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過去を引きずる印象からの観念システム

まずはじめに

なぜ繰り返される問題の解消に“AUM(オウ)”と応諾することで、その間違った思考による問題だと知覚していたことが成就される、ことに対して理解に苦しむのかもしれません。

伝統的なヨーガの教授法は、聖典を読んで書かれてあることを仮説として検証し瞑想にて熟考し、気づいたことや分からないことを質疑応答にて、少しずつバラバラになったパズルを組み立てながら、以前は仮説だったことが事実に対する反応として普遍化されていく。

ですので、この“note”のように一方的に書くことは読んでいる人が何がわからないのか?どのようなアプローチが理解の助けになるのかをたぶんココだろうと仮定するしかありません。

小難しい内的心理器官(アンターカラナ)のことは省いて心理学的な内容で、過去の事柄に対して印象として残った記憶(残存印象:サムスカーラ)から自動的な反応もしくは衝動的な行動となる観念システムについてお話ししてみたいと思います。

マーケティングに見るイメージ戦略

■各銘柄のCMに出演するタレント

テレビの広告で有名なタレントや芸能人そしてアスリートが異なる企業から何度も出演することを見かけたりします。自社の商品やサービスに関して、より多くの人たちに知ってもらう効果的なツールのひとつに、好感度の高い人物をCMに起用することはご存知だと思います。

好感度の高い人物とは、その好印象によって多くの消費者の興味を引きつけるだけではなく、消費行動に結びつくことを想定してのイメージ戦略となっています。

■イメージ戦略とは

イメージ戦略とは、イメージが商品の評価と結びつきやすいために、商品の購買意欲と深い関係があるとすることから、各企業は競争状況と消費行動を考慮しながらも企業や商品の高い好感度イメージを築くようにマーケティング行動をとることであると言えます。

したがって、商品の販促に当たって、望ましい好感度イメージを作り出すことが重要となり、そのための広告はイメージ戦略の有効な手段となり得ます。

■タレントのエゴサーチ

エゴサーチ(エゴサ)とは、自分自身や自分に関わりのある会社やサービスがどのように思われているのか検索することできるシステムとなります。

タレントや芸能人の方々は、CMに起用されること以外にドラマやバラエティに出演するために、よくエゴサを活用しています。

エンターテイメントの世界は、「人気」が出ることでその存在感も上昇することとなりますが、ひとたび落ちればたちまち「消えて」しまうシビアな世界です。タレントや芸能人と呼ばれる人にとって、周囲の反応やとりわけ一般の人々が自身に抱いている「印象」というのは常に気になるところとならざるを得ない状況になっています。

特に、SNSの浸透によって、知らなくてもよかった「反応」や「印象」までもが本人の目に触れる機会が急激に上昇することで、その「印象」との向き合い方いかんによって、今後の芸能活動を大きく左右する可能性となる、つまり、飯の種がなくなってしまう恐怖があるようです。

ビジネスシーンでの行動心理学

■バンドワゴン効果

バンドワゴン効果とは、多数の人が支持している物事に対して、よりいっそう支持が高くなる現象となります。アメリカの経済学者ハーヴェイ・ライベンシュタインの提唱が始まりだそうです。時流に乗る・勝ち馬に乗る・多数を支持するという意味を持ちます。「バンドワゴン」は、パレードの先頭を行く楽隊車のことです。

具体的な心理効果の例を挙げてみると、「人気のある企業であれば安心して応募できる」のような人が人を呼ぶ現象となり、これも「印象」に左右されている心理的効果となります。

■ピグマリオン効果

ピグマリオン効果とは、他者からの期待を受けることで、その期待に沿った成果を出すことができるという心理効果のことだそうです。アメリカの教育心理学者ローゼンタール氏が発表した心理学用語で「教師期待効果」や「ローゼンタール効果」とも呼ばれています。

具体的な心理効果の例を挙げてみると、「後輩や部下に期待するほど、期待に答えようとパフォーマンスが向上する」ことで、これも「印象」が関わる心理的効果と言えそうです。

出来事→印象→記憶→行動という観念システム

■第一印象が重要とされる初頭効果

初頭効果とは、最初に与えられた情報が後の情報に影響を及ぼす現象を指すというよく知られた心理的な現象です。人物に対する第一印象が長い間残り続けるのは初頭効果の影響だと言われています。初頭効果は、ポーランド出身の心理学者であるソロモン・アッシュ氏が1946年に行った印象形成の実験によって発見・提唱したと言われています。

■残存印象(サムスカーラ)について

以前に「メンタルタフネスへの秘訣は平等観」にて以下のように

ヨーガとは心素の働きを止滅させることである。

『ヨーガ・スートラ』第一章第二節

引用したように、過去の出来事や人物に対しての印象が心素という心の器官に「残存印象」として記憶に刻まれているのですが、私たちが多くの場合、目の前の出来事や人物ではなく、「残存印象」という記憶にひもづけられて条件的に反応していることを、ヨーガでは「心素の働き」として止滅させる問題であると考えています。

つまり、目の前に生じる問題に対する反応としての行動とは、「残存印象」からの「心素の働き」によるシステム化された観念行動だと、心理学的には説明することができます。

このことは、よく知られている以下の「蛇縄麻の喩え」と同じかもしれません。

ある人が闇夜を歩いているとふと蛇に遭遇し、慌てて家に逃げ帰ります。ところが、もしも、あの蛇が家の中に入ってきたらどうしようと考えると不安でとても眠れませんでした。翌朝にもう一度蛇を確かめに行くと、実はただの一本の縄が転がっていたのでした。

『法相二巻鈔』(鎌倉期の良遍著述)

「残存印象」からの「心素の働き」によるシステム化された観念行動によってのことだと、ココでは笑い話のように思えるかもしれませんが、この「蛇縄麻の喩え」のように、目の前の現象に対して、過去の印象による闇夜のままでの知覚に翻弄された反応もしくは行動をとっているということです。

ここで、良い悪いは脇に置いておいて、この「蛇縄麻の喩え」のような反応をしたことがあるかどうかを調べてみましょう。より具体的に、どのような出来事があって自分はどのような印象によってどのように反応したのかについて調べてみます。

■心素の働きを止滅させるための意識の光

今回のテーマである「過去を引きずる印象からの観念システム」を解消するために、「蛇縄麻の喩え」のように暗闇という過去を引きずった「残存印象」による反応ではなく、朝の光の中で正しく起きていることを認識することが重要であることをお伝えしたかったのです。

ですので、先ほどのように「蛇縄麻の喩え」で過去を調べた場合に、また新たな「印象」を積み重ねるのではなく、どのような印象に支配されての行動となったのかについての観念システムにただ“AUM(オウ)”と応諾しその間違いを成就させるだけです。

もしも、ここで応諾できず新たな印象を記憶に刻むならば、その「残存印象」が心素の働きとなり、観念システムとなり間違った反応である行動を生み出すことで、いわゆる「カルマ」として幻想による問題行動は繰り返されてしまいます。

意識の対象に対して、意識化する、意識の光を当てる、つまり、気づくことは、ヨーガ的に言うならば、観るもの(純粋意識)と観られるもの(その対象物)の識別智(ヴィヴィカーキャーティ)を手段として、心素の働きを止滅させることができることとなり、これこそがヨーガだと言われています。

最後に

とても自由な人がいますが、彼ら彼女らは、まったく、過去の印象にとらわれずに自由な発想で物事に取り組んでいたりします。あまりにも自由なので、それは以前にこんなことがあったからリスクがあるんじゃないか?と言おうものならほほえみながら「そんなこともあったね」とまったく意に返さない。

逆に、高齢者となり、認知症になった人たちは、現実に起きたことではなく過去の印象に心がとらわれているので見当違いな反応となっているのを見ると、逆に、観念システムにとらわれている不自由な人なのかな?と思うことがあります。

事実に対して適切であるとは言えない自動反応や衝動的な行動となる観念システムが働いた際には、意識の光を与え気づき、ただ“AUM(オウ)”と応諾しその間違いを成就させることは、幸せな夢を生きること以外に認知症の予防にもなると想う今日この頃です!

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