあるか、あなたの考えを述べなさい」という問題があるとします。

── はい。大分県。

今道:この問いに対して、

「文化、歴史、食べ物、自然の風景、どれも魅力に溢れた素晴らしい場所です。」

というようなことを書く人がいます。

 これを読んで「大分って、こういうところなんだな」と想像できますか?

── いや……できないです。

今道:つまり、文章を書く段階で「これを読んだ人は、どう感じるかな?」ということが全然イメージできていないんです。

 一方、こちらの解答はどうでしょうか。

大分県の一番の魅力は温泉です。別府、由布院には3000以上の源泉があり、別府湾の夜景を一望できる温泉もあります。

── 夜景の映像が浮かびました。温泉に行きたいです。

今道:少なくとも、読む人のイメージが膨らみますよね。

 つまり「具体的に書く」ためには「いかにして、読む人にイメージを膨らませてもらうか」を意識すること大事です。固有名詞や数字を入れる、あるいは、視覚、聴覚、触覚、味覚などに訴える描写をすることで、文章は具体的になっていきます。

具体的でない文章には、「ムダな言葉」が多い

── 「具体的に書けない人」には、そのほかにどんな特徴がありますか?

今道:「具体的に書けない」とつながっていないようでつながっているのが「ムダな言葉が多い」という問題です。

 そもそも「具体的に書かなきゃいけない」という思いがあったら、余計なことを書いている余裕なんてないはずなんです。「書くこと」がはっきりしていないからこそ、どうでもいい装飾をつけたり、ちょっとでも字数を稼ごうとしてムダなことを書いてしまう。

── たとえば、どんな「ムダな言葉」をつけてしまうんでしょうか?

今道:たとえば「代理出産についてどう思うか?」という出題があったとします。

── 語るのが難しいテーマですね。

今道:まさに。難しいテーマで起こりがちなのです。

 たとえば、冒頭で「代理出産の是非というものについて考えるにあたっては……」と書いてみたり「さまざまな視点で捉え、多様な意見を踏まえていかなければならないのだが……」というようなことを書いてしまう。

 難しいテーマであることは出題者も承知しているし、文字数を稼ぎたい気持ちもわかりますが、これだけの文字数を使って、結局何も論じていません。具体的でないだけでなく、自分の論に入ってさえいない。こうしたムダを省いていくだけでも、文章は読みやすくなります。

── 文章に限らず、話をするときでも、ムダな言葉を減らすのは大事なように感じます。そのあたりについて、NHKのアナウンサーでもあった今道さんはどのように考えていますか?

今道:話す場合は、相手を引きつけるためとか、アイスブレイクの意味合いで、ちょっとしたジョークを入れたり、雑談から入る方がいい場面もあると思います。

 とはいえ、会議で報告をするとか、限られた時間で印象や感想を述べるような場面では、ムダを省いて簡潔に話すことは大事です。それができない人は、やっぱり「伝えるべきことは何か」が頭のなかで定まっていないのです。

 「これとこれを話す」と決まっていれば、自ずと「こういう順番で話した方がわかりやすい」「余計なことを言っていると時間がなくなる」と考えるようになります。

── こうして直接お話を聞いていても、『落とされない小論文』を読んでいても、今道さんの言葉にはムダがないですね。

今道:昔の職業柄「時間内にこれを伝えるには、どうすべきか」という意識は常に働いているかもしれませんね。文章もあまり長くはならないですね。「もっといろいろ書いたほうがよかったかな」と思って、後で付け足すことはありますけど……。

具体的なコトバで

『落とされない小論文』では、「低評価の解答例」と「高評価の解答例」を対比させてポイントを解説している。

── 『落とされない小論文』は、短く、要点がわかりやすく書いてあるというのも、この本がヒットしている大きな要因だと思います。この本は200ページ弱ですけど、後半80ページは試験別の「頻出テーマ」が書いてあるので、実質120ページの中に「小論文対策のポイント」が凝縮されていますよね。そこを読めば、文章力がアップするという効率の良さは本当に素晴らしいと思います。

今道:小論文が苦手な人の多くは文章を読むことにも苦手意識があるので、分厚い本は、それだけで嫌になってしまうだろうと思うんです。そういう意味でもこの本は、簡潔にポイントを絞って書くことを意識しています。

『落とされない小論文』著者からのメッセージ
全試験共通の「減点基準」がある

 はじめまして。今道琢也と申します。

 私が、『全試験対応! 一発合格! 落とされない小論文』でお伝えしたいのは、必要最低限の知識とスキルで、合格ラインを超える答案を書く、小論文試験の「最短最速合格法」です。

 私は、小論文専門塾の指導者として、これまで膨大な数の答案を見てきました。

 国家公務員試験、地方公務員試験、教員試験、大学・大学院入試などはもちろん、大学の転部・編入試験、マスコミ・一般企業の就職試験、病院採用試験、企業内の昇進試験、研究計画書まで、あらゆる分野に及びます。

 これまで、約2000枚の答案を指導してきました。

 受講生の答案を統計的に分析すると、興味深いことがわかりました。実は、どの答案も同じようなポイントでつまずいており、それは12の要因に絞られたのです。

 これらのミスは、答案に与えるダメージが大きいものばかりです。小論文を書く上で絶対に避けなければいけない重大ミスを、多くの答案が同じように犯し、大幅に減点されているということです。

失敗答案2000本の統計調査でわかった!
全試験共通の「減点基準」ランキング12

【ワースト第1位】問題文の指示に正しく答えていない
【ワースト第2位】「具体的な言葉」で書けていない
【ワースト第3位】「資料」を正しく扱っていない
【ワースト第4位】要約が「本文の切り貼り」になっている
【ワースト第5位】課題文を無視して自分の意見を書く
【ワースト第6位】課題文の趣旨をそのままなぞって書く
【ワースト第7位】ムダな言葉が多い
【ワースト第8位】解答のバランスが悪い
【ワースト第9位】消極的な表現で印象を落とす
【ワースト第10位】話の流れが整理されていない
【ワースト第11位】課題解決型の問題を「一点突破」で押し切る
【ワースト第12位】事前に準備した筋書きやキーワードを書く

 この12のミスを頭に入れた上で答案を書けば、合格答案が書けます。

 逆に言えば、これらを克服せずして、合格答案は絶対に書けないということです。

 私がこれまで指導した中で、史上最高の90点(当塾基準)という得点を出した人がいます。ほとんど手を入れる必要はなかったのですが、あえて言うならば、という意味でいくつか修正点を指摘しました。それは、2位の減点要因に関することでした。逆に、全くできてないものでは30点以下の答案がありました。この場合は1、2、5、7、8、11位などが主な減点要因でした。

 つまり、まったくできていない答案から最高水準の答案まで、ほぼ例外なく、12の減点要因が含まれているということです。ですから、12の要因を意識することが、合格への最短かつ一番確実な道なのです。

 本書では、全項目に文例を入れ、Before→After形式で問題点と改善点を明確にしています。「読んですぐ使える具体性」に徹底的にこだわりました。

 さらに、小論文試験の頻出テーマ18を厳選したうえで、各テーマの背景、原因、課題、今後の対策まで、すぐに答案作成使える「箇条書き」でまとめました。文章スキルと必要最低限の知識を効率的に身につけることで、最短距離で「合格答案」が書けるようになります。

「自分の答案のどこがまずいのか?」
「なぜうまく書けないのか?」
「どうやったら上手くなるのか?」

 本書はそれらの疑問に答え、効率よく合格答案に達する具体策をお教えします。

【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】

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「即効性が高い」という絶賛の声、多数!!

・「ネットでごちゃごちゃ調べるなら、これ買う方が早い」
・「目からウロコの連続。小論文関連でこれ以上のものはないと断言できる」
・「自分の作成した論文のどこが悪いのかが、痛いほどわかった」
・「自分が今まで指導を通じて感じていたもやもやが晴れた」
・「小論文には裏技や点数を飛躍的に上げるテクニックなどは存在しないのだと理解できる」…etc.

『全試験対応!直前でも一発合格! 落とされない小論文』

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今道琢也 著
定価:1650円 発行年月:2018年2月
判型/造本:A5並製、192ページ
ISBN:978-4-478-10435-4
『全試験対応! 直前でも一発合格!落とされない小論文』

★元NHKアナウンサーの超人気講師が、2000本の「失敗答案」から統計的に導いた「全試験共通の減点基準」初公開!
「なぜ、この書き方ではダメなのか?」「どうすれば、良くなるのか?」
Before→After形式で、明確な結論を出します。

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★試験別「超頻出テーマ18」瞬速理解表付!
各試験の頻出テーマを厳選したうえで、各テーマの背景、原因、課題、今後の対策までを「箇条書き」で整理。
一発理解して、すぐに答案作成に使えます。

【目次】
【プロローグ】
最短最速で合格するための本書の使い方
【第1章】10分でわかる! 小論文の超基本
【第2章】before→afterでわかる!「12の重大ミス」と改善策
【第3章】前日でも間に合う! 試験別「頻出テーマ」速習表
【第4章】模範解答例と解答のポイント

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【取り上げられた本】
『全試験対応! 直前でも一発合格! 落とされない小論文』
 今道琢也 著

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<内容紹介>

元NHKアナウンサーの超人気講師が、2000の「残念な答案」から統計的に導いた「12の重大ミス」と改善策を初公開。5分でわかる試験別頻出テーマ解説と活用法で一発合格。公務員、教員、マスコミ&就職、病院採用、昇進、大学・大学院、専門学校まで全試験対応。試験当日でも役立つ、最強の直前対策本!   ————————————————————————————