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50年ぶり!!スペイン ラ・パルマ島の溶岩流を衛星画像から捉えてみた
スペイン領カナリア諸島、その西北端に位置するラ・パルマ島という島がある。その島で2021年9月に噴火が発生した。
ラ・パルマ島の噴火は実に50年ぶり。大量の溶岩が噴出し、ラ・パルマ島西部にあるラ・ラグーナという街に噴出した溶岩が流入する事態となっている。この噴火では、6000人の住民が避難し、住宅1,200棟以上が破壊されてしまうなど、人々の生活に大きな影響を与えることになった。
ラ・パルマ島で大きな被害を与えた噴火、本記事ではこの噴火について人工衛星画像を解析しながら、溶岩の被害範囲の推定を試みた。
1. ラ・パルマ島について
まずは、本記事の調査対象となるラ・パルマ島の場所を確認する。
図1にGoogle Mapで取得したラ・パルマ島の場所を示す。
![](https://assets.st-note.com/img/1642858096413-I6SVOkmMxJ.png?width=800)
ラ・パルマ島はアフリカ大陸の北西部の場所にある。西側は大西洋、東側はアフリカ大陸のモロッコがあるような場所だ。
ラ・パルマ島が含まれるカナリア諸島は"大西洋のハワイ"とも呼ばれ、ヨーロッパから年間1000万人もの多くの観光客が訪れているリゾート地だ。
ラ・パルマ島はその中でも比較的観光客は少ない。ラ・パルマ島を訪れる観光客はカナリア諸島7島のうち6番目となる。ラ・パルマ島は観光業よりもバナナ・アボカドなどの熱帯農業で生計を立てている人が多い島だ。
![](https://assets.st-note.com/img/1642983482018-R6eR8V0Nsl.png?width=800)
赤枠内が今回の噴火で被害を受けた地域。
図2にラ・パルマ島を示す。ラ・パルマ島は島の形がくさび形をしていて、南北に約47kmの火山島だ。本記事で注目する噴火はラ・パルマ島南部の地域で発生し、島の西部に溶岩が流れ出した。
2. 2021年9月から始まった噴火について
2021年9月19日、ラ・パルマ島のクンブレビエハ火山で噴火が始まった。
この噴火では溶岩が流出し、島西部のラ・ラグーナという街へ流入している。
溶岩が流出していく様子は衛星画像から確認可能だ。溶岩が街に向かって流れていく様子を図3のGIF画像で示す。
衛星画像は欧州の宇宙機関であるESA(European Space Agency)が運用しているSentinel-2衛星のデータを使用した。
Sentinel-2衛星は、5日または10日のペースで地球全体を撮影している。衛星画像を時系列に並べることで、地上で発生した現象の変化を確認することができる。
Sentinel-2衛星のデータはESAのサイトで無料で手に入れることができる。図3のGIF画像では2021年9月〜2022年1月までのSentinel-2画像を使用してGIF画像を作成した。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70493001/picture_pc_464fb9541b4820cfcc5e6cd4c89f30f9.gif)
赤く光ってる箇所は高温で流動する溶岩を示す。
図3のGIF画像では赤く光るものが流動する様子が確認できる。赤く光るものは高温で流動する溶岩を示していて、データを調整することで、流動する溶岩を見やすくしている。
流れ出た溶岩は9月の時点で海まで到達し、11月ごろまで高温の溶岩が噴出していることが分かる。
3. 溶岩流出範囲の検出
2021年の9月から2ヶ月流れ出た溶岩。その溶岩が流れ出た範囲を衛星画像から検出してみた。
溶岩検出にはGoogle Earth Engineを使用した。
Google Earth Engineは地球の様子を衛星画像によって可視化、分析できる地理空間分析プラットフォームである。Googleアカウントがあれば無料で人工衛星画像を使用することができ、詳細な分析を行うことも可能だ。
図4と図5にGoogle Earth Engineで溶岩の範囲を抽出した結果を示す。
図4は噴火前の2021年8月26日に撮影されたSentinel-2衛星の光学画像、図5は噴火が収束した後の2022年1月2日のSentinel-2衛星の光学画像からそれぞれ溶岩の流出範囲を抽出した。図4, 5の赤い領域が噴火で流れ出た溶岩の抽出結果を示す。
溶岩の抽出には機械学習の一種であるランダムフォレストを使って自動的な検出を試みた。実際、溶岩は衛星画像で見ると黒く映る傾向にあり、抽出結果は非常に精度良く、溶岩が抽出できていることが分かる。
図4と図5で溶岩の範囲を比較すると、2021年9月の噴火以降、溶岩の範囲が大幅に拡大していることが分かる。図4で赤く検出されている領域は過去の噴火で噴出した溶岩であるが、過去の噴火と比べても、今回の噴火が相当大きな規模の噴火であることが理解できる。
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噴火前の画像であり、過去の溶岩流の痕跡がいくつか確認することができる。
![](https://assets.st-note.com/img/1642857684578-ZpU0NkBsSz.png?width=800)
噴火後の画像であり、噴火に伴って大量の溶岩が噴出していることが確認できる。
今回は2021年9月に噴出した溶岩の流出範囲の検出を試みた。
人工衛星画像は一度に広域で撮影可能なため、全体の状況を理解することに役立つ。
溶岩以外にも検出可能な対象物はないか。引き続き探していきたい。
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