見出し画像

筋トレ、木々、そしてカノン

 かれこれ 30 年弱、自宅で筋トレをしているのだが、つい先日、トレーニング中に窓の向こうに見える木々が風に揺れているのを見た。その揺れが、自分の体の動きとシンクロしている気分になった。同時に、筋トレ前に聴いていたパッヘルベルのカノンとも同調してる気分になった。なんか自己の身体運動、風に揺れる木々、頭のなかでこだまする音楽が同調する中で、自我が薄まっていくのを感じた。さらに、トレーニングのきつさも緩和され、ここ数年来悩まされている左大腿部のハムストリングの痛みが消えたのは不思議だった。
 このようなことが起きたことは、過去に一度あった。それはイギリスの友人が来日した時に、出羽三山を巡るツアーに連れて行って、帰ってきた時である。その時は「ご利益でもあったのか」と冗談で思っていた。その時は、羽黒山の 2,446 段の階段を登り、月山神社でお祓いを受け、湯殿山の湯に触れるなど、短期間ではあるが、せわしい東京での生活を離れ、純粋に山、神社空間に没入したのである。
 今回と前回に共通する点を考えてみたのだが、日常生活の中で自己を意識する度合い (= 自我) を薄めている点ではないだろうか。自我には、自分と考えの合わない人・社会情勢に対してが自分の見解が正しい、その主張を認めてほしい、現状の波に流されないように抗って心身を鍛えようとするストレスなどが含まれるだろう。自我は気張らなければ維持できないように思える。強い自我の働きの結果として、ハムストリングに痛みが生じていたのではないか。なぜハムストリングにだけその症状が現れるのかについて、論理的説明は思いつかないのだが、ハムストリングの痛みが消えたのは、トップアスリートの経験するゾーン体験と似た状況で痛みが消失したのではないかとの仮説を立てている。つまり、力を出そう出そうと気張らず、自己の動作そのものに没入した状態 (ゾーン) になると、リラックスしつつも最高のパフォーマンスが生み出されるというものである。
 ハムストリングの痛みが消失した条件を厳密に再現することは不可能なので、この仮説を検証するのは難しいのだが、再度痛みが消失した時が訪れたら、仮説の確からしさが高まると期待している。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?