「近未来教育フォーラム2023」アフターレポート〜AIとの対話は終わらない
2023年11月18日、デジタルハリウッドは「近未来教育フォーラム2023」を開催しました。
2010年から13年連続開催している本イベントでは、デジタルハリウッドがいま最も関心を持っていることを、その年のテーマに掲げています。
今年度のテーマは「Conversation with AI」。近年目覚ましい進化を続ける生成系AIを中心に、人工知能やビッグデータに精通した専門家による対話を通じて、教育の未来について議論を深めた1日となりました。
対面とオンラインで開催され、教育関係や企業の方々を中心に300名以上が参加。多くの反響をいただき、ありがとうございました!
当日の詳しい内容は、公式サイトにてイベントレポートを公開しています。当日参加できなかった方も、ぜひ以下をご覧いただければ幸いです。
このnoteでは、基調対談の登壇者2名のアフタートークをお届けします。今回の率直な感想をお聞きしたところ、話は意外な方向に展開…!? ぜひ番外編としてお楽しみください。
(取材: 桂 亜沙美 撮影:棚田 瑛葵)
AIに対する不安を取り除く「DaiyaGPT」
ーーご登壇ありがとうございました!本日の感想を教えてください。
尾原和啓さん(以下、尾原):
今回印象的だったのは、ライトニングトークのコーナーです。デジタルハリウッド大学の教員4名がAIに関する取り組みについて5分ずつ発表されたのですが、その様子がとにかく楽しそうでした。
通常、AIをテーマに話をする時は「8割の人が持っているAIに対する不安・恐怖」を取り除くところから始めなければいけません。ところが、ここでは教員陣が学生よりも先に遊びながらAIの研究を進めています。楽しんでいる状態を前提として「ここから裾野を広げていくにはどうするか?」という話に展開できたことは良かったですね。
尾原:
もう一つ良かったことは、横にいてくれる“DaiyaGPT”の存在です。私が何を話しても、隣の橋本大也先生が具体的な事例を紹介するスライドを出してフォローしてくださいました。
途中から僕はGPTにプロンプトを打つ役割なんだなということがわかり、これこそがAI時代のセッションのあり方なんじゃないかなと思いました。
ーーお二人は旧知の仲と伺っていますが、見事な役割分担でした。橋本先生、事例のスライドは何枚ほどお持ちいただいたのですか?
橋本(以下、橋本):
150枚くらいです。このくらいあれば話の流れで出せるかなと思って、持ってきていました。
ーー150枚!まさに「DaiyaGPT」ですね。そんな橋本先生ですが本イベントは2014年の「Life in Data」以来、約10年ぶりの登壇でした。
橋本:
10年前はデータサイエンティストという職業を提言しました。当時はプログラムなど学ぶべきものが明確でしたが、今回はそれがわかりにくかったと質問にもありましたね。これからの時代、どういう順番で何を学んだらいいのか。積み木の積み上げ方がわかりにくいことが課題だと思いました。
教育の次なる可能性は「AIから学ぶこと」
橋本:
もう一つ感じた課題は、デジタルハリウッドの学生を見ていると、ChatGPTに比べて「お絵かきAI」に対する懸念が相当高いということです。自分の画風を盗まれてしまい、自分の役割がなくなってしまうという不安なのだと思いますが、ここにどう対応していくかと考えています。
尾原:
この辺りを話し始めると、基調対談の続編になりますよ(笑)。少しだけお話しすると、お絵描きAIのDiffusionモデルは連続型であるのに対して、ChatGPTのテキストモデルは離散型なので“揺れ”が少ないんですよね。Diffusionモデルはもともと乱数で、散らしてから再構築するので揺れるんですよ。解釈性に幅があるから揺れてもOK。それがクリエイティビティにつながっています。
AIに自分の画風を盗まれてしまうなら、逆に「自分の画風のフィルターファイル」を作って、そこから自分が学び直すのが良いのではないでしょうか。自分のコピーロボットと戦い続けるから強くなれるし、自分流が作れる。その方向に可能性を感じました。
AIの使い方は「正解+ズレ」を楽しむ
橋本:
私は最近、英語のライティング能力が上がっていることを感じています。日本語で書いた文章をChatGPTに翻訳させて自分で読むと勉強になるんです。AIからも学んでいく方向性はありですね。
尾原:
多くの人はAIに正解を求めますが、AIは「正解+ズレ」を楽しむことが大事だと思っています。私はChatGPTに答えを出してもらった後、いつも「3つバリエーションを出してください。そして、それぞれを出した理由を説明してください」というインストラクションを入れています。
そうすると「フォーマルな文章にしてみました」とか「カジュアルにしてみました」とか、いろいろなズレを提案してくれてるんです。こんな豊かなずらし方があるんだ!とAIから気づかされますね。
橋本:
確かに、自分で書いた日本語をそのままAIに英訳させるとトーンが生まれますね。辞書を引きながら翻訳していくと不自然になります。
尾原:
AIでそのまま翻訳すると当たり前の文章になりますが、ズレを楽しんでいくと個性が生まれます。「どのズレとズレを選択するかの合計値」が、自分自身の個性です。こうしてズレを選択できるようになることは、すごく面白いなと思いました。
橋本:
面白いですね。あと今回はプログラムについての話はできませんでしたが、また機会があれば対談のテーマにできればと思います。
尾原:
ぜひ「続編」として話していきたいですね!
“遊ぶように学ぶ人”のそばで、AIを使っていこう
ーー最後に、読者の皆様に向けてメッセージをお願いします。
尾原:
あらためて感じたことは、変化の時代においては「遊ぶように学ぶ人」のそばにいることが大事だということです。
正解を学ぶのではなく、試行錯誤そのものを学ぶ。試行錯誤の中に“遊び”を入れることで、それ自体が次の正解に変わっていく。そのようなプロセスを楽しむことが、これからの時代に重要な感覚ではないでしょうか。その意味でデジタルハリウッド大学は稀有な環境だと思います。これだけ“変態”な教員が集まっているのですから(笑)。
橋本:
AIの分野は、まだ始まったばかりで研究者が少ないです。その人たちでさえ、AIの“活用のプロ”ではありません。ですから私たちが実世界でAIをどんどん使っていくことが大事ではないでしょうか。
おわりに
最後までお読みいただき、ありがとうございました。アフタートークの域を超えた、白熱した番外編を展開していただきました!
当日の詳しい内容は、公式サイトにてイベントレポートとして公開しています。お二人のお話に興味を持たれた方は、ぜひ以下をご覧いただきAIについての学びを深めていただければと思います。
デジタルハリウッド、そしてDHUは「未来生活を発明し文化を創造する大学」という価値を提供するため、これからも教育のアップデートに挑み続けます。具体的な教育研究活動については以下もご参照ください。
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