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HSP専門カウンセラーが語る「繊細さんの幸せの鍵」とは

「繊細さん」の幸せリスト』著者・武田友紀インタビュー(3)

 なぜ自分はストレスに耐えられなかったのだろう? どうして気にしすぎてしまうんだろう? 鈍感だったらもっと楽に生きられるのに──。
 あなたには、仕事でそんな悩みを持った経験はないだろうか。まわりの人が気にしないような小さなことが気になる、相手の気持ちを敏感に察知してしまって疲れるなどの悩み。実はそれはあなたのせいではなく、「繊細」な気質があるというだけなのかもしれない。
『世界一受けたい授業』など多数のメディアで話題のHSP(Highly Sensitive Person:とても敏感な人)専門カウンセラー・武田友紀先生は、「繊細さ」は「幸せを感じるため」の素敵な感性であると語る。
 今回は、「繊細な感性を持つからこそ」深く味わえる幸せを紹介する『今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』の発売を記念し、著者・武田先生に取材を行った。
 ストレスで会社を2年間休職したことがきっかけでHSPを自覚したという武田先生は、「繊細さは克服するべき課題ではなく、毎日の幸せを存分に味わえる大事な感性である」と語る。その真意や、この本にこめた思いを徹底して聞いてみた。
(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

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武田友紀(たけだ・ゆき)
HSP専門カウンセラー。自身もHSPである。九州大学工学部機械航空工学科卒。大手メーカーで研究開発に従事後、カウンセラーとして独立。全国のHSPから寄せられる相談をもとに、HSPならではの人間関係や幸せに活躍できる仕事の選び方を研究。HSPの心の仕組みを大切にしたカウンセリングとHSP向け適職診断が評判を呼び、日本全国から相談者が訪れる。著書に『今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』(ダイヤモンド社)、『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)、『繊細さんが「自分のまま」で生きる本』(清流出版)がある。ラジオやテレビに出演する他、講演会やトークイベントなども開催し、HSPの認知度向上に努める。

「繊細さん」と「神経質」は違う

──私自身も「繊細さん」だと思うのですが、「繊細さを大切にしたい。けれども、細かいことを気にしない人でありたい」という矛盾した感情にいつも悩まされています。そんなとき、どのように心を整えていったらいいと思いますか?

武田 細かいことが気になるといっても、自然体で気になるときと、不安から気になるときの2パターンがあるんです。自分がどちらなのか、まずは見極めたほうがいいかもしれません。

「もっとこうしたら良くなる」とパッとわかったり、周りの人の感情が、目の前のコップが見えるかのようにわかってしまうというのは、繊細さんにとっては自然なことなんです。自然に目に入るものを「気にしないようにしよう」とするのは、目の前のコップを視界から消そうとするようなもので、自分にとって不自然な行為ですよね。でも、「本当は気にしたくないんだけど、間違ったらどうしようと不安に思うから気になる」ということであれば、それは繊細だからじゃなく、神経質になってしまっているのかもしれません。

──なるほど、「繊細さん」と「神経質」はまた別物なんですね。

武田 はい、別物です。繊細さんかどうかにかかわらず、神経質という状態は起こります。非・繊細さんのなかにも神経質な人はいますよ。もちろん繊細さんのなかにも、神経質な人はいますが、そうでない人もいる。「神経質」というのは、気質そのものではなくて、不安な状況から身を守ろうとして出てくるものです。

 安心できない環境で育つと、自分を否定されたり、守ってくれる人がいなかったりして、どうにか自分で自分を守らなくてはならない。「細かくチェックしないと、あとで怖いことが起こるかもしれない。間違ったら大変なことになる!」といった強い不安から、神経質な状態が生まれます。だから、小さなことが気になる時は、それが自然体で気づいているのか、それとも不安からくる神経質さなのか、見極めたほうがいいですね。

──見極める方法は、何かあるのでしょうか?

武田 自分で判別したい場合は、そこに不安があるのかどうかがひとつの手がかりです。家族に問題があったとか、大きな失恋をしたとか、不安の原因として過去に心当たりがあるかどうかですね。神経質さには、親子関係や学校でいじめを受けた経験など、育った環境が影響していることが多いが印象があります。カウンセリングなどで「怖かった」「嫌だった」という幼いころの気持ちを出せるようになると、解消につながります。

 ただ、自分一人で見分けるのはすごく難しいので、カウンセリングを利用するかどうかは「困り度」を目安にするといいかもしれません。日常生活がすごくつらいとか、どんな職場に行ってもつらくなって辞めてしまうという場合は、おそらく、繊細な気質だけが原因ではないと思います。過去のトラウマがあるなど、心理的な要因が他にある可能性があるので、専門家にカウンセリングを受けることで解決の糸口がみつかりやすいと思います。
もし「気にしちゃうときもあるけど、まあ別にいいかな」と思える程度ならば問題ではないので、しんどさで判断したらいいと思います。

 繊細さにまつわる困りごとが楽になることで、結果的に親子関係などにも向き合えるようになることもありますから、まずは繊細さの悩みについては対処法を試してみて、それでも解決しなかったらカウンセリングに行ってみるなど、順を追って考えてみるのも良いと思います。

HSP専門カウンセラーになった理由

──武田先生も、ストレスで2年間会社を休職されていたときにHSPについて知り、繊細な気質を活かせるようになった、と伺いました。どのような経緯でHSP専門カウンセラーになられたのでしょうか。

武田 休職後に復職したのですが、これ以上この会社にいても自分を生かせる場がないなと思って、退職を決めました。当初は、絵の仕事を中心にフリーランスでやっていこうと思っていたんですが、お客さんに相談されることがあって。私自身がコーチングを何年も受けていたので、質問の方法や間合いなどが身についていたこともあり、自分にも相談業ができるのかなと思って、ブログに「ご相談受けます」と書いたら、お客さんが来るようになったんです。

──最初からカウンセラーになろうと思っていたわけではなかったんですね。

武田 当時のブログには「河原に寝っ転がって気持ちいい」とプライベートの出来事を書いたり、絵本のような水彩画を載せたりと、繊細さをそのまま出していたので、読者さんが軒並み繊細な人たちだったんです。その当時、2014年ではHSPもまだ知られていなくて、ハッシュタグもない時代だった。ぽつぽつと繊細な人とつながり始めたけど、ほかの繊細さんたちがどこにいるのか全くわからなかったんです。それで「自分が繊細さんだと思う方は、ブログのURLを教えてください。リンク集を作ります」とブログで呼びかけたら半年で150人くらい集まって、「こんなにいるんだ!」とびっくりしました。

 その後、「繊細の森」というHSPに特化したホームページを立ち上げてHSPの人間関係や仕事について発信を始め、全国からご相談が来るようになりました。情報がないなかで、繊細さんの人間関係や仕事がどうすればラクになるのか、当事者研究に近い形でノウハウを蓄積していきました。本を書くようになったのも、ホームページを見た編集者さんから「本を出しませんか」というお話が来たのがきっかけです。

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繊細さんの幸せの鍵は、直感を手がかりにすること

──武田先生ご自身は、これまで、どのように仕事の方向性を決めてきたのでしょうか。

武田 もともと計画を細かく立てるのはそんなに得意じゃないということもあって、そのときどきでやりたいことは変わっていますが、「その時々の自分の本音を大事にする」という進み方ですね。独立当初は絵の仕事をやっていこうと思ったんですけど、相談業をやってみたら、すごく面白くて。繊細な人と話すのは、自分にとっても、ものすごく力になることだった。カウンセリングしながら、私も力をもらっていました。

「繊細さん」の幸せリスト』の第2章「直感の幸せ」でも書いたんですが、直感を手がかりに行動していますね。私の場合は、こうなりたいという姿から逆算して進むのではなく、直感をもとに今目の前にある選択肢をいくつかやってみて、実際にやったもののなかで、「好き」「おもしろい」と思ったほうをどんどんやっていく。「いい感じ」をたどっていく進み方です。

 私は、何か目指して進むというよりも「こっちがいいな」と直感でわかるんです。「ピンとくる」だけじゃなくて、体感も使います。

 たとえば、「目の前が明るくなる」という言葉がありますよね。比喩ではなく、本当にそう感じることがあるんです。以前、やりたいことを迷っていたとき、友人が「それ、いいと思う。似合う」と言ってくれて、その時に、ふっと電気がついたように周りの明るさが変わって見えたんです。「明るくなったってことは、こっちでいいんだな」と判断しました。他にも、引き受けようかと迷っていた仕事を断ったら、肩凝りがすっとなくなって「この仕事、相当イヤだったんだな」とわかるとか。心と体はつながっているので、本音がわからないときは体の状態をみるんです。

「繊細さ」っていいものなんだな、と思えてくると、体の状態もちゃんと感じ取れるようになって体感を使えるんですよ。人生の方向もはっきりわかってきますね。

──たしかに、大人になればなるほど、いろいろなしがらみにとらわれて、直感も鈍くなってきた気がします。

武田 カウンセリングの帰り道に電車の広告の色が鮮やかに見えて、「自分、色が好きだったんだな」と思い出したとか、鳥の声が聞こえるようになったとか……。カウンセリング後に体の感覚が変わったとお便りいただくこともあります。「繊細って悪いことじゃないんだ」と知って、本音を大切に自分のいる場所や人間関係を選んでいくと、「いろんなことに気付く」という気質は、悩みや問題ではなくなっていくんだと思います

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 今回、『今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』の編集を担当した吉田さんにも、本書への思いを伺ったのだが、このような答えがあった。

「そもそも繊細って、“幸せの気質”なんだということが、これからもっと浸透していくといいなと思うんです。読者の方からも反響がすごくて、“ポジティブなものだったんだ”とか、“この考え方は新しい! 泣きながら会社に行きました”とか、SNSに書いている方もいて。

 今回の本はHSPの悩みの解決ではなく、繊細さんだからこそ味わえる幸せをもっと広めていきたいと思って編集しました。この本をきっかけに、HSPをもっとポジティブなものだと思ってくれる人が増えたらいいなと思います」

 聞き手を担当させていただいた私自身も、本書を読み終えたあとは、「ずっと悩んでいたけど、私、繊細さんでよかった!」と思えるまでになった。『「繊細さん」の幸せリスト』を実践するなかで、世の中の見え方が少しずつ変わっていくのを実感している。

「この本は、繊細な人が、繊細な感性で毎日の『いいこと』をキャッチし、めいっぱい幸せを味わえるようになる本です」

 そんな一文からスタートする、『「繊細さん」の幸せリスト』。

 普通の人が気がつかないようなことを敏感に察知するあなただからこそ、手に入れられる幸せの形がある。

 もしかしたらこの本を手に取ることが、自分らしい幸せを見つけるための第一歩になるかもしれない。

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【取り上げられた本】

今日も明日も「いいこと」がみつかる 「繊細さん」の幸せリスト
 武田友紀(著)

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<内容紹介>
「繊細さ」は「幸せを感じるため」の素敵な気質。
大人気「HSP(とても敏感な人)専門カウンセラー」が“繊細なあなた”だからこそ感じられる毎日の幸せを教えます。
HSPは克服すべき課題ではなく「ともに生きるもの」です。――――――――――――――――――――――――――――