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カカオ豆から約13時間かけてチョコレートを作ってみた

コーヒーの自家焙煎の話をしていたところ、なぜかカカオ豆からチョコレートを作る話になってしまい、冗談半分で住所を教えた友人から本当にカカオ豆が送り付けられる事態が発生。

届いたのはベトナム産カカオ 500g。500gって、実際に目にすると結構な量があります。

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どうやら今年は、新型コロナウイルス感染拡大で観光地の土産物や贈答品、カフェ飲食品の需要が落ち込んでしまった結果、カカオ豆がだぶついて安値になってしまっているらしくAmazonでも安く買えたようです。

さておき、カカオ豆のまま置いておいても仕方がないので、ネタとしてやる気があるうちにチョコレートを作ってみました。
参考にしたレシピは主にこちら。

レシピを書かれたおーさかやさんが言う通り、1回やれば十分かな・・・と言う気持ちです。
しかし、世の中には奇特な方達がいるもので、Bean to Barという、カカオ豆からチョコレートを作る過程を楽しんでいるチョコレート通も意外に多いようです。レシピや工程を公開しているサイトもいくつかあったので、それぞれ比較しつつ手作りしてみました。

レシピによって多少の違いはありましたが、おおよその流れは、下洗い→焙煎→皮むき・胚芽の除去→磨砕/グラインド→材料の混合→微粒化→精錬/コンチング→テンパリング です。

磨砕/グラインドまでできればカカオマスとして、とりあえずは食べられるものになるはず…。歴史的にはカカオバターが抽出されるようになるまでは、この状態でココア風のドリンクとして飲まれていたはずです。
そんなわけで、最低限の目標として磨砕までたどりつくことを決めました。
(目標が低いのは、カカオの実物みたら理解してもらえると思います。食べられるものには見えないです…。)

1. 下洗い

500gもの量を一度に処理はできないと判断して、まずは半分の量でチャレンジ。念のため、割れてしまっていたり、明らかに大きさが不揃いな豆は除去しています。

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ボールに入れて水洗い。

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あるレシピサイトに、「カカオの汚れが気になって、この下洗いを9回も繰り返した」というコメントがありました。しかし、実際に水に入れてみると汚れているというよりも、硬かった表皮自体がヌルッとした感触になるのがわかります。
それでふと思い出したのが、カカオも発酵食品であるということ。表皮のぬるつきは、発酵の結果のような気がします。

水洗いでこれを落とすというのは、それこそ擦り洗いして表皮を削り落とすことになるような気がして、3回ほど水を変えたところで水洗いは終了しました。この後の焙煎過程で火を入れて表皮は除去するものだし、レシピによってはそもそも下洗いの工程がなかったりするので良いかな…と。(適当)

2. 焙煎

クッキングシートの上に豆を並べ、オーブンに入れて120℃で30分。
今回やってみて、ここの仕上がりをきちんと確認しておくのが、次のステップのためにも重要な気がしました。

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豆の4分の1ほどは、オーブンに入りきらなかったこともあり、オーブンと並行してフライパンでローストしてみました。結果的に、こちらの方がよかったかもしれません。

<焙煎前>

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<焙煎後(弱火で約25分)>

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煎っているうちに豆が膨らんできて、ココアっぽい香りも少し感じられるように…。焙煎中、パチパチというはぜる音も聞こえてくるので、だいたいの目安にしました。

ローストし終えた豆から、皮を取り除いてみたのがこちら。カカオ豆の胚乳です。これを砕いて食用にするのですが、実はこの時点でローストにムラができてしまっていることに気付きました。

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3つの豆で色味が違うのですが、実際に指で力を加えてみると…

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黒っぽいものはまだ水分が残っているようで、ゴムの塊のような感触です。当然、砕ける様子もありません。
左側の茶色にまでローストできたものは、軽く力をくわえただけでパキッと細かく砕けてくれました。

同様に、水分が残っていたものは、皮も張り付いたままで一つ一つ剥がす感じになって一苦労したのに対して、うまくローストできた豆はパリパリと簡単に外れてくれました。

ロースト具合の見極めについては、どのレシピでも特に触れられていなかったのですが、その後の作業のためにも重要そうです。

で、オーブンを使ったものは、時間が短かったのか大半がロースト不足でした…。ロースト具合もわかりづらいため、結局、フライパンで10分くらい追加でローストしました。

全てローストし終えた段階で、重量は206gに。18%くらい軽くなりました。

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3. 皮むき・胚芽の除去

ローストしたカカオ豆から皮を取り除き、硬い胚芽を取り除く作業なのですが、地味に大変でした。

ながら作業でしたが、全て取り除くのに、4時間くらいかかっています。下洗い〜ローストの試行錯誤を合わせると、すでに5時間以上が経過。
だけど、チョコレート作りで一番時間がかかる工程はこの後です。なんでこんなことを始めたのか、よくわからなくなってきた。

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4. 磨砕(グラインド)

グラインドのために用意したのは、コーヒー用のハンドミル(丸洗いできるもの)と、すり鉢です。
フードプロセッサーはそもそも持っていなかったのですが、すぐにモーターが焼き切れてしまうという報告もあり、人力でやることにしました。だけど、荒く砕くところまではフードプロセッサーがあった方が、楽ができたかも…。

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ハンドミルで粗挽きにしてから、すり鉢でさらに細かくしていく作業です。

当初、ハンドミルで細挽きにしてみたところ、圧をかけすぎたために油脂分が滲み出してしまい、ハンドミル内でペースト状になったカカオマスが固まって大変なことになりました。

ある程度、砕けたものをふるいにかけて、さらにハンドミル&すり鉢で砕く作業をひたすら繰り返すこと4時間。ここまでのトータル作業時間は9時間超。
ようやく、食べられそうな雰囲気に…。部屋の中はココアの香りが充満しています。

どうしてもふるいに残ってしまうものや、ハンドミル内への歩留まりを取り除き、重量は170gに。
この次の工程では、すり鉢にカカオバターも加えて混ぜていくため、すり鉢の容量を鑑みて100gだけ次の工程で使うことにしました。
残った70gはまだ粒が大きい状態ですが、ココアにすれば飲めないこともないはずです。

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5. 材料の混合(ミキシング)/微粒化/精錬(コンチング)

いよいよ、カカオマスをチョコレートに仕上げていく工程です。
カカオバターを加えることでカカオマスが凝固し、固形のチョコレートになります。

純粋なカカオバターを入手することができなかったので、ホワイトチョコレート(カカオ40%)で代用します。
補足すると、ホワイトチョコレートはカカオバターに砂糖、全粉乳を加えて固めたものなので、調味されていることを除けば、ほぼカカオバターの塊です。

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100gのカカオマスに80gのホワイトチョコレート(カカオ分40%)を加えるので、出来上がりはカカオ分 約73%のチョコレートになるはず。
100%のカカオバターが手に入れば全粉乳と粉糖を別に計量して加えるつもりだったのですが、ホワイトチョコレートに含まれる糖分以外の調味は控えることにしました。計量するのも混ぜ合わせるのも大変ですし…。

すり鉢ごと湯煎にかけて約45℃をキープ。さらにすり潰していきます。混ぜ始めの写真を撮るのを忘れてしまったのですが、約2時間かけてそれらしい滑らかさになってきました。

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あとはお馴染みのテンパリングをして、型に流し込むだけ…。
このテンパリングも微妙な温度操作が必要かつ、水が少しでも入ってしまうとチョコレートが固まらなくなるという非常に面倒な作業なのですが、数時間にわたってすり鉢と格闘したことを思うと、ずいぶん楽な作業に思えてきます。

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なんだかんだで13時間以上の作業となりました。
同じことをもう一度と言われたら…今度はお断りします。

まだ250g残っている焙煎前のカカオ豆、どうしよう。。。

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