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「自分には何が向いているんだろう?」と思う人に“突然月収500万”になった僕が伝えたいこと

『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』著者・やしろあずきインタビュー(3)

ツイッターフォロワー数は50万人、月間2000万PVの漫画ブログを運営と、レジェンド級の記録を叩き出している売れっ子Web漫画家・やしろあずき氏。現在はインターネットで漫画を更新しつつ、複数の会社役員をつとめるなど、多方面で活躍を見せている。
現在は月収500万円を超えることもあるというやしろ氏の成功法則は……なんと徹底的に「逃げる」こと! 向いていないことや苦手なことから徹底的に逃げ続けてきた結果、漫画家という職業にたどり着いたという。そんな彼の常識破りな人生論が濃縮された1冊『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』が12月9日に発売となった。
これを記念し、今回はやしろ氏に「自分だけの才能」を見つける方法について、聞いてみた。
(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

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やしろあずき
WEB漫画家 livedoor公式ブロガーとして月間2000万PVの漫画ブログを運営。 母親に「人に迷惑をかけなければ大概のことはOK」と育てられたため、きわめて自由な大人になる。就活に嫌気がさしてきた頃、たまたま応募したゲーム企画コンテストでベストアマ賞を受賞。それによりゲームプランナーとなるが半年で退社。その後、大手ゲーム会社に転職するが自分の意思に関係なく働かねばならない会社員の働き方が劇的に合わず、仕事の傍ら趣味で続けていたインターネットへの漫画投稿の収益が本業の給料を抜いたことで手応えを感じフリーランスになる。2015年Twitterに投稿した「スタバで見た小学生達の話」がこの年最もリツイートされた日本語アカウントランキング第4位にランクイン。一躍有名になる。以降、様々な連載、企業漫画を執筆しつつ2018年、株式会社グランツアセット執行役員就任。2019年漫画事業・工事用品レンタル事業を法人化し、代表取締役となった。著書に『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』(ダイヤモンド社)がある。
Twitter:@yashi09
ブログ:http://yashiroazuki.blog.jp/

双方「WIN-WINの形でクビ」になった過去

──「就職したなら、とりあえずキツくても3年は頑張れ」みたいな風潮あるじゃないですか。私も途中で辞めちゃったクチで、「あー逃げちゃったな……私ダメ人間やな……」みたいに落ち込むこと結構あったんですけど。やしろさんは、本のなかで徹底的に「嫌いなこと・苦手なことから逃げる」ことを推奨されていましたよね。

やしろあずき(以下、やしろ) いやー、あんなもんクソ食らえですよ。3年どころか3秒で辞めたっていいと思います。僕なんて、これまでの人生で「不向き」なことからは徹底して逃げ続けてますからね。その結果、自分に一番向いている「漫画家」という職業にたどり着いたんです。

──自分に向いているのは「漫画家だ!」という結論にいたるまで、どういうルートを辿ったんですか?

やしろ 学生時代からとにかく逃げまくってました。まず就活が嫌すぎたんですよね。とくに集団面接が大嫌いで。次は集団面接です、となった瞬間にその会社受けるの辞めたんですよね。

──極端すぎる!

やしろ まあ、就活からは逃げてたんですけど、たまたま応募したゲーム企画コンテストがきっかけでゲーム会社に内定をもらえて、プランナーとして働き始めました。ゲーム制作自体は楽しかったんですけど、「新人は朝早く来てトイレ掃除をしろ!」と言われて。あとは電話番とか、あまり企画の仕事とは関係のないことをやらされて。それで、会社に行かなかったらクビになるかな? と思って行かないでいたら、本当にクビになったんですよ!

──え……? 会社に行かな……え?

やしろ そしたらクビになって、「やったー!」と思って、もう意気揚々と「辞めます」って言ったら、「クビ宣告されて、そんなに笑顔でいられるのお前だけだよ」って言われましたね。というわけで、実にWIN-WINの形でクビになることができました。

──(「WIN-WINの形でクビ」というパワーワードに、言葉を失う取材班)

苦手なことから逃げ続けて漫画家になった

やしろ それから、2社目は大手のゲーム会社「SEGA」に入って、企画の仕事もやらせてもらえて楽しく働いていたんですが、ただ、やっぱり大きな会社組織だと、自分がつくりたいものを100つくることはできないんですよね。チームで動かなくちゃいけないし、プロデューサーも株主もディベロッパーもいる。自分がつくりたいと思うものを思う存分つくれるようになるには、40歳、50歳くらいまで粘って頑張って出世しないといけない。

 あと、僕は壊滅的に会社員に向いていませんでした。朝起きて同じ時間に出社するのがどうしても苦手だったんです。いい会社だったからこそ、ここでダメなら会社員は無理だと思って、フリーランスになることを決めました。副業として漫画を書いたりはしていて、「副業月収がSEGAの月収を上回ったら辞めよう」と思っていたので、そこでふんぎりをつけました。

──さすが! そこはきちんとラインを設けられていたんですね。

やしろ まあ、SEGA時代、最後のほうは仕事全然やらないで会社で漫画描いてたら、給料下げられましたけどね。仕事せずに1日8時間、全力で漫画描いたりしてましたから。でも、正社員の給料が下がったおかげで副業収入がひょいっと上回ったんですよ! それで「よっしゃー超えた!」ってばっと辞めましたね。

──(ふたたび言葉を失う取材班)

やしろ 結局、苦手なことから逃げまくったおかげで今の漫画家という仕事にたどり着いたんですよ。だから、嫌いな仕事をしているのに「せっかく新卒で入ったから……」といって無理に続けて心身を壊している人とかを見ると、「逃げる」コマンドを表示させてみてもいいのになあ、と思うんです。

「辛くない努力」の見つけ方

──嫌なことから逃げ続けた結果、現在は漫画を描いて生計を立てていらっしゃるんですよね。つまり、好きなことが仕事になっている。でも、これまでずっと好きだと思っていたものが、「お金を稼ぐ手段」になったとたん、楽しく思えなくなってしまうってこと、すごくよくあると思うんです。やしろさんの場合は、漫画を書くことが嫌になりませんでしたか?

やしろ 結局のところ、仕事にした瞬間に嫌になったんだったら、それって向いてないと思うんですよね。「頑張らなきゃ」と思った時点で、今まで「努力だ」と思っていなかったものが、「辛い努力」に変わったんだとしたら、もしかしたら本当に向いていることじゃないのかもしれない。

 たとえば僕の場合、もう2年くらい毎日漫画を描いてブログを更新していますけど、「努力している」と思ったことないんですよ。だから、知人から「よくそんなに努力できるね」と言われて、「あー、これって努力だったんだ」ってハッとしたんですよね。自分としては好きなことをただやっているだけのつもりだったので、「努力」と言われてびっくりしたというか。

 だから、「これで稼ぐぞ」というフェイズになったときこそ、本当にそれが大好きで、自分に向いているのかどうかわかる瞬間なんじゃないかなと。もし、「辛い努力」に変わってしまったんだとしたら、それこそ「逃げる」コマンドを発動させてみて、別の選択肢を考えてみる、というのもありだと思うんですよ。もしかしたら、実は好きじゃないことなのかもしれない。だったら、他に好きなものってなんだろう? 向いているものってなんだろう? と向き合うチャンスにもなるかもしれない。

 だから僕も、この本のなかで逃げろ逃げろ、って言いまくってますけど、ただ逃げ続けて現実逃避することを推奨しているわけじゃなくて。嫌なことがあるならずっと寝てりゃーいいよ! ゲームしてればいいよ! なんとかなるっしょ! という話ではない。

 ただ、向いていないことから逃げつつも、自分に向いていることを探す努力はする。「逃げる」コマンドを持つことで、「自分に何が向いているか」を調査する思考回路になっているんだと思います。

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「努力の貯金」ができてさえいれば

──「自分だけの才能」は、どうしたら見つかると思いますか?

やしろ 自分が本当に好きなことを探すのって、人生の課題のひとつだと思うんですよ。それって結局、自分の「才能」を探すことにもつながると思うんです。ふつうの人がやってて嫌いなことをずっと続けられるって、才能ですよね。だからたとえば、会社員をずっと楽しく続けている、それも才能だと思います。

 今は、「フリーランスって自由そうでいいね」とか、「会社を辞めて独立するべき!」とかよく言われてますけど、みんながみんなフリーランスに向いてるわけないじゃないですか。自分は組織で働く、会社員としての才能があるのに、他人のアドバイスに左右されて、フリーランスになって失敗したらもったいないですよね。

 結局のところ、すべては向き不向きでできていると思っています。それを見つけるために、いろいろやってくのが人生じゃないかなと。最終的に自分が、これは超楽しいっていうのを見つけてから、そこをゴールに設定して進んでいく。

 ただ、大事なのは、苦手なものから逃げたとしても、「自分に何が向いているか」を見つける努力は怠らないこと。何が向いているかを探すそれぞれの局面で「努力の貯金」ができていれば、それを応用しながら、また好きで夢中になれる新しいことにチャレンジしても、うまくやっていけるかもしれない。今やっていることが楽しくなくなったとしても、別の可能性を広げることができますよね。

「逃げる」コマンドを表示させる生き方というのは、結局、「いつでも逃げられるようにリスクヘッジしておく」ということなんですよ。今立っている場所が危なくなっても、自分にはまだこれがあるから大丈夫。そうやって、常に自分の人生の選択肢を増やしていく。僕だって、いつまでも今の生活が続けられるかはわかりません。でも、いざピンチになったときに「ヤバい!」とならないように、工夫しているわけです。まあでも、たとえばTwitterが突然サービス終了とかしたら、確実に泣きますけどね。

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【取り上げられた本】
『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』
 やしろあずき(著)

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<内容紹介>
新卒で入った会社は「トイレ掃除に嫌気がさし」半年で退社。再就職するも会社員の働き方が劇的に合わず、「ネットの漫画収入が本業の給料を上回ったら退職する」と決め、見事達成しフリーランスに。「“不向きなこと”からは徹底的に逃げる」を貫き通し、「大人気WEB漫画家・やしろあずき」となった著者のこれまでとこれからの考え方とは? 真面目すぎて自分を消費している『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』贈る応援本!
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