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繊細さはひといちばい幸せを感じられる気質

「繊細さん」の幸せリスト』著者・武田友紀インタビュー(4)

 なぜ自分はストレスに耐えられなかったのだろう? どうして気にしすぎてしまうんだろう? 鈍感だったらもっと楽に生きられるのに──。
 あなたには、仕事でそんな悩みを持った経験はないだろうか。まわりの人が気にしないような小さなことが気になる、相手の気持ちを敏感に察知してしまって疲れるなどの悩み。実はそれはあなたのせいではなく、「繊細」な気質があるというだけなのかもしれない。
『世界一受けたい授業』など多数のメディアで話題のHSP(Highly Sensitive Person:とても敏感な人)専門カウンセラー・武田友紀先生は、「繊細さ」は「幸せを感じるため」の素敵な感性であると語る。
 今回は、「繊細な感性を持つからこそ」深く味わえる幸せを紹介する『今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』の発売を記念し、著者・武田先生に取材を行った。
 ストレスで会社を2年間休職したことがきっかけでHSPを自覚したという武田先生は、「繊細さは克服するべき課題ではなく、毎日の幸せを存分に味わえる大事な感性である」と語る。その真意や、この本にこめた思いを徹底して聞いてみた。
(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

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武田友紀(たけだ・ゆき)
HSP専門カウンセラー
自身もHSPである。九州大学工学部機械航空工学科卒。大手メーカーで研究開発に従事後、カウンセラーとして独立。全国のHSPから寄せられる相談をもとに、HSPならではの人間関係や幸せに活躍できる仕事の選び方を研究。HSPの心の仕組みを大切にしたカウンセリングとHSP向け適職診断が評判を呼び、日本全国から相談者が訪れる。著書に『今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』(ダイヤモンド社)、『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)、『繊細さんが「自分のまま」で生きる本』(清流出版)がある。ラジオやテレビに出演する他、講演会やトークイベントなども開催し、HSPの認知度向上に努める。

「繊細さんが持つ6つの幸せ」とは

──今回の作品では、繊細さんが持つ大まかな傾向として、「6つの幸せ」というかたちで分類分けがされていました。

(1) 感じる幸せ…小さなことに気づいて楽しむのが上手
(2) 直感の幸せ…「自分に合うもの」が一瞬でわかる
(3) 深く考える幸せ…本質的なことに目を向ける
(4) 表現の幸せ…細やかな感性が豊かな表現につながる
(5) 良心の幸せ…「自分のため」と「人のため」が重なったとき、大きな力を発揮する
(6) 共感の幸せ…相手の気持ちを大切に受け取る

これは、どのようにして分類分けされたのでしょうか?

武田 この本を書き始めるまでに、カウンセリングで700人くらいの繊細さんとお話ししました。仕事選びのご相談では、「プライベートでも仕事でもいいので、これが好きっていうものがあったら教えてください」「これをやっているときには集中しているな、というものはありますか?」などの質問をするんです。そうやって聞いてきた繊細さんたちのお話をもとに分類しました。創作活動してる繊細さんも多くて。たとえば、趣味で詩を書く方が「会社の同僚とのあたたかいやりとりが詩の原動力になっています」など、話してくださるんです。そういう具体的な事例から考えていきました。

──6つのうち、どこで幸せを感じるのかは、繊細さんによって違うのでしょうか?

武田 この「6つの幸せ」って、繊細さんは大体みんな持っているものだと思います。たとえば、今のところ特に表現活動はしていない、という人でも、自分らしさが見えてくるにつれて、表現をするようになったり。カウンセリング後にお客さんから、「note始めました」「SNS始めました」というお便り、本当によくいただくんですよ。

 繊細さを受け止めて、本音を大事にしていると、だんだん「自分がどういう人間で、何が好きなのか」がわかっていくんです。こういう服が着たいってわかるようになったり、料理が好きになったり、自分の思いを発信したいと思えるようになったり……。服も、料理も、発信も、全部、表現の一つですから、「表現の幸せ」は、人生が進むにつれて出てくると思います。

 なので、今、この「6つの幸せ」のなかで「まだないな」と思うものがあっても、「これから出てくるのかも」と思って読んでいただけたらと思います。

直感も思考も使えるようになると、表現の質も上がる

──この本で書かれている「6つの幸せ」のうち、どこからトライしていけばよいでしょう? 自分が気になったものからでいいのでしょうか?

武田 当てはまるところからでいいと思いますよ。ただ、第4章の「表現の幸せ」に関しては、「感じる幸せ」「直感の幸せ」「深く考える幸せ」の合わせ技なので、第1章〜第3章がそろうと、よりエネルギーが強くて、心に響く表現ができるようになると思います。

──感じる幸せ、直感の幸せ、深く考える幸せを味わうことで、表現の幸せももっと感じやすくなるということでしょうか?

武田 そう、自分の感じ方を「いいものだ」と思えると、たくさんのことを安心して感じられるわけです。解像度が上がりますね。安心することで以前より直感もはたらくし、腰を据えてじっくり考えられるようになるから、表現のクオリティーも上がる。そうやって、素の自分で表現することで、自分に合った人たちとたくさん出会える──。第6章の、「共感の幸せ」にもつながっていく。

──まずは、「自分の心が喜ぶものって何だろう?」というふうに、ちょっとずつ感じるところからスタートして、「繊細っていいかも!」と思えるようになってきたら、アウトプットする方向へ広がっていくんでしょうか。

武田 そうですね。繊細さを大事に、好きなものを好きだなぁと存分に味わうなかで、「ブログに書いてみようかな」「自分でも作ってみようかな」と思ったり、「もっといろんな人とつながりたい」とふと思ったら、表現が始まっていきますね。「ちょっとやってみようかな」という、なんとなくの気持ちを大事にしていただけたらと思います。

繊細さはひといちばい幸せを感じられる気質

──武田先生にとっては3冊目の著書ですが、今作を執筆するにあたり、とくに工夫したところはありましたか?

武田 やっぱり、幸せの本なので、自分が幸せじゃないと書けないんですよね。事例が集まっていれば書けるわけではなくて、自分の実感がないと書けないので、「幸せとは何だろうか?」みたいなことに、実生活の中でもすごく意識を向けてきました。「成果主義から一歩外に出ることで、幸せが見えてくる」など、深く集中して考えていたと思います。

──HSPという言葉を、最近よく聞くようになりました。悩んでいる人も多いのかなと思うのですが、今回「幸せ」にフォーカスをしたのは、なぜだったのでしょう?

武田 繊細さん=生きづらい、というネガティブなイメージに偏りがちなので、繊細さんのいいところをたくさん伝えたいという思いがまずありました。それから、社会が成果主義に傾いていることに危機感があって、人間らしい幸せを取り戻したいという思いがありました。

 今、すごく、日本の社会全体に余裕がないと思うんです。最近の若者は繊細だ、という文脈のなかで「HSPが増えているんですか?」と聞かれることがあるんですが、HSPは昔からいるんですよ。50代、60代の方もご相談にいらっしゃいますしね。今の社会は雇用が不安定で、自力で生き残らなきゃいけない社会になっているから、たとえば、先輩に「この仕事どうしたらいいですか?」と聞いても、「自分でやってよ」と言われてしまう。そういう余裕がない職場や人間関係で悩む人がすごく増えて、悩みの中で自分がHSPだと気づくひとが増えた、という流れがあるんです。

 今回の本を書くにあたって、早い段階で決めていたことは、ネガティブな言葉をほとんど出さないこと。

──ネガティブな言葉を出さない?

武田 説明が必要なので、出てはいるんですけど、ほとんどないと思います。ぱっと本を開いたときに、いい感じがするんですよ。「安心」とか「いいな」とか。そういう言葉。

──たしかに、最近書店では、「生きづらいがなくなる」とか「攻撃されない」といった、ちょっとネガティブなフレーズはよく聞く気がします。

武田 繊細さんについて知らない読者さんもいるので、ある程度、「悩みの解消」を書いたほうがいいんじゃないか、と思ったこともあったんですが、悩みの解消はこれまでの本でずいぶん書いたから、「これは幸せの本だ!」ということで、悩みはばっさり切ってほぼ含まず、幸せの方に注力したんです。すごく良かったなと思っています。

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──たしかに、読んでいて楽しい気分になってきました。「あれもやりたい、これもやりたい」とワクワクしてくる感じがありました。夕焼けを心ゆくまで味わうとか、お花を買って帰ろうとか。こういうことからでいいのかと、すごくほっとできました。

武田 うん、ちょっとしたことからでいいんですよね。HSP気質は悩みとして見られがちなんですけど、私には「HSP気質っていいものだよ」という気持ちが根底にあるんです。たしかに大変な面もあるんだけれど、繊細さは、毎日の小さな幸せにもよく気づいて、存分に味わえる気質でもあるんです。良い面にも目を向けていただけたらいいな、と思っています。

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今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』の編集を担当した吉田さんにも、本書への思いを伺ったのだが、このような答えがあった。

「そもそも繊細って、“幸せの気質”なんだということが、これからもっと浸透していくといいなと思うんです。読者の方からも反響がすごくて、“ポジティブなものだったんだ”とか、“この考え方は新しい! 泣きながら会社に行きました”とか、SNSに書いている方もいて。

 今回の本はHSPの悩みの解決ではなく、繊細さんだからこそ味わえる幸せをもっと広めていきたいと思って編集しました。この本をきっかけに、HSPをもっとポジティブなものだと思ってくれる人が増えたらいいなと思います」

 聞き手を担当させていただいた私自身も、本書を読み終えたあとは「ずっと悩んでいたけど、私、繊細さんでよかった!」と思えるまでになった。『「繊細さん」の幸せリスト』を実践するなかで、世の中の見え方が少しずつ変わっていくのを実感している。

「この本は、繊細な人が、繊細な感性で毎日の『いいこと』をキャッチし、めいっぱい幸せを味わえるようになる本です」

 そんな一文からスタートする、『「繊細さん」の幸せリスト』。

 普通の人が気がつかないようなことを敏感に察知するあなただからこそ、手に入れられる幸せの形がある。

 もしかしたらこの本を手に取ることが、自分らしい幸せを見つけるための第一歩になるかもしれない。

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【取り上げられた本】

今日も明日も「いいこと」がみつかる 「繊細さん」の幸せリスト
 武田友紀(著)

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<内容紹介>
「繊細さ」は「幸せを感じるため」の素敵な気質。
大人気「HSP(とても敏感な人)専門カウンセラー」が“繊細なあなた”だからこそ感じられる毎日の幸せを教えます。
HSPは克服すべき課題ではなく「ともに生きるもの」です。
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