【映像業界最前線】DHU卒・気鋭の映像クリエイターたちが語る、イマドキの仕事観
さまざまなフィールドで活躍しているデジタルハリウッド大学(DHU)の卒業生。
その中でも、佐藤 海里(さとう かいり)さんと伊藤 聖也(いとう せいや)さんは、気鋭の映像クリエイターとして「映像作家100人」に選ばれました。
▼佐藤さん監督作品
▼伊藤さん監督作品
現在は株式会社カヤックに所属しながら、副業として映像ディレクターの仕事もしている佐藤さんと、フリーランスとして実写やグラフィックなど幅広い映像作品を手掛けている伊藤さん。ふたりの職場は異なりますが、先輩である佐藤さんと後輩の伊藤さんは卒業生同士という繋がりから、同じプロジェクトで協働しているそうです。
もともと、ふたりがクリエイターとしてビジネスの現場に立てるようになったのは、DHUでの繋がりがきっかけだったとのこと。
今回のnoteでは、将来の映像界を引っ張るであろうおふたりが、在学中に仕事を得た方法、卒業後の進路などについて聞きました。
「クリエイターとして働く」が憧れだったDHU時代
——「映像作家100人」に選ばれたおふたりなだけあり、学生時代から映像を中心に学んでいたのでしょうか?
佐藤:いえ、最初は3DCGを勉強していて途中から映像制作の方に切り替えたんです。1年生のときからMayaというソフトを扱っていたのですが、僕にとっては難しくて.....(笑)。
高校時代に友だちと遊び半分で映像を作った思い出もあったので、自分にとって何が楽しいかを優先して、映像制作に関することを重点的に学ぶようになりました。
伊藤:僕も佐藤さんと同じで3DCGを学んでいて、ピクサーを参考にしたアニメーションを作っていました。
ただキャラクターを動かしている中で、映像そのもののストーリーやカメラワークを考えている時間が楽しくなって、CGのデザインよりも作品全体の監督をする方に興味が湧いてきたんです。
一学部一学科で専攻を絞らないので、学びの方向を途中でシフトチェンジできたのはDHUならではだと思いますね。
——おふたりとも在学中に学習分野を切り替えたんですね。大学時代に目標とするクリエイターはいましたか?
佐藤:明確にこの人っていうのはなくて、「有名になりたい」「売れたい」くらいしか考えてなかったかな.....(笑)。
でも「映像作家100人」には、いつか選ばれてみたいって思ってました!知っているクリエイターとか企業が選ばれている媒体っていうのは認識していたので、100人のうちのひとりになれば間違いないって考えていましたね。
学生時代に目標にしていたことだったので、社会人になってからも応募していたんです。その結果、チームの作品と個人の作品両方が選ばれたので嬉しかったですね。
伊藤:箔がつくからと「映像作家100人」に選出されたことをプロフィールに書いている人はいますよね。僕もこの人のようになりたいって目標はなかったんですけど、同級生とか先輩が働きながら授業にも出席していたので、「働く」ことそのものには憧れがありました。「案件が〜」って、当時言いたくなかったですか?
佐藤:わかる(笑)。「案件の納期がギリギリで、授業に遅れた」って言いたい時期があった。1、2年生のころはどんなことでもいいからクリエイターとして働きたい願望があったし、実際に働いている先輩はかっこよかったもんね。
業界内で知り合いを増やしたい、そのスタンスで仕事が増えるように
——「働く」に憧れがあったんですね。実際に、DHUに通いながら映像制作のお仕事をすることもありましたか?
伊藤:そうですね。知り合いから頼まれたPV制作とか、タクシーで流れている広告とか、いろんな人に頼んで仕事をもらって、忙しい学生生活を送っていました。
紹介ベースで徐々に大きい仕事も増えてきて、フリーランスとして生計が成り立つようになりました。やっぱり人の紹介が大きいですよね。メールで営業しても、あまり返信が来ないから。
佐藤:そうだね〜、営業とかはそんなにしなかったな。
伊藤:メールの文章を頑張って推敲して、文末は「。」の方が正しいかな、でも「!」の方が熱意が伝わるかも、みたいに悩んだりもして(笑)。でも返信は来ないんですよね。
佐藤:メンタル鍛えられるよね。僕も学生時代から紹介で仕事をもらっていました。最初はDHUの先生から振っていただいていて、ライブの演出の一部とかWeb広告にモーションを入れる仕事とかをしていました。
学生でも現場で普通に仕事をしていましたし、社会人として学生をやっている感覚でした。その現場での繋がりからいろんな人を紹介いただいて、仕事の幅が広がっていったんです。
就職のきっかけも、友だちが「うちの会社に遊びにおいでよ」って誘ってくれたこと。会社見学のつもりでしたが、居心地が良くて気づけば卒業後には正社員として働くことが決まっていました。
——エントリーシートを送って面接するような、一般的な就職活動とはちょっと違うんですね。
伊藤:僕たちはそうでしたね。映像業界との繋がりが欲しかったので、とにかく知り合いを増やそうって意識を持っていた学生時代だったかな。だから逆に、ESの書き方とかは知らない(笑)。
佐藤:うんうん。業界内で繋がって、つてを増やすみたいな意識は確かにあった。飲み会とか知らない人が集まるイベントは断らなかったよね。
「売れたい」というハングリー精神が強すぎて、仕事を引き受けすぎてしまうことも
——DHU卒業後、佐藤さんはカヤックの社員として働きながら副業を、伊藤さんはフリーランスでお仕事をされていますが、学生時代と比較してどんなことが違いますか?
佐藤:やっぱり仕事の規模が大きくなったり、ディレクターという立場にもなって責任が増えましたね。学生のころは大人が発案した企画を請け負う形でしたが、今は企画の発起人として納品までを行っているので、立場はかなり変わりました。
伊藤:僕も佐藤さんと同じで、携わる仕事の規模感は学生時代と全然違いますね。それによってスケジュール管理がうまくいかず、作品のクオリティにも影響が出てしまってお客さんに迷惑をかけてしまうこともありました。
佐藤:つらくて落ち込んじゃうよね。
伊藤:申し訳なくてつらいですね。佐藤さんは失敗とかありませんか?
佐藤:最近は減ったけど、社会人なりたての時期はよくあったかな。たとえば本業と副業をダブルブッキングしてしまって、忙しすぎてどっちも手につかないとか。めちゃめちゃ迷惑をかけてしまいました。
伊藤:うわあ、聞いているだけで胃が痛い。でも、いろんな仕事をやりたくなっちゃうんですよね。
佐藤:そう!特にネームバリューがあるところだと「チャンス!」と思って手をあげちゃう。数年前までは断るという選択肢がなかったんですよね。
ただ、今は本業を優先して余裕があれば副業の案件を引き受ける。難しそうなら提示された納期を延ばしてもらうか、依頼をお断りする。きちんと判断できるようになってからは、わりと健康的に働けています。
——伊藤さんは先ほどお話いただいた失敗から、どのように乗り越えましたか?
伊藤:佐藤さんと同じで、担当する案件を減らすのは大事ですね。同時進行しているものが多くなりすぎると、それぞれのクオリティが落ちてしまう。それは誰も幸せにならないですよね。
経験を積むと自分のキャパシティがわかってくるし、制作を引き受ける段階で工数を見積もることができたり、難易度の高そうな案件を察知できたり。改めて仕事との向き合い方を捉え直すことができています。
これからは「これぞ自分の作品だという代表作を作りたい」「仲間を増やして仕事の規模を大きくしたい」
——これまで数々の作品制作に携わってきたと思いますが、今後のことについて考えていることはありますか。
伊藤:制作を任せていただけるクライアントごとにもちろん色はあるんですけど、その中でも「あれは伊藤の作品らしいな」とわかってもらえるほど、自分の色を見つけたいとは思っています。やっぱり映像作家として突き抜けている人は、その人ならではの持ち味があると思うんです。
佐藤:それはすごいわかる。これぞ自分の作品だっていうのがまだ無いんですよね。代表作を作りたい。
伊藤:あとはチームメイトを増やしたいです。今は作り手もやりつつディレクションもやっているので、作業部分をメンバーに任せて、よりサイズの大きい仕事ができるチームを作りたいと思っています。
先日あるアーティストのライブ用の映像を作る際に、DHUの同級生とたまたま同じ現場に集まって仕事をすることがあったんです。
懐かしい面々と仕事をするのがこんなに楽しいんだって思って。遊びの延長線のように、仕事を楽しめるような仲間を増やしていきたいですね。
佐藤:それで言うと、僕は伊藤くんほど目標みたいなのはなくて。身体が壊れるほどは頑張りすぎず自然体で、仕事も遊びも適度に楽しんでいければと思っています。
——最後に、将来映像クリエイターとして活躍したい方や、「映像作家100人」に選ばれたいと考えている学生へ向けてメッセージをお願いします。
佐藤:いろんな作品に触れた方がいいかなと思っています。映画を見に行ったり本を読んだり美術館に出かけたり、なんでも雑食で。何がいつ活きてくるかはわからないので、心が動いた作品をマネて、そこから自分のものにしていくと将来の可能性に繋がると思います。
伊藤:僕もバラエティ豊かな作品を吸収したり、仕事に限らず恋愛や友だちとのケンカなどいろんな経験を積んだほうがいいと思います。
その経験を積み重ねることによって、「自分はこのときこんな気持ちになるんだ」と内省する材料が増えるので、それを作品に昇華できるんです。いろんな経験をしてたくさん作品を生み出すことでしか、成長はできないと思っています。
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