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写真 あるいは死の影の中で 911の予感
詩誌「潮流詩派」掲載作品
ある月刊誌で目にした一枚の写真
アンドレ・ケルテス『世界貿易センタービル』
1975年の作品だ
オリジナルを欠いたクローン同士ともいえる二つのビルを背景にして
そのやや前景に
飛翔する二羽の鳥が映し出されている
写真を眼の前にした人々の脳裡には
予告された未来の
あるいは
すでに起こってしまった死が
焼き付けられた
(ツインタワーに激突する二つの飛行物体の影が 写真という 予告された あるいはすでに起こってしまった何かの映像を二重化しながら 今 その写真の中に浮かび上がる)
それはちょうど
独り部屋にいて ふと気づくと 今し方そこにあったはずの一枚のスナップ写真が どうしても見つからなくなってしまったかのようだ そしてそこには 見知らぬ別の写真がいつしか置かれている
その別の写真の中に 失われた写真を通して透かし見ることのできた
我々の死が
静かに映し出されている
(写真は平成元年2月バレンタインの日に六本木で撮影)
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