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古くて新しくて普遍的な「富山の薬売り」のビジネスモデル

今日は、古くて新しく普遍的な「富山の薬売り」ビジネスモデルという話をします。今でこそ「富山の薬売り」は、薬事法や時代の変化で廃れつつあるものの、根本的な商いの考え方としては十分今後も通用する考え方と思います。

商道徳的や倫理的な話は聞いたことがあるでしょうが、実際的な彼らの商いについては、海外の流行のマーケティングばかりでなく、「温故知新」の日本の商いについて、もっと深く学び、実践する必要があると考える一人です。

富山の薬売りは、江戸中期、災害、飢饉頻発による貧困から藩を救うため、売薬を藩の主要産業に育成し売薬行商人たちを全国の諸藩に営業させる富山藩の政策から始まったという。営業先は、日本全国。戦前は北は樺太から南は台湾、東は満州まで東西南北幅広い。、特に医師不在の辺鄙な村落や集落では1980年代も薬行商人が巡っていました。自分も80年代に富山の薬売りさんがいらしていた記憶があります。

「置き薬」販売の先進性は、主に3つあります。

1、徹底した相手先信頼「先用後利」(Use First, Pay After)
2、顧客管理の「懸場帳」
3、「くすりを売るより先に人間を売れ。顧客は人間を見てくすりの信用、イメージをつくる」医師よりも信頼された方もおられたほど親身な応対と専門知識

このビジネスモデルやマーケティングは先進的で、米国でも注目されて取り上げられたことがあります。

例えば、「ダイレクトマーケティングの父」と言われるレスター・ワンダーマンさん。

優れたダイレクトマーケティングプログラムを次々と開発し実践したマーケッターです。Book-of-the-month やコロンビアファミリークラブのマーケティングプログラムを開発、アメックスの法人カード会員の立ち上げなどクラブビジネスを指揮されました。日本でも電通と合弁企業「電通ワンダーマン」を作り、ダイレクト・マーケティングを世界に拡げることに大きく貢献されました。何を隠そう(隠してないが)、僕も電通ワンダーマンに在籍したことがあり、世界一出来の悪い弟子の一人?でございます。

ワンダーマンさんご本人とはお会いできなかったのですが、「Being Direct」から学び、諸先輩方や現場のクライアント様や広告現場を通じて参考にさせてもらったことを思い出します。

彼は来日時、日本の「置き薬」ビジネスを聞き、非常に感銘を受け、講義をもっていたNYU(ニューヨーク大学)やちょっとしたスピーチでも話されたと聞いたことがあります。

また、後述するサブスクビジネスを行う経営者がこの「薬売り」の商いを参考にした、という方もおられたようです。

富山の置き薬販売のビジネスモデルがいかに先進性があるか、ワンダーマンさんが指摘したポイントは、

1、徹底した1-to-1マーケティング: 顧客とその家族・知人などの抱える健康上の悩み、課題に向き合う。

2、CRM(ワンダーマン氏が来日した当時はCRMでなくデータベースマーケティングと言っていた)の実施:ヒアリングした顧客管理台帳やメモに記録し、半年ごとに訪問するたびに、健康データを加えていくこと。そして、この顧客台帳は、代々商人に引き継がれていく財産として、大事にされていました。今でいう、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)を行っていた。

3、ロイヤリティマーケティング:継続的取引のために、顧客の信頼を高めるための「先に使って後払い」の代金回収。紙風船や人生教訓を記した手ぬぐいを景品(オファー)に利用

などがあります。

さらにこの「置き薬」のビジネスモデルが「信頼」「長期的な関係構築」という意味から3つの点で注目されています。


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