見出し画像

「“働くこと”からバックれ続けた僕」が見つけた仕事の正体

『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』著者・やしろあずきインタビュー(2)

「逃げちゃダメだ」。上司に強く叱責されたとき、就活がうまくいかないとき、人間関係で悩んでいるとき……人生に訪れるさまざまな辛い局面で、きっと多くの人はそう考えるのではないだろうか。
「逃げる」ことは悪でありダメな人間のやることだと思い込み、真面目で一生懸命な人ほど人生から「逃げる」という選択肢を封印してしまっているかもしれない。
そんな「逃げる=悪」という世間の風潮に一石を投じるのが、巷で“三角コーンの人”などと呼ばれるWeb漫画家・やしろあずき氏の著書『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』だ。
ツイッターフォロワー数は約50万人、月間2000万PVの漫画ブログを運営と、現在ではレジェンド級の記録を叩き出しているやしろ氏だが、好きなことを仕事にしている現在の彼がいるのは、とにかく嫌なこと・苦手なことから「逃げ」続けてきた過去があるからだという。
今回は、「逃げる」コマンドを持たない人が陥りがちな「罠」について、徹底的に語ってもらった。
もしかして、あなたの人生からも「逃げる」コマンド、消えてしまってはいないだろうか? 自身に問いかけながら、読んでみてほしい。
(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

画像1

やしろあずき
WEB漫画家 livedoor公式ブロガーとして月間2000万PVの漫画ブログを運営。 母親に「人に迷惑をかけなければ大概のことはOK」と育てられたため、きわめて自由な大人になる。就活に嫌気がさしてきた頃、たまたま応募したゲーム企画コンテストでベストアマ賞を受賞。それによりゲームプランナーとなるが半年で退社。その後、大手ゲーム会社に転職するが自分の意思に関係なく働かねばならない会社員の働き方が劇的に合わず、仕事の傍ら趣味で続けていたインターネットへの漫画投稿の収益が本業の給料を抜いたことで手応えを感じフリーランスになる。2015年Twitterに投稿した「スタバで見た小学生達の話」がこの年最もリツイートされた日本語アカウントランキング第4位にランクイン。一躍有名になる。以降、様々な連載、企業漫画を執筆しつつ2018年、株式会社グランツアセット執行役員就任。2019年漫画事業・工事用品レンタル事業を法人化し、代表取締役となった。著書に『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』(ダイヤモンド社)がある。
Twitter:@yashi09
ブログ:http://yashiroazuki.blog.jp/

人生は「自分ファースト」でいい

──本のなかで合言葉になっているのは、「自分ファースト」という言葉でしたよね。

やしろあずき(以下、やしろ) 今の世の中、もう少し「自分ファースト」で考えてもいいんじゃないかなと思っています。仕事でも人間関係でもそうですが、真面目に考えすぎて他人を優先した結果、自分を壊してしまうくらいなら、ときには不真面目にサボってガス抜きしたほうがいいんじゃないかなと。

 本当に真面目な人って、マジで仕事中に全然サボらないんですよ。誰よりも早く出社して、誰よりも遅くまで残業してとか、お昼休憩のあいだもずっと仕事してるとか……。

 もちろん、そういう働き方が悪い! と言っているわけではないですよ。嫌なことからも逃げずに一生懸命働く人は素晴らしいと思うんです。今回書いた『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』というタイトルから、もしかしたら「嫌なことがあったらぜ~んぶ逃げちゃえ! なんとかなるっしょ!」みたいな内容を想像する方も多いかもしれないんですが、そういう意図ではなくて。

 ただ、人生の選択肢に「逃げる」コマンドがない人は、手抜きできるタイミングで手抜きするとか、ちょっと疲れたときに不真面目になってみるとかができないんです。そういう生き方を続けていると、必ずいつかどこかで綻びが生じてしまうと思うんですよね。

「逃げる」選択肢を持つことで広がる可能性

──「逃げる」コマンドを持たない人に訪れる「綻び」って、たとえばどんなことでしょう?

やしろ 僕はこの本のなかで散々「嫌なことからは逃げろ」と言い続けてきましたが、「絶対に逃げてはいけない、ここは両脚をマントルくらいまで深くブッ刺して踏ん張らねばならぬ!」という状況は必ずきますよね。人生において、「絶対に逃げてはいけない場面」ってあると思うんです。

 ただ、「逃げる」コマンドを封印してきた真面目な人たちは、いざそういう場面に立たされると、ブツっと糸が切れたかのように、その「本当に逃げてはいけない状況」から逃げてしまう、というのをよく目にします。

 しかも、今後修正のきかない、取り返しのつかない逃げ方をしてしまったりするんですよね。それこそ、「会社のために一生懸命働かなきゃ!」ってブラック企業で追い詰められて、心身を病んでしまう……。とか、取り返しがつかないじゃないですか。

 おそらくそれは、今までうまく「逃げる」コマンドを使えていなくて、精神や体力を消耗し、いざ「絶対にふんばらなきゃいけない局面」がやってきたときに、立ち向かえるような気力が残っていないからだと思うんです。

 だから、何も「なんでもかんでも逃げろ」と言いたいわけじゃないんですよ。普段から「逃げる」コマンドを表示させておくことによって、「もしあそこに逃げられるとしたら、どうなるかな?」と選択肢が広がる。それはイコール、自分の考え方を広げることにも繋がると思うんです。

「とりあえず3年」という言葉の罠

──会社で働いていると、「逃げちゃダメだ」と思って無理してしまう人も多くいますよね。

やしろ たとえば仕事が辛くても、「とりあえず3年」って世間で言われているから、逃げずに頑張らなくちゃ! って思い込んでいる人、たくさんいますよね。でも「とりあえず3年」って誰が言い始めたのかもわからないような価値観を鵜呑みにして、辛くて辞めたいと思っているのに、人生の貴重な3年を我慢するって……。それって無駄な話じゃないですか。

 でも、「いざとなったら逃げられる」と思うと、やりたいことってたくさん出てくるんですよ。「これから逃げたらあれをしてみよう、あ、そういえばあれもやってみたかったんだよな……」とか。

 人生の選択肢に「逃げる」コマンドを表示することによって、思考停止を防ぐことができる。自分に本当に向いているものってなんだろう? 何が好きなんだろう? 何が嫌いなんだろう? と自分の頭で考える力がつく。だからこそ、「逃げる」コマンドを表示させることって大事だと思うんです。

画像2

どのコマンドを使うかは「自分で考える」

──「逃げる」コマンドを表示させるということは、イコール、自分の人生の選択肢を増やそう、ということなのでしょうか?

やしろ 「逃げる」コマンドを表示させましょう、つまりは、「自分の頭で考えましょう」っていうことをいちばん言いたいんですよね。だから、極端な話、僕がこの本のなかで書いたことも、鵜呑みにしてほしくない。盲信してほしくないです。盲信するなら、僕のツイッターのフォロー、外してほしいくらい(笑)。僕はこの本を読んでくれた人の事情を知らないし、ひとりひとりの責任をとることはできない。だから、あくまで、僕の意見も、「やしろさんが言っていることは100%正しい!」じゃなくて、選択肢のひとつに入れておく、くらいにしてほしいですね。

 最近だとオンラインサロンとかによくありがちなケースだと思うんですけど、憧れの人や尊敬している人のアドバイスはまんま受け入れがちな人、いませんか? もちろんいいサロンもたくさんありますけど、宗教的なちょっと危ないサロンとかを見ていると、結局、自分を持っていない人が多いんですよね。思考停止している。「〇〇さんが言うから正しいんだ!」「〇〇さんがこう言ってたからこうしよう!」とか。こうなってしまうと、最終的にはその人の指示やアドバイスがないと何もできない指示待ち人間、操り人形になってしまう。

 そうならないためにも、日頃から「自分の意見」を持ち続けることが大事で。「この人はこう言っているけれど、自分だったらこうするな」って一度ストップしてから考える。もし今、「この人が言うことは絶対!」という人がいるのなら、まずはそこから疑ってみるのがいいかもしれませんね。

 何度も言うように、「絶対に逃げよう!」ということを言いたいわけじゃない。辛くてもしんどくても3年我慢して、その結果成功する人もたくさんいます。でも、それって「そういう人もいるよね」っていうだけなんですよ。その人によるし、会社にもよる。だから、自分の現状や心としっかり向き合って、正しいコマンドを選んでもらえたらな、と思っています。今回の本で言いたかったことも、そういうことです。「選択肢から消えてしまっている『逃げる』というコマンドを表示させ、選択できるようになるまでのお手伝いをする本」なので。

————————————————————————————
【取り上げられた本】
『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』
 
やしろあずき(著)

画像3

<内容紹介>
新卒で入った会社は「トイレ掃除に嫌気がさし」半年で退社。再就職するも会社員の働き方が劇的に合わず、「ネットの漫画収入が本業の給料を上回ったら退職する」と決め、見事達成しフリーランスに。「“不向きなこと”からは徹底的に逃げる」を貫き通し、「大人気WEB漫画家・やしろあずき」となった著者のこれまでとこれからの考え方とは? 真面目すぎて自分を消費している『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』贈る応援本!
————————————————————————————