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【必見】「史上最高に無駄な発明」ベスト3

『考える術』著者・藤原麻里菜インタビュー(3)

SNS総再生数4000万回超!英米やヨーロッパ、中国など海外でも注目され、台湾で開かれた個展には2万5000人もの観客が殺到と、いま最も注目の「鬼才」発明家、藤原麻里菜さん。その「無駄づくり」と称する異色コンテンツは、「いったい、どうやって思いついたのか!?」と思わされる、すさまじくユニークなものばかりだ。
今回、その思考の方法について、初めて公開した新刊『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』を発表。本書には、これまで数百もの作品を発表してきた藤原さんの71に及ぶ「考える術」が詰まっている。
「言葉から考える」「逆を考える」「短時間で考える」「欲から考える」など、その実践的な思考術は、読めば読むほど脳を刺激してくれる。合理性や効率性ばかり重んじて思考が偏っている現代人のアタマを一瞬でやわらかくする無駄なものの魅力と、最高に無駄な発明ベスト3について藤原さんに話を聞いた。(取材・構成/樺山美夏、撮影/柳原美咲)

プロフィール

藤原麻里菜(ふじわら・まりな)
1993年、横浜生まれ。発明家、映像クリエイター、作家。頭の中に浮かんだ不必要な物を何とかつくりあげる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。SNSの総フォロワー数は20万人を超え、動画再生数は4000万回を突破、その人気は中国、アメリカ、ヨーロッパなど海外にも広がっている。2016年、Google主催「YouTubeNextUp」に入賞。2018年、国外での初個展「無用發明展――無中生有的沒有用部屋in台北」を開催、2万5000人以上の来場者を記録した。Awwwards Conference Tokyo 2020、eAT2018 in KANAZAWA、アドテック2016東京・関西などで登壇。「総務省 異能vation 破壊的な挑戦者部門 2019年度」採択。最新刊に『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』がある。

これからは「無駄」が重要になる

―― 藤原さんの本を読んで、合理的なものより無駄なもの、簡単なものより面倒なものがアイディアのきっかけになり人生を豊かにする、という考え方にとても共感しました。

藤原麻里菜(以下、藤原) ありがとうございます。ただ私は、合理性自体は否定してないんです。効率的に何かをやろうとしたり合理的に判断しながら、人類が科学や技術を進化させてきたおかげで、私たちはすごく便利な生活ができるようになりました。その先にあるものが余剰であり、無駄だと思うんです。

 たとえば今後、会社員が一日8時間かけてやる仕事の半分をAIがやるようになったら、余った時間ができますよね。その余剰の時間をいかに生きるかが、これからの人間の課題なんじゃないかなと。

 それと、いま合理的なことばかり考えている人が多い世の中で、私一人ぐらいは非合理的なものをつくらないと世界のバランスがおかしくなりそうなので、この仕事を続けているというところもあります(笑)。正解がないものを楽しみたいという強い気持ちが、自分の中にあるんです。

本人1

―― これまで合理一辺倒でずーっと走ってきて、このコロナ禍で急に立ち止まることになり、人生を考え直している人もいるのではないでしょうか。これからますます非合理的なことの必要性が高まるように思います。

藤原 あと、日々仕事や子育てに追われていると、「次に何をしよう?」ということがすぐ思いつかなかったり、何か始めたくてもじっくり考える余裕がなくなりますよね。

 だから意識的に時間をとって、仕事と全然関係のないことを考えてもらえると、思考が切り替わって人生の次のステップに進む助けになるかもしれません。ふだん考えないようなことを幅広く考えてみるきっかけとして、『考える術』に収録した自由な考え方を使ってもらえるとうれしいです。

―― 私は『考える術』を読んでいる間ずっと笑いが止まらなくて、凝り固まった頭がだいぶほぐれました。せっかくなので、本書から藤原さんが「これぞ史上最高に非合理!」と考える「無駄なアイディアベスト3」をぜひ選んでいただけますか。

第3位:ラーメンの画像をすべてネジにするアプリ

藤原 では、まず第3位を挙げるなら、「ラーメンの画像をすべてネジにするアプリ」ですね。インスタに出てくるラーメンの画像を全部ネジの写真にしてしまうというアプリのアイディアです。

インスタ

インスタ上のラーメンの画像を認識すると、すべてネジに変えてしまう。(『考える術』より)

 このアイディアは、「深夜にラーメンが食べたくなる欲求をどうすれば解消・解決できるか?」と考えて浮かんだものです。

 とくに私の場合、SNSでラーメンの画像を見てしまうことが欲求のトリガーになるので、ラーメンの画像を「おいしそう」とは正反対にある「ネジ」に変換してくれるアプリがあれば、食べたい欲求を抑えられると思ったんです。

 これはまだアイディアだけなんですけど、ぜひ実現したいです。

第2位:イントロクイズ目覚まし時計

―― 第2位はいかがでしょう。

藤原 これもにアイディアを書いただけで、まだつくれていないんですけど、「イントロクイズ目覚まし時計」です。

 これは実際につくったら売れそうだなと思っていて(笑)。設定した時間になると、音楽が鳴って、早押しボタンを押す感じでアラームを止めるというものです。

 押した後に、三択の画面とかが出たら、ちゃんと解答もできますし。起きた瞬間からクイズができて、気持ちよく起きれると思います。

目覚まし

起きる時間になると爆音で音楽がかかり、回答ボタンを押すと止まる。(『考える術』より)

第1位:イヤフォンを絡ませるマシーン

── では、第1位は?

藤原 第1位は「イヤフォンをからませるマシーン」です。

 アイディアって、何かストレスを減らす方向で考えるのがストレートな考え方だと思うんですが、これは「逆にストレスを増やす」という発想で考えたものです。

イヤフォン

マシーンにイヤフォンを入れてスイッチを押すと、マシーンが回転して、ぐちゃぐちゃにからむ。(『考える術』より)

── たしかに純粋かつシンプルに無駄なアイディアですね。

藤原 でもワークショップでこの作品を展示すると、子どもがイヤフォンを持ってきて「ボクのイヤフォンもからませたい」って言ってくるくらい、すごい人気なんです(笑)。実際にマシーンを動かして、イヤフォンをからませてあげるとすごく盛り上がるので、つくって良かったなと思います(下記参照。音が出ます)。

―― 「純粋に無駄なもの」を考えることで、そんなに喜ばれることになるとは面白いですね。

 合理性とは正反対のことを考えていると、そこからまた別の価値が意味や価値が生まれていくということがあるんです。でも、これはもうちょっと改良するつもりです。

── どうされるんですか?

藤原 いまはモーターを使っているので洗濯機みたいな感じなんですけど、歯車でまわしてみたくて。「ピタゴラスイッチ」とか、遊園地でコインを入れたら記念コインに替わって出てくる機械みたいなイメージで、イヤフォンを入れたら機械を通っていってコードが絡まったイヤフォンが出てくるような作品をつくりたいです。

世界を「変なもの」でいっぱいにする

―― ベスト3、ありがとうございます。藤原さんが無駄づくりをはじめて8年ほど経ちますが、いまは一日何時間ほど作品づくりをされているのでしょうか。

藤原 朝6時くらいに起きてご飯を食べて、アトリエに移動して、そこから夜8時くらいまでずっと何かつくったり考えたりしながら作業しています。自分が好きなものやあったらいいなと思うものを考えてつくって、というのを繰り返している時間がほとんどですね。

 無駄づくりをやっていて思うのは、合理性とか効率とか関係のない、本当にどうでもいいことにも価値があるということです。YouTubeでも、ゴミ屋敷の清掃業者の動画がすごい人気だったりしますよね。私もついつい見ちゃうことがあるんですけど、家の中がきれいになっていく過程を見るのは、それだけで本能的に気持ちいいものがあります。

本人2

―― モノを食べて咀嚼するだけの動画とか、朝起きて出勤するまでのルーティン動画の再生数の多さを知ったときは、そういうニーズもあるんだ!とびっくりました。

藤原 そうなんですよね。ですから『考える術』が、いままで見過ごしていた面白いものや、見方を変えれば新しく見えるものに気づくきっかけになればいいなと思っています。

 ワークショップをやると、真面目なビジネス関係の方でも、びっくりするくらい変なことを考えはじめたりするんですよ。みんなの中には、いろんな変なアイディアが眠っていると思うんです。ぜひみんなで変なもの、面白いものをいっぱい誕生させて、もっと楽しい世の中で楽しく生きていけたらなと思っています。

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もっと速く、ユニークに考えるには?
── 著者からのメッセージ

 この『考える術』は、わたしがコンテンツをつくっていくうえで蓄積してきた「アイディアの発想法」をまとめた書籍です。わたしは、無駄なものをつくる「無駄づくり」というコンテンツを2013年から始め、現在までに「インスタ映え台無しマシーン」や「ツイッターで『バーベキュー』とつぶやかれるたびに藁人形に五寸釘が打ち付けられるマシーン」をはじめとする無駄な発明品を200以上つくってきました(下記リンク参照)。

 これを書いているいま現在も、月に5から10の「無駄づくり」をし続けていて、インターネットを通じて視聴者に届けています。すごいのかすごくないのかまったくわからない……いや、おそらく後者ですが、無駄なものを考えるプロだと、自分のことをそう思っています。

思考ワザ

想像力が高まり、思考が柔軟になる

 「無駄なもの」といっても、毎週1、2個以上のアイディアを考え、それを実現し続けるのはけっこう大変なことなのです。誰に頼まれたわけでもないのに週に最低1つは「無駄づくり」をしようと決めているので、アイディアが思いつかない恐怖や、焦燥感みたいなものは人一倍感じてきました。

 そういった経験の中で、速くアイディアを思いつく方法、そしてユニークな考え方をする方法がたまってきました。本書に収録した、そんなさまざまな方法をなぞっていくと、想像力が高まって思考を柔軟にすることができ、それによっていままでとは違う自由な発想でものを考えていくことができるはずです。

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「考えるきっかけ」が満載

 仕事で企画を考えるときや、学校の課題、または、誰からも頼まれていないけれど何かやりたいなあとぼんやり考えるときもあると思います。自分の視点を持ち、ありがちなアイディアから脱却したい ──。本書は、そういった悩みが解決する一冊になっています。

 ものを考えるための「きっかけ」をたくさん詰め込んだので、ぱらぱらとめくって、考えごとをするとっかかりとして使ってくれたらうれしいです。

 いろんなアプローチやきっかけがあればあるほど、そこから分岐して多様なアイディアにたどりつくことができます。実際には使わないアイディアでも、現実離れしていてもいい。まずは、肩の力を抜いて、頭の中で精いっぱいふざけながら、思考の広がりを感じてみてください。

使い方

【新刊のご案内】

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『考える術』 藤原麻里菜=著
定価(本体1500円+税)、ダイヤモンド社

 「何も浮かばない……」とうなるより、本書の好きなページを開いてください。「逆を考える」「好きなことから考える」「欲から考える」「ネットから考える」など、すぐに使えるワザを完全網羅! アメリカ、ヨーロッパ、中国ほか、海外でも話題沸騰の鬼才発明家による「一家に一冊」の思考全書!

【目次】

はじめに ── 誰も考えたことのないことを考える

Chapter 1 「言葉」から考える ── 光速で新しいものを生み出す術

【考える術01】「言葉」から考える
【考える術02】単語を「合体」させる
【考える術03】「使い道」を考える
【考える術04】「どんな?」を考える
【考える術05】「逆」を考える
【考える術06】「ダジャレ」から考える
【考える術07】「主語」を変える
【考える術08】「アウトプットの言葉」を組み合わせる

Chapter 2 「半径1メートル」から考える ── モヤモヤを有効活用する術

【考える術09】「小さな問題」を意識する
【考える術10】「ストレス」から考える
【考える術11】「失敗」から考える
【考える術12】「失敗」を開き直る
【考える術13】「ルール」から考える
【考える術14】「ルール」を守る
【考える術15】「マナー」を守る
【考える術16】「マナー」を破る
【考える術17】「やっちゃダメなこと」をする

Chapter 3 ひねくれて考える ── 視点をさくさく切り替える術

【考える術18】「視点のパターン」を考える
【考える術19】「いまある知識」で解決する
【考える術20】「ふざけた知識」で解決する
【考える術21】無理やり解決する
【考える術22】「五感」を刺激する
【考える術23】「似ているもの」を組み合わせる
【考える術24】開き直る
【考える術25】逆に「ストレス」を増やす
【考える術26】「針」を振り切る
【考える術27】「身近なもの」で考える

Chapter 4 「みんなが知っていること」から考える ── 一人だけ違うことをする術

【考える術28】「みんなが知っていること」から考える
【考える術29】「流行への感情」から考える
【考える術30】「行事」に乗っかる
【考える術31】「行事」の反対を向く
【考える術32】「伝統文化」をアップデートする
【考える術33】「伝統文化」をさらにアップデートする
【考える術34】「あるある」から考える
【考える術35】「細部」を現実的に考える
【考える術36】「ステレオタイプ」を使う
【考える術37】「ステレオタイプ」を逆手に取る

Chapter 5 「自分のこと」から考える ── 心の叫びをかたちにする術

【考える術38】「自分のこと」から考える
【考える術39】「好きなこと」から考える
【考える術40】「欲」から考える
【考える術41】「欲」を深掘りする
【考える術42】「欲求」を最大化させる
【考える術43】「生理的欲求」から考える
【考える術44】「めんどくさい」から考える
【考える術45】「行動を変えずにいられる方法」を考える
【考える術46】「7つの大罪」から考える
【考える術47】「嫌な自分」を見つめる
【考える術48】「ドロドロ」をかわいくする
【考える術49】「巨大な欲望」から考える
【考える術50】「欲望」に打ち勝つ
【考える術51】アイディアを「チェック」する

Chapter 6 「情報」から考える ── 全然考えたことのないことを思いつく術

【考える術52】「情報」から考える
【考える術53】「感情移入」する
【考える術54】「思い出」から考える
【考える術55】「ネット」から考える
【考える術56】「テレビ」から考える

Chapter 7 「感情」から考える ── 自分らしさを全開にする術

【考える術57】「感情のタネ」に気づく
【考える術58】「エピソード」を思い出す
【考える術59】「微妙な感情」を記録する
【考える術60】「無意識」を言葉にする
【考える術61】「モヤモヤ」をつかまえる
【考える術62】「怒り」の落としどころを考える
【考える術63】「嫉妬」から考える
【考える術64】「楽しい感情」に注目する

Chapter 8 「考え方」を考える ── 思考モードに入る術

【考える術65】「考え方」を考える
【考える術66】「短時間」で考える
【考える術67】ぼーっと考える
【考える術68】「邪念」に負けまくる
【考える術69】「だらだら」と「ちゃんと」を交互にする
【考える術70】アイディアを「一覧」にする
【考える術71】つねに「いろんな見方」をする

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【取り上げられた本】
『考える術』
 藤原麻里菜 著

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<内容紹介>

「何も浮かばない……」とうなるより、本書の好きなページを開いてください。「逆を考える」「好きなことから考える」「欲から考える」「ネットから考える」など、すぐに使えるワザを完全網羅! アメリカ、ヨーロッパ、中国ほか、海外でも話題沸騰の「鬼才」発明家による「一家に一冊」の思考全書!

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