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ハリウッドのような”場”であり続けるために——DHUの考える「大学入試改革」

今回のテーマは「大学入試改革」。コロナ禍の中、2020年度は大学入学共通テスト(旧大学入試センター試験)が初めて実施されました。AO入試も「総合型選抜」と名称が変わり、受験生の学力を文字通り”総合的”に評価することが求められる時代です。

DHUでもこの大学入試改革に向けてさまざまな準備を行ってきましたが、そのひとつに募集要項(いわゆる願書の冊子)の制作があります。入試改革に対する大学側の姿勢を反映させつつ、DHUが求める学生像により広く、正確にメッセージが届くよう、大幅なリニューアルを行いました。

2005年の開学以来の大きなリニューアルを成功させるべく、パートナーにお迎えしたのは「art & SCIENCE Inc.」(以下、A&S)の皆様です。

募集要項のリニューアルから始まったこのプロジェクト。最終的には「デジタルハリウッドとは何か/どういう場所なのか?」を考えるところまでたどり着きました。今回のnoteでは、A&Sの皆様にお話を伺いながら、その裏話をお送りしていきます。広告・広報・PR業界に興味のある高校生の方も必読です!

【対談者】
<art & SCIENCE Inc.>
岩本美奈子さん(Branding Styling Director)
斎藤千明さん(Branding Strategy Director)
深瀬大さん(Concept Maker)
<DHU>
小勝健一(入試広報グループ)
藤ノ木有沙(入試広報グループ)

text/photo/interview: TELLING

10年以上ぶりのアップデートは「より根本的な部分から言語化し直す」という提案からスタート

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▲ A&S 岩本さん

——今回のプロジェクトについては、入試改革の真っ只中に行われるものでしたが、そんな中で「大学の募集要項にタッチする」というのは中々ハードだったのではないですか?

岩本:大学ともなるとは、例えば教職員や事務局だけで決定しきれないことがあります。合意を取れたとしても国の方針が変わればひっくり返る。率直に、乗り越えるべき壁は多いだろうと感じていました。

——実際、DHU側から制作のオファーがあった際、一度は「引き受けない」という判断になったというお話も伺いました。

岩本:そうですね(笑)。今となってはそんなこともあったなぁというお話ですが……。「大学入試改革」という国の方針そのものが変われば、意思決定が何度もひっくり返る可能性もあって。制作側としては当然、人員などのリソースも大量に必要になります。様々な状況を加味し、一度この件は保留になりかけていました。

——それでも、最終的に引き受けたのはなぜでしょう?

岩本:このプロジェクトが単なる受験生の募集資料を綺麗にするだけの仕事ではないとすぐにわかったからです。DHUさんからいただいた提案書を拝見して、まさに私たちがやるべきことである、と感じていました。

——というと?

岩本:アウトプットである「募集要項」はあくまでミニマムな成果物にすぎなくて、いわゆるブランディング、全体的なコミュニケーションのデザインの話をしたいというのがとても伝わってきて。

DHU事務局:それが提案書に反映されていたかどうかはわかりませんが(笑)、要件以上にやったほうがいいこと、本来やりたいのではないかということを汲み取って逆に提案していただいたからこそ、A&Sさんにやっぱり依頼したい!ということになりました。

——たしかに、結果的に「ブランディングからやり直す」という形になっていますが、当初は「募集要項が変わるから綺麗にしたい」という程度のものだったんですよね。

岩本:あくまで末端のアウトプットとして「募集要項がデザイン的にも10年近く変わっていないので、さすがにそろそろなんとかしたい」というご要望はありました。一方でそれが一朝一夕のヒアリングとクリエイティブでは出来上がらないことを、DHUの皆さんは当然のように理解してくださっていて。

——なるほど。

岩本:妥当性があれば、想いを言語化しなおし、改めてDHUはどうありたいのか、受験生にどう感じて欲しいのかを整備するフェーズから始めることを受け入れてくれるだろうなと。

「どんな結果を出すか」ではなく「どんなことやるか」。手段の目的化をあえて歓迎する校風。

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▲ A&S 斎藤さん

——そこからプロジェクトはどのように動いていくのでしょう?

岩本:入試に関わる人々の解像度を上げていくことから始まっていきました。どのような学生と出会って、何をしていきたいのか、という部分の言語化ステップですね。

——例えばどんな風に落とし込まれていくイメージ?

深瀬:ワークショップなどを通して現状や理想を洗い出した上で、本プロジェクトの軸になっていくDHUの世界観・タグラインなどをいくつか提案をしました。

その中で印象的な出来事があって。『(学生は)イノベーションを起こす人であるべきだ』というメッセージを強調したタグラインを、提案の中に含めていたんです。そうしたら、そこにはハッキリと「NO」という回答をいただいた。デジタルハリウッドの一貫した意思のようなものを感じられる瞬間がありましたね。意思の軸の定まり方のような……。

——なるほど。

深瀬:結果として、DHUが「大学の決めた理想的な学生像」にたどり着くことを求めていないというところに気づけたのは、ひとつのキーだったように思います。「一人一人がイノベーションを起こす!」という世界観に留まらない。どちらかというと「何をなすか」だけではなく「何をやるか」というプロセスを大事にしているのだなあと。

——目的だけでなく、手段も大事?

斎藤:クリエイティブの力で何かを起こしたい、という目的指向に偏りすぎずに、純粋なクリエイティブに向き合う姿勢そのものを歓迎している、というものです。そして、そういう純粋な思いを尊重する「場」としてあること、行動を促進することを軸に据えているのかなと。最終的なビジュアルも、その思いが表現される形になりましたね。

一年を通して使い続けられる、耐久性の高いビジュアル

——ビジュアルの意味するところについて教えてください。

岩本:「DHUの学生」という、大学側が決めた理想モデルは実は存在しておらず、大学が決めた理想系に染まることもない、あくまで個性の集う場であることを表しています。不特定多数のオブジェクトが秩序無く集っているビジュアルが「DHUらしい」というところにまとまりました。

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▲初夏のオープンキャンパス キービジュアル活用例

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▲秋のオープンキャンパス キービジュアル活用例

——ビジュアルについてこだわった部分はありますか?

岩本:ビジュアルの耐久性をかなり意識しています。寄っても、ひいても、三次元に展開しても、年間通して使い通せるように作っています。

——秋のビジュアルは、寄りに寄った結果一つだけになっていますが、単体で使われることも想定内?

岩本:そうですね。お月見にかぶせて使われるのはさすがだなと思いました(笑)。

——メインビジュアル以外にはどのように展開していったんですか?

岩本:耐久性の高いビジュアルを意識することで、私たちも常に「もっとやれることがある」と気づきを得続けることができました。結果的に、かなり多くの場所でこのビジュアルを活用いただけたことはとても嬉しいですし、私たちにとっても学びの多いプロジェクトでした。

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「デジタルハリウッド、というものがもっと世の中に正しく伝わるコミュニケーションのきっかけになればいいなと」

——1年間、プロジェクトを振り返ってみてどうですか?

深瀬:デジタルハリウッドという存在を私たち自身も理解していく素敵な機会を得たと思います。例えば、そもそもなんでデジタルハリウッドなんだろう?というところから、創設にかける思いを理解していくことができました。

DHU事務局映画産業の中心地・ハリウッドでは「プロジェクト」があり、そこに様々な専門家が集い、専門スキルを駆使してプロジェクトを完遂させたら解散する、という働き方が一般的なモデルとなっています。それにならい、大学はハリウッド同様、集った学生が連続的にプロジェクトを達成していく……そんな「場」でありたいという思いが「デジタルハリウッド」という名前に込められています。

深瀬:入試事務局の皆様はもちろん、教職員の皆さん、学生の皆さんと話す中で、それぞれの思いがあることも分かりました。客観的に見ても『DHUの良さが外に伝わっていないなんてもったいない』という気持ちが湧いてきたりもしました。

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▲ A&S 深瀬さん

——私たちの想いを共にクリアにしてくださった方々が、その想いに共感いただけるというのはとても嬉しく思います。

斎藤:プロジェクトを通して発見したDHUの素敵な部分を、世の中の人にも認識してもらうという点で、まだまだたくさんできることがあります。引き続きパートナーとして、DHUとそれを取り巻く人々との関係性構築をお手伝いし続けられたらと思っています。

——ありがとうございました!

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こんな私たちに、共感してくれる皆さんに出会いたい

art & SCIENCE Inc.の皆様と改めて言語化した通り、私たちは「自分の好きなことにひたすらにのめり込める」みなさんに出会いたいと思っています。そして、デジタルハリウッドという場で、様々な専門性に特化した人や、それを理解する人々によるプロジェクトが生まれ、新しく形作られていく、という場でありたいとも考えています。

DHUの考える「好きなこと」の形は様々で、作品作りに限る必要すら無いと思っています。映画をつくるなら、クリエイターだけではなく監督・役者・ビジネスサイドまで様々な専門領域が集います。クリエイティブの大学という認知をされがちですが、昨今ではビジネスの視点でクリエイティブに感心を持って入学される方も増えてきました。

今回、このリブランディングプロジェクトを通して、また気持ちを新たにすることができました。ぜひ、私たちの思いに共感する「未来のDHUメンバー」に、これからも出会えることを楽しみにしています!


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